メールマガジン No.109(2022年5月号)

メールマガジン No.109(2022年5月号)
リテラ友の会 メールマガジン No.109(2022年5月号) 2022/5/

□□目次□□

1.文学部長からのご挨拶【文学部長 友澤 和夫】
2.文学部新任教員からのご挨拶
    ・尾園 絢一 准教授(欧米文学語学・言語学 言語学分野)
3.文学部オリエンテーションキャンプレポート
4.広報委員会より

1.文学部長からのご挨拶【文学部長 友澤 和夫】

2022年度を迎えて

友澤和夫(文学部長)

 学部長二期目となりました。学部長の4月の主たる業務は、祝辞を述べることです。学生ガイダンスの冒頭で申したことをここにまとめ、年度当初の挨拶とさせていただきます。

 新入生には、受験勉強の意義について問いかけ、頭脳訓練には間違いなくなったし、目標を立てて、それに向かって努力する姿勢や良い生活習慣を身につけたであろうとしました。ただし、そこには天井があり、さらなる成長のためには次の段階に移る必要があるとも述べました。これは金魚を大きくするにはどうすればよいかに通じ、それには金魚鉢から出して池のような広い空間で育てる(種類によっては40センチほどになる)ことにつきるとしました。受験勉強という枠が限られた知的世界=金魚鉢から出でて、大学という大きな知的世界=池に移ってきた新入生には、池を自由に泳ぎ回って欲しいこと、研究を通じてその池をさらに広く深くしようとする教員や大学院生の営みを知って欲しいこと、やがては卒業論文等の作成を通じてその担い手の1人となることを期待する旨を述べておきました。

 新2年生には、英語で学部2年生をsophomoreと言うけど、前半のsophoはギリシャ語で賢い、後半のmoreは愚かなという字義があるので、2年生は高等教育では「賢くて愚か」という示唆に富む位置づけにあると伝えました。ただし、「賢くて愚か」なのは2年生だけなく人間存在そのものがそうであること、文学部はつまるところ人間の賢さと愚かさを学問の対象としていること、そして2年生から専門分野に配属されるが、それぞれの学問を通じてsophomoreな人間の本質をmore sophisticatedに探求・研究して欲しいと、まとめておきました。

 新大学院生には、研究には2つの時間―1人でひきこもる時間と互いに知的な刺激を与え合う時間―が必要であることを述べました。そして、大学院は言ってみれば後者の時間を確保するためにあること、1つの学問分野の範囲に囚われることなく活動範囲を広げて他流試合をして欲しいこと、人文学プログラムが属する人間社会科学研究科は巨大な教育研究組織でおよそ文系の学問はすべて揃っており、その資産を十分に活用して欲しいこと、を伝えておきました。

 読者の皆様の今年度のご発展・ご活躍を祈念いたします。

2.文学部新任教員からのご挨拶

  文学部では4月に1人の教員が着任いたしました。今号では、新任教員の自己紹介をお届けいたします。

○欧米文学語学・言語学講座(言語学分野) 尾園 絢一 准教授

 2022年4月に欧米文学語学・言語学講座に着任しました尾園絢一と申します。出身は福岡です。同志社大学経済学部を卒業後,東北大学大学院でインド文献学を学び,同大学で学位を取得しました。学位取得後はドイツ留学,東北大学,東京大学での勤務を経て広島大学に着任いたしました。

 私の専門分野は古インドアーリヤ語(いわゆるサンスクリット)の文法研究です。特に動詞の形態・機能の研究に従事しています。古インドアーリヤ語文法研究は19世紀に興ったインド・ヨーロッパ語比較言語学,インド文献学の蓄積を基に進められてきました。古インドアーリヤ語はインド・ヨーロッパ共通語段階の形態・機能の多くを受け継いでおり,明確な機能を備えた接尾辞,語尾などの成語要素を組み合わせて語を形成する,精密な言語です。豊富な資料が残されており,ヒッタイト語,ギリシャ語といった他のインド・ヨーロッパ語との比較を通じて前史まで遡ることできるという有利な条件を備えており,言語学的訓練のための最良の材料の一つと言えます。

