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メールマガジン No.113(2023年1月号)

メールマガジン No.113(2023年1月号)
リテラ友の会 メールマガジン No.113(2023年1月号) 2023/1/31

□□目次□□

1.リテラ「21世紀の人文学」講座2022レポート
2.2022年度広島大学公開講座(後期)の報告
3.オリキャン主催運動会レポート
4.広報委員会より

1.リテラ「21世紀の人文学」講座2022レポート【哲学・思想文化学コース(中国思想文化学分野)教授 末永高康】

 12月3日午後、リテラ「21世紀の人文学」講座2022が、袋町の合人社ウェンディひと・まちプラザ(まちづくり市民交流プラザ)で行われました。テーマは「情報技術とコミュニケーション」で、倫理学教室の後藤雄太先生と岡本慎平先生が講師を務められました。

 後藤先生は「ネット・スマホにおけるコミュニケーションの問題」と題して、不自由であるけれども安定的な「共同体的人間関係」から、個々人の魅力によって自己責任において人間関係を築き上げていかなければならない、自由であるけれども不安定な「選択的人間関係」へと変容した現代社会におけるコミュニケーションの諸問題について、ネット・スマホに焦点を当てて話をされました。多様な人間同士のコミュニケーションを促進していくツールとしての可能性を秘めていたインターネットが、携帯可能で個人専用の端末であるケータイ・スマホの普及によって、逆に人々を小さな自閉的集団へと分断してしまっている現状や、それが多様な他者とのつながりを阻害するのみならず、自己を見つめる機会をも喪失させていることの問題などについてわかりやすく話をされました。

 岡本先生は「ELIZA効果と対話システムとの『コミュニケーション』」と題して、人工知能(AI)と人間のコミュニケーションをめぐる諸論点について話をされました。「チャットボット」(「チャット:おしゃべり」する「ロボット」)の元祖である「ELIZA(イライザ)」が、オウム返しの不完全な「会話」しかできなかったのにもかかわらず、人間はその「会話」の背後に意図や感情を読み込んでしまう傾向があり(「ELIZA効果」)、それが人間の持つ強い擬人化傾向によるものであることを、ハイダーとジンメルの実験で用いられたアニメーションを示しながらわかりやすく説明されました。その上で、「コミュニケーション」を「自分の意図を相手に気づいてもらうことを意図しておこなわれる行為」とした場合、人間側からは「ELIZA効果」でAIとのコミュニケーションができたと感じたとしても、AI側からの返事には、そこに自らの意図を相手に伝えようとする意図が存在しないため、それをコミュニケーションと言えるかどうか疑問であるとも話されました。

 テーマが年配の方に敬遠されてしまったのか、例年に比べると受講者の数はやや少なめとはなりましたが、いずれの講演にもみなさん熱心に聞き入っておられました。

後藤雄太准教授
「ネット・スマホにおけるコミュニケーションの問題」

岡本慎平助教
「ELIZA効果と対話システムとの『コミュニケーション』」

2.2022年度広島大学公開講座(後期)の報告【日本・中国文学語学コース(日本文学語学分野)教授 白井純】

 2022年度の広島大学公開講座(後期)は、文学部から「謎解き文献学 原文と解説で読み解く文献資料の愉しみ」と題し、3日間にわたって5回の講義を開催しました。昨年度はオンラインでしたが、今年度はサテライトキャンパスひろしま(広島県民文化センター)の会場を用いて対面で実施しました。

 この講座を「謎解き文献学」と名付けた理由は、知識がなければ読解が難しい歴史的文献を正しく読むことで、これまで知らなかった、想像もしなかった様々な事実や解釈にたどり着けること、まさに、常識が覆され目からウロコの衝撃を講師と共に楽しんでもらいたい、という願いからでした。コーディネーター役の私には、人文学の典型であり、また、見方によっては漠然としたお題を講師の先生方がどう料理するのか見てみたい、という関心もあり、私が所属する日本・中国文学語学コースから3名、哲学・思想文化学から1名、歴史学コースから1名の先生に出講をお願いしました。そのため講座は文学・語学・歴史学にわたり、地域も日本から中国・インドに及ぶ様々な内容の話題から構成されました。

 第1日目(12月3日)の第1回は、白井が「キリスト教宣教師の日本語学習」と題する講義を行いました。宣教師たちの日本語学習に、ヨーロッパのラテン語学や辞書学の伝統と、宣教先の日本独自の文化や歴史への理解があったことを、天草版『平家物語』を読みながら紹介しました。
 同日の続く第2回は、川村悠人先生が「五十音図の物語」と題する講義を行いました。日本で用いられる五十音図の元がインドの悉曇学(サンスクリット学)にあることは、日本語学分野でもよく知られていますが、資料を見るのは私も初めてで、新鮮な驚きを感じるとともに、川村先生の該博な解説を聞くことで、これまでバラバラだった知識がまとまっていく喜びも感じました。
 期せずして語学でまとまった第1日目では、川村先生が度々、私の講義内容に言及しながらお話しをされ、内容につながりが生まれていました。聴講の方にも、そうした部分に人文学の知識のあり方を感じてもらえたと思います。

