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メールマガジン No.117(2023年12月号)

メールマガジン No.117(2023年12月号)
リテラ友の会 メールマガジン No.117(2023年12月号) 2023/12/27

□□目次□□
1.ホームカミングデー文学部企画「文学部で味わう世界のティータイム」レポート
2.リテラ「21世紀の人文学」講座2023レポート
3.2023年度広島大学公開講座(後期)の報告
4.広報委員会より

1.ホームカミングデー文学部企画「文学部で味わう世界のティータイム」レポート

11月4日、第17回広島大学ホームカミングデーが東広島キャンパスで開催されました。

 今年の発表を担当する留学生は韓国・中国・インドネシア出身の3人です。
 トップバッターの李 英恩(イ ヨンウン)さんは韓国のご出身で、韓国の年間行事や、韓国式の結婚式を紹介されました。日本とはひと味違うお正月の過ごし方や、結婚式の様子はとても興味深く、とても魅力的でした。
 次に発表されたファイジン アハマンド ラシディさんはインドネシアのご出身で、インドネシアの伝統的な食文化について紹介されました。とても多くの調味料を使用し作られる料理は、味わいたくなるものばかりでした。
 最後に中国ご出身の曾 令之(ソウ レイシ)さんは中国のご出身で、中国のお茶文化について紹介されました。発表の中で実際にお茶を入れてくださり、とても楽しい発表でした。
 後半の学生ロビーでのティータイムは今年も「お菓子持ち帰り」でしたが、3人の留学生の周りには来場者が集まり、楽しく話す様子が見られました。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。
 最後に発表していただいた留学生3人の感想を紹介します。皆さん、素敵な発表をありがとうございました。
 

【発表者の感想】
〇李 英恩さん
 今回の世界のティータイムで韓国について紹介したイ・ヨンウンと申します。
学外のから多くの方々が発表を聞きに来てくださって多少緊張しましたが、無事に発表を終えることができて嬉しいです。
韓国は日本の隣に位置し、また近年は様々な媒体で韓国に触れる機会が多いため、皆さんにとって韓国は身近な国ではないかと思います。そのため発表を準備する時にどんなテーマにすればいいのか悩みました。最終的には、ありのままの韓国についてお伝えしたく、韓国でよく見られる姿と風景について写真をお見せしながら説明しました。
皆さんにとって、留学生から現地の話を聞く機会はなかなかないと思いますので、楽しんでいただけたなら嬉しいです。私自身も今回の発表を通して、こうした日本の学問に対する姿勢が私を日本という国に来させた大きな理由なのではないかと改めて思うことができました。
 また、世界のティータイムの開催にあたって、文学部の方々のおかげで、このような貴重な機会をいただくことができました。ありがとうございました。

〇ファイジン アハマンド ラシディ
 背景を述べると、私は人文学プログラムに在籍するインドネシア人留学生のファイジンと申します。この度は、2023年文学部ホームカミングデー「文学部で味わう世界のティータイム」において、母国の文化を紹介する貴重な機会をいただき、誠に光栄に思っています。
 今回のプレゼンテーションでは、アルバイト先でよくいただく質問をテーマに、特にインドネシアの家庭料理に焦点を当て、その魅力をお伝えしました。プレゼンの準備中、私はこれまで接したことのない日本語の料理用語を学び、新しい言葉に触れることができました。したがって、今回の発表では皆様に新しいインドネシアの文化を紹介するだけでなく、私自身も新しい日本語の表現を学べたことを嬉しく思います。調理が趣味である私にとって、この機会を通じて自らの趣味を共有し、母国の文化を伝えることができたことは非常に嬉しい出来事でした。また、発表中に皆様が興味津々でお聴きくださり、その様子を見て感動しました。
 発表が終わった後、学生ロビーで皆様とお会いでき、有意義な交流ができたことは本当に嬉しかったです。プレゼンの際には、韓国からの発表者の李さんが韓国の写真を披露し、中国からの発表者の曾さんが中国のお茶に関する知識を共有するなど、他の発表も盛り上がりました。内容だけでなく、発表方法も学べる場面であり、私にとっては知識に満ちた一時間でした。
 最後に、2023年文学部ホームカミングデー「文学部で味わう世界のティータイム」でインドネシアの文化を紹介できたことを心から嬉しく思います。この発表会を運営してくださったホームカミングデーのスタッフの皆様、お越しいただいた皆様、そして一緒に発表した留学生の皆様に感謝の意を表します。私は来年卒業するかもしれませんが、次回のホームカミングデーが成功裡に開催され、将来的にも留学生たちと共に素敵な時間を過ごしていただければと思っています。