 現在,動詞語根構成音の重複(reduplication)の問題を中心に研究に取り組んでいます。今年5月には,これをテーマとして,ドイツのイェーナ大学比較言語学講座と共同で国際ワークショップを開催しました。インド・ヨーロッパ語比較言語学における第一級の資料である,古代インドのバラモン教聖典「ヴェーダ」,古代イランのゾロアスター教聖典「アヴェスタ」,古代ギリシアのホメーロス叙事詩に現れる用例を中心に検討し,重複語幹動詞の機能の解明を目指しています。

 古インドアーリヤ語やギリシャ語などの古典語に限らず,あらゆる言語を形作る「文法」の中に私たち人間の精妙な理性の働きを見出すことができます。言語研究を通じて,理性的思考を正しく発揮するための訓練の場を提供したいと思います。 

 大学時代は軽音サークルに所属し,バンドでギターを弾いていました。また碁を打ったり見たりするのも好きで,留学時代は毎週カフェで碁を打っていました。

 着任前から研究会や学会等で毎年のように東広島キャンパスを訪れていました。このたび,自然豊かな東広島キャンパスで研究・教育に従事することになり,本当に嬉しく思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。

■尾園 絢一 准教授のプロフィールはこちらをご覧ください。

3.文学部オリエンテーションキャンプレポート

〇文学部就学相談室長 川島 優子(日本・中国文学語学講座 中国文学語学分野)

「オリキャン」半世紀

 今年度の新入生歓迎オリエンテーションキャンプ(通称「オリキャン」)は、4月16日(土)、23日(土)の午後、東広島キャンパスで開催されました。

 当日ご挨拶された友澤学部長のお話では、広島大学オリエンテーションキャンプの歴史は長く、1973年に始まったとのこと。当初は全学(多い年は全参加者2500人程度)で行われていましたが、1993年から現在のような学部別のキャンプになりました。友澤先生がご紹介された論文に拠れば(金城亮・黒川正流「オリエンテーション・キャンプが新入生の大学適応に及ぼす効果」広島大学総合科学部紀要Ⅲ情報行動科学研究15巻、1992)、オリキャンは「新入生、上級生、教職員が瀬戸内海の大自然の中で寝食を共にし、共に語り、共に楽しみや苦しみを分かち合うことにより、新入生相互また上級生との親睦、教職員との信頼関係が生じ、そこに貴重な人間関係が育成される。また、同じ大学に学ぶ者としての強い連帯感が醸成されていき、無意識のうちに大学生活になじんでいく」ことをねらいとした行事だといいます。さらに「単独では恥ずかしくて着られない衣装を着用することや、傍目には奇異に見える行為を共有することで、参加者は広大生の一員として互いを承認しあうのであろう。言い換えれば、オリキャンは“大学ムラ”への入村儀式の役割を担っているといえる」とのこと。なるほど、「“大学ムラ”への入村儀式」とは言い得て妙です。

 しかし長年続いたオリキャンも、一昨年はコロナによって中止せざるを得ませんでした。現在の3年生は、オリキャンはおろか、入学式や新入生ガイダンスも開かれないまま、入学早々オンラインでの授業を強いられた学年でした。その3年生たちが中心となって、何ヶ月も前から入念な準備を行った上で、今回のオリキャンは実現しました。今年の新入生も、高校生活の大半がコロナとの共存だったわけで、部活や高校行事などにも大きな制限があったことでしょう。