白井純教授
「キリスト教宣教師の日本語学習」

川村悠人准教授
「五十音図の物語」

 第2日目(12月17日)の第3回は、陳翀先生が「「春暁」のエロティックス」と題する講義を行い、日本でもよく知られた孟浩然「春眠暁を覚えず」の解釈の歴史を紹介しました。高雅な朝寝坊の歌かと思ったら、実は激しい行為の余韻を言外に読み取らせる歌だった、という陳先生のお話は、漢詩の基本的な技法にも触れつつ巧みな話術で聴衆を飽きさせないものでした。私も漢詩に対する認識を根底から覆され、またとない楽しい時間を過ごしました。
 同日の続く第4回目は、高尾裕太先生が「中世の芸術論を読む」と題する講義を行い、連歌師心敬の芸術論を丹念に読みました。本文の正しい解釈を突き詰めることで自ずから著者が言わんとしたことに到達できる、という信念が感じられるお話しでした。
 第2日目は文学でまとまりましたが、内容の面白さは勿論のこと、続き物の講義では講師の個性の違いも見所なのだということが分かってきました。

陳翀准教授
「「春暁」のエロティックス」

髙尾祐太助教
「中世の芸術論を読む」

 第3日目(12月24日)は風雪のため前日から天候が悪く、当日も雪が舞っていましたが、会場は広く暖かいので快適でした。第5回は、奈良勝司先生が「古文書からみる激動の幕末政治」と題し、ご自身で発見されたという貴重な資料を解説しながら、これまで知られていなかった事実を明らかにしてゆきました。幕末期の出来事を記録した古文書の「新聞」が残されていた、というのは私にとって初耳で、混乱する世情から過激な行動が目立つ一方で、落ち着いて状況を分析し最善の行動をとろうとする人たちがいたということは、現代を生きる我々の指針となることだと思いました。

 公開講座の参加人数は、当初50名募集のところ応募多数により100名に拡大しましたが、それでも収容しきれず抽選を行いました。実際には、毎回60~70名程度の参加者でしたが、講師の話芸の冴えや思いを伝える熱意は、その場に聴衆がいてこそという部分もあるでしょうから、対面で開催できたことは本当に良かったと思います。
 また、「文献を正しく読む」という人文学の共通の課題に対してこれだけの関心が寄せられたことも、文学部の教員としてうれしく思いました。

奈良勝司教授
「古文書からみる激動の幕末政治」

3.オリキャン主催運動会レポート【文学部新入生歓迎行事実行委員会 総局長 山中大輔】

 文学部では、毎年、新入生歓迎行事である「オリエンテーションキャンプ(通称オリキャン)」の活動の一環として春のイベントに続いて後期には運動会を開催しています。これらの活動は学年の垣根を越えて学生の交流を図るとともに、充実した学生生活のサポートを行うことを目的としています。今年度も新型コロナウイルスの影響で多少の制限はあったものの12月10・18日に無事、東広島キャンパス内の体育館で運動会を行うことができました。

 運動会では6チームに分かれて様々な競技で競い合いました。バスケットボールやドッチビーといった運動会でおなじみの競技だけでなく、借り人競争や早走りクイズといった一風変わった競技なども行いました。どの競技も白熱し、最後まで先が読めない手に汗握る展開となりました。また各チームとても雰囲気が良く、とても楽しそうな様子を見ることができました。2日目の最後には成績発表があり優勝チームと各競技のMVPにはそれぞれ豪華な賞品が送られました。

 最後になりましたが、今回の運動会を開催するにあたりご支援いただいた教職員・支援室の方々、協力してくれた運営陣の学生スタッフ、そして参加してくれた1・2年生など、オリキャンに関わる全ての方々にお礼を申し上げます。おかげで今年も何事もなく運動会を終えることができました。今回の活動を機会に文学部の学生の仲がより親密になってくれたのであれば、総局長として何よりもうれしいです。来年度の4月には新しく新入生が入学してくるので、運動会での経験を生かして彼らの素晴らしい大学生活のサポートができるようこれからも頑張っていきたいと思います。

4.広報委員会より【広報委員会委員 後藤拓也】

 メールマガジン第113号は,昨年末に開催されたリテラ「21世紀の人文学」講座レポート,広島大学公開講座の報告,そしてオリキャン主催運動会レポートと,盛り沢山の内容になっています。お忙しいなかご寄稿頂いた末永先生,白井先生,山中大輔さん,本当にありがとうございました。
 新型コロナウイルスの感染拡大が始まってはや3年になりますが,現在も第8波の収束に見通しが立たないなど,その影響はまだしばらく続きそうです。一刻も早く感染拡大が収束し,上記のような公開講座やイベントを制約なしに開催できる環境が戻ってくれることを願うばかりです。
 

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リテラ友の会・メールマガジン

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