〇曾 令之さん
 この度、広島大学ホームカミングデー「文学部で味わう世界のティータイム」にて発表する機会を頂き、心より感謝申し上げます。
千年前、日本の僧侶が杭州の霊隠寺から茶の種を持ち帰って、それを日の本の地に植えたとき、こんな小さな木が、海で隔てられた両国の間に、異なる特徴を持ちながらも共通した文化の繋がりを作ることになるとは思いもしなかったでしょう。お茶は生長する土地・水・気温・湿度などの違いによって味が大きく変わる不思議な植物です。新しいところを訪ねる度に、必ず現地のお茶を飲んで、その土地の独特な風情を味わいます。海を渡り、畳の上で湯吞みに手を添えたときも、「日本のお茶はこんな味だったのか」と思いました。
 今回の発表では、普段はテレビ番組や新聞などを通じて中国の情報に接している日本人のみなさんに、目を閉じて鼻と口を通じて大陸の香りを味わえる機会を作りたいという気持ちから、中国福建省のお茶を紹介しました。
 非常に簡単な紹介でしたが、参加者の皆さんから温かい反応を頂き、大変嬉しく思いました。日本人は、かつて長い間にわたって中国の文化を受容してきた分、ほかの国の人よりも、中国の文化に対して本質的な理解を有しています。一方、現代中国に対する認識が不足していることも確かです。この小さい茶葉を通じて、少しでも中国の今をもっと知りたい、中国に旅行したいという気持ちを持って下されば何よりです。


 

李さん発表の様子

李さん発表の様子

ファイジンさん発表の様子

ファイジンさん発表の様子

曾さん発表の様子

曾さん発表の様子

交流の様子

交流の様子

発表者集合写真

2.リテラ「21世紀の人文学」講座2023レポート【哲学・思想文化学コース(中国思想文化学分野)教授 末永高康】

リテラ「21世紀の人文学」講座2023「広島の遺跡と文化財」が、さる12月2日(土曜日)の午後、広島市内のまちづくり市民交流プラザで開催されました。定員100名のところ、それを上回る申し込みがあったとのことで、会場はほぼ満席でした。

最初に考古学の野島永先生が「広島県における古墳の発掘調査と畿内政権――西条盆地の古墳時代――」と題して講演されました。

高校の教科書では、古墳は竪穴式から横穴式へと教えているものの、広島を中心とする中国地方西部から九州東部では、竪穴式石室ではなく箱形石棺が用いられており、三ッ城古墳も二重の箱形石棺が用いられていることや、広島の平野部と異なり、西条盆地では木棺を粘土で囲む粘土槨を有する古墳もあり、畿内との関連が想定されることなどをお話されました。潮の流れの速い瀬戸内海航路が使えない古代においては、瀬野川から沼田川を結ぶルートが主要な交通路だったそうで、西条盆地はまさにその中心地であり、それ故に県内最大の前方後円墳である三ッ城古墳もこの地に存在するとのことでした。

次に文化財学の中村泰朗先生が「失われた御殿建築の復元――小早川隆景の三原城――」と題して講演されました。

近世の城郭内御殿は、正月参賀などを行うセレモニーホールとしても機能しており、そこで行われる儀礼を通じて権力関係が確認され秩序が維持されていたとのことで、非常に重要な建築物であるものの、三原城の本丸御殿も――それは数少ない豊臣時代の御殿建築だったそうですが――残念なことに明治の中頃には失われてしまったとのことでした。幸いその平面図が残されており、平面図から窺われる他の御殿建築と異なる特徴についてお話されるとともに、杉戸の実物や明治時代の写真が残されていることから、立体的な復元考察が可能な貴重な事例であることをお話され、中村先生ご自身による復元断面・立面図も示されました。