 16日、23日ともに天気に恵まれ、参加者は183名(1年生109名、スタッフ74名)、172名(1年生105名、スタッフ67名)にのぼりました。4月のはじめに行われたガイダンスではまだまだ緊張の面持ちだった新入生たちも、班ごとの準備期間を経て、さらにオリキャンという「入村儀式」を経て、すっかり広大生の顔になりました。参加者全員が心から楽しんでいることが、また互いの「信頼関係」「強い連帯感」が、十二分に伝わってくる二日間でした。全学でのオリキャンから学部別のオリキャンへ、さらにコロナ以降は「キャンプ」ですらなくなってしまいましたが、その精神は、半世紀の時を経ても色あせることなく、確実に今に引き継がれています。

 

〇文学部新入生歓迎行事実行委員会 総局長 北村 紘大

 文学部では毎年、新入生歓迎行事である「オリエンテーションキャンプ(通称オリキャン)」を4月に行っております。新入生の学生生活への不安解消と新入生同士だけでなく新入生と上級生との交流を図ることで新入生が良い大学生活のスタートを切れるようにすることを目的としています。

 昨年度同様に広島大学の指針に則り、感染対策を徹底しながら、各班が教室で交流をし、集大成として、4/16と4/23にキャンパス内でイベントを開催しました。

 イベントの内容としては4/16は「Guess Where」という運営陣が企画したゲームを行いました。運営陣がキャンパス内で撮影した写真と同じ構図の写真を撮ってきて、よりたくさんの写真を撮ってきた班が優勝というルールです。私自身は各班の点数計算のために、送られてきた様々な班の写真を見たのですが、班員の仲の良さそうな写真やユーモアのある写真などが送られてきてこちらも笑顔になりました。
 
 そして4/23はスタンツと呼ばれる1年生による出し物を行いました。各班の1年生たちが事前に準備を行い、コントやダンス、劇やクイズなど様々な発表を行いました。約2週間という短い準備期間でしたが、どの発表もとても完成度が高く、会場は笑い声や感嘆の拍手でつつまれておりとても楽しい時間でした。

 私が入学した年には新型コロナウイルスの影響でオリキャンが開催されず、半年以上なかなか友人も増えず心細い思いをしていました。そのため新入生にはそのような思いをさせないことを目標に活動してまいりました。オリキャンの活動の中でたくさんの学生の笑顔を見ることができ、この目標を達成することができたのではないかなと考えています。今年度のオリキャンも学生スタッフをはじめ、支援室の方々や先生方にたくさんのご支援をいただきました。誠にありがとうございました。新入生のより充実した学生生活とオリキャンがこの先も受け継がれていくことを、運営チーム一同切に願っております。

1日目の様子

2日目のスタンツの様子

「Guess Where」のお題の写真

左のお題に対して送られてきた写真

4.広報委員会より【広報委員会委員長 末永 高康】

 広報委員長に留任となりました末永です。もうあと二年よろしくお願いします。
 
 古いファイルを整理していたら、以前メルマガに投稿し損ねた文章が出てきましたので、以下に貼り付けておきます。このような平和な日々が一日も早く戻ってくることを願いつつ。

カープ観戦記

2014年互助会幹事(すえなが)記

 野球についてはよい記憶がひとつもない。球技が苦手だったわたしには、町内の子供会のソフトボールに参加するのが、小学生のころの苦痛の種であった。とにかく自分のところに球が飛んでこないようにと祈ることしかできない。中学校にあがれば新入生男子の約半数が野球部に入部した。まだ、そんな時代だった。女子から「野球部でないのは男ではない」と言われたのはいまでも恨みに憶えている。今思えば、あれは「差別」だ! 高校の野球部は時に甲子園に出る「名門」だった。ならば専用のグラウンドがあってもよさそうなのに、せまい校庭でトラックの第一コーナーにセンターが、第二コーナーにライトが陣取っていた。打球を逃げながらトラックを走っていたのがわたしの青春だ。それでも球場には一回だけ行ったことがある。高三の時に野球部の応援に借り出されて甲子園まで。一回戦の相手はその年優勝した徳島池田。以後、球場に足を踏み入れたことはない。互助会の幹事にならなかったならば、この夏、マツダスタジアムに向かうこともなかったはずだ。

