【IR報告】工夫された教育活動の一方、教室外学習のためのコミュニケーション不足か?

 中央教育審議会による「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では、高等教育において学生中心の教育を推進し、教育の質や成果を公表する重要性が指摘されました。諸外国では大規模な学生調査が行われ、データは教育改善や機関の認証に利用されています。これまで日本では大学ごとに様々な努力や調査が行われていますが、文部科学省は、全国的なデータの蓄積体制は整備されておらず学生視点からのデータが不足していると認識しています。そこで、同省は2019年度から全国学生調査の施行を開始し、大学の教育改善や社会の理解、政策立案に役立てることを目指しています。本学はこの施行調査の第1回から参加しています。調査の詳細は次のリンク先をご覧ください(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/chousa/1421136.htm)。

 この報告文ではその調査(2022年度施行)の一部「大学に入ってから受けた授業で、次の項目はどのくらいありましたか」という質問に対する10項目の本学学生の回答傾向を、全国大学の傾向と比較して示すものです(本報告はそのうち5項目のみ)。分野や個人属性によっても学習のパターンは傾向が異なり、この結果が個人の学習傾向を示すものではありませんが、本学の教育活動に対する政策立案に一定の示唆を持つ可能性はあるでしょう。

 本学の対象学生(学部2年生と最終学年)は5,215人で、そのうち1,213人が回答に協力しました(回答率23.3%)。72の国立大学、80の公立大学、そして430の私立大学が参加し、総計112,341人の学生から回答が得られています。

 

学習内容の意義や必要性はおおむね説明されており、授業も一定の工夫がなされている

 下の2つのグラフを参照すると、他の大学と比較して、おおむね本学の学生は、授業の内容の意義や必要性が説明されており、学習内容をさらに学びたいという意欲がわく内容であったと認識しているようです。

 

 さらに、次のグラフを確認すると、授業を理解しやすいように、本学の教員が何らかの工夫をしていたことが窺えます。

 

教室外の学習のための指示が不足している?

 次のグラフは、予習や復習といった教室外の自主的な学習のための方針が学生に明確に示されているかという質問に対する学生の回答を示したものです。この回答の傾向を見ると、本学の将来の教育活動改善のための可能性を窺い知ることができるかもしれません。「よくあった」「ある程度あった」までを含めると、全ての国立大学と同程度の回答傾向ですが、「よくあった」だけを見ると、いずれの大学種別の全体の回答傾向を下回っています。学生が教員の学生への期待を理解すること、そして、教員と学生の学習方針の共有は、教育成果を高めるために重要な要素です。教員が学生にどのような教室外の学習を期待するかを明確に伝えることによって、本学の教育活動の質をより高めることができるかもしれません。

 

TAが積極的に活用されている

 本学ではティーチングアシスタント(TA)が積極的に活用されているようです。下のグラフに示されているように、他のどの種別の大学群と比較してみても、本学のTAが広く活用されている様子が読み取れます。本学はHirodai TAという制度(https://www.hiroshima-u.ac.jp/capr/ta)を確立し、教育活動の改善を積極的に目指してきました。この活動が学生から認識され、TAから補助的な指導があったと認識している学生が多いのだろうと推測できます。

 

 今回は「大学に入ってから受けた授業で、次の項目はどのくらいありましたか」という質問についての10項目のうち、5項目の回答傾向を報告しました。次回の報告文では、授業課題に対する認識や英語で実施される授業の有無に対する認識を報告します。

 

【問い合わせ先】
教育学習支援センター
e-mail:capr@office.hiroshima-u.ac.jp
    (@は半角文字に置き換えてください)


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