遺跡や文化財に対する両先生の熱い気持ちが伝わってくるご講演で、来場者も熱心に耳を傾けていました。

野島先生 講義の様子

中村先生 講義の様子

3.2023年度広島大学公開講座(後期)の報告【歴史学コース(西洋史学分野)教授 前野弘志】

今年度後期の広島大学公開講座の当番は西洋史学研究室となり、講座名「古文書から読み取る西洋史」と題して、3人の教員が専門とする時代地域言語の異なる古文書をそれぞれ取り上げ、私たち研究者が日々、古文書をどのように読み、どんな困難や喜びを味わっているのかを紹介しつつ、古文書から読み取れる歴史について話をしました。日程、テーマ、参加者数は以下の通りです。

 1回:12/2(土)前野弘志「古代ギリシア語碑文を読む」参加者41人。第2回:12/9(土)足立孝「西欧中世文書を読む」参加者43人。第3回:12/16(土)井内太郎「16世紀大航海時代におけるイングランドの海賊について考える」参加者35人。場所はサテライトキャンパスひろしま(広島県民文化センター)、時間は13:00-14:30、対象は一般市民でした。私は他の講演を拝聴していないので、以下は自分の講演に関する短い報告です。

 参加者の大半はご高齢の方々で、ご夫婦での参加も見られました。また母親といっしょの女子高校生が一人。私のゼミの卒業生も一人来てくれていです。みなさまメモを取りながら聴いて下さり、また講演の途中でも分からないことがあれば質問して下さるなど、大変熱心に聴いていただきました。

 私の講演のテーマは、ある墓から出土した紀元前730年頃のワインデキャンタに書かれた現存最古のギリシア語碑文を取り上げ、その読み解きをみなさんといっしょに試みるというものでした。まず碑文学とは何かについて述べ、日本人にとってなじみの少ない古代ギリシアを身近なものにする工夫として、「知らずに知っているギリシア語クイズ」を行い、ギリシア・アルファベットの紹介や特徴を述べた上で、最古のギリシア語碑文の解読に挑戦した。実は、このワインデキャンタはダンスコンテストの賞品であり、最古の碑文は賞品授与の文言でした。「まとめの翻訳ができる人はいますか」と問いかけたところ、女子高校生が真っ先に手を挙げ、正確な訳を見事に披露すると、他の参加者から一斉に拍手が沸き起こりました。古代の文書を読む難しさと読めたときの喜びが共有できた瞬間でした。

 厳しい神や王の命令が書かれたオリエントの碑文とは異なり、ダンスコンテストという軽やかなテーマの古代ギリシア語碑文からは、権威ではなく、競争とルールを重んじる古代ギリシア人の価値観が読み取られ、それが後の民主政治の誕生につながったのではないかと述べて締め括りました。講演後にも多数の質問と宿題をいただき、ゼミの卒業生とも近況について話しができ、私自身にとっても非常に楽しい一時でした。

4.広報委員会より【広報委員会委員 陳 チュウ】

もうすぐ一年が終わろうとしています。日本漢字能力検定協会は1212日に、今年の世相を表す「今年の漢字」が「税」に決まりました。この漢字「税」の本来の意味を調べてみると、『爾雅・釈詁』では「税は舎なり」とされ、さらに、注釈では「舎は放置なり」と説明されています。また、『史記・李斯本伝』には、「税駕は、なお解駕なり、休息を言うなり」という釈義が見られます。「放置」にせよ、「休憩」にせよ、今回選ばれた「税」の意味はかなり異なります。

今号では、ホームカミングデイの報告と広島大学「21世紀の人文学」・「公開講座」を中心に構成しています。報告してくださったFAIDZIN AHMAD RASYIDIさん、李英恩さん、曾令之さん、そして末永高康先生と前野弘志先生に、感謝を申し上げます。会員の皆さまは、健やかに新春をお迎えいただけること、心よりお祈り申し上げます。
 

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学文学部長  友澤和夫
編集長:広報委員長  末永高康
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