 そういえば大学時代の思い出もろくなものではない。バースが神様になったあの年、阪神の優勝が決まりかけたころ、京都一安い飲み屋で平和に飲んでいると、となりのおっさんが用も無いのに「にいちゃん、どこのファンや」と話しかけてくる。「野球に興味ないんですけど・・・」と正直に答えたら、「巨人ファンはみんなそう言ってごまかすんや!!」とからまれた。理不尽極まりない。タイガースファンへの恐怖心が植え付けられた瞬間だ。

 2014年7月25日午後6時。対戦相手は阪神。いやな予感がする。センター奥の外野席はまだ陽が残っていてひたすら暑い。そんな「赤道直火」のカープの応援席のはずなのに、すぐ後ろにはトラのタオルをかぶったおねーさんが二人。ますます悪い予感がする。N先生は「いい男はどこ?」とポーちゃんと一緒にグランドに熱い視線を送っていたが、こちらは試合に興味はない。暑気払いにと幹事長の用意してくれたワインに意識を集中していると、♪一番○○が塁に出て、二番××送りバント、・・・てな感じで、初回裏、ぽんぽんとカープが二点先取していた。野球ってけっこう簡単に点が入るんですね。ピッチャーはエースのマエケンだというし、これで安心かと思ったら、その後、エラーで一点返された。
  
 日も暮れて外野席も少しはすずしくなった頃、前研究科長のY先生登場。陽のある内は日陰でビールをあおりながら観戦するのが通との由。5回だったか6回だったか「もう少しリードを広げたいですねぇ」と話していたその時、中田(田中?)の打球がライトスタンドに一直線に。気がつけば、スタジアムはほぼ満員。総立ちになる赤い集団、鳴り響くファンファーレ、♪今日もカープは勝~~ち、勝~ち、勝っち、勝ちの歌声を聞きながら、「やっぱりホームランはいいでしょ」とのY先生の声にすなおにうなずくわたし。「うむ、野球はホームランだ。」

 試合は後半7回表、阪神の攻撃を前に、わが応援席からも黄色い風船が3つ、へろへろと情けなく飛んでいったが、すでにカープの勝利を確信したわれわれは、そんなものは気にしない。後ろの黄色いおねーさんも何やら声を挙げているが、それも気にならない。7回裏の準備のためにスタジアムの五分の四が赤い風船で埋め尽くされたちょうどその時、いったい何が起こったのか、レフトに打球が飛んで、3-4と阪神が逆転。ちょっと、ちょっと、後ろのおねーさん、はしゃぎすぎ。まだ三回あるからね。勝負は下駄を履くまで分からんからね。と思うとだんだん肩に力が入ってくる。

 ワインを日本酒に切り替えて、グランドに集中すると、四番のエ氏(だったと思う)が敬遠されている模様。「逃げるなー、阪神。卑怯ものー」と口に出したいが後ろの阪神ファンが怖いので黙っていたら、結局、そのまま両者追加点無しで試合終了。悪い予感とはこのことだったか。別にカープファンではないが、スタジアムの熱気に引きずられたのか、何となくくやしい。「付和雷同」「事大主義」等の四字熟語が一瞬脳裏をかすめたが、まあ、にわかカープファンになってこの悔しさをしばしかみ締めるのも悪くはなかろう。ということで、そのまま反省会に突入。いやぁ、久しぶりに遅くまで飲みました。よって翌日はダウン。この観戦記もこれでおしまい。

(付記)あとでネットで確認してみたら、7回で追いつかれ、8回で逆転されていました。わたしの記憶では、赤風船の前に逆転されたことになっているのですが・・・。いわゆる「歴史の証言」というのもこうして作られていくのでしょうね。客観的な試合展開についてはしかるべき記録を参照してください。

 

 

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