井上助教が、2023年2月27日から3月10日まで、フランスに研究渡航しました。
研究交流レポート
Université de Haute Alsace
渡航目的:
既に行なっている鉄成分に富む合成粘土鉱物の結晶構造解析に関する共同研究の成果発表を行う。成果を元に今後の共同研究の発展について相談する。
渡航中研究成果:
オートアルザス大学IS2M研究所のLiva Dzene助教の元を訪問し、現在行なっている共同研究の成果についての議論、今後の共同研究の発展についての相談、セミナーでの発表を行なった。Liva Dzene助教とその研究チームは粘土鉱物の低温での合成を行なっている。合成粘土鉱物の構造解析は一般的にはX線回折法を用いるが、複数種類の粘土鉱物が混在する場合などには、より詳細な高分解能透過電子顕微鏡法(HRTEM)を用いた解析が必要である。筆者は受入研究者が合成し粘土鉱物のHRTEMを用いた構造解析を担当しており、滞在中にLiva Dzene助教、Patrick Dutournié教授と筆者の行なった構造解析の結果について議論し、論文化へ向けた相談を行なった。また、彼らが行なっている合成方法を見学した。さらに、今後は異なる化学組成の合成粘土鉱物でも共同研究を行うこととなった。滞在の最終日には、IS2M研究所のセミナーにて、発表を行なった。試料の合成実験の方法を見学したことで、試料についてより詳細に理解することができた。また、筆者が行なった分析手法や結果についても、対面で話し合ったことによってお互いに理解が深まるとともに、さらなる共同研究の発展に繋がる議論ができ、非常に有意義な滞在となった。
Université de Poitiers
渡航目的:
グローブボックスを使った鉄成分に富む含水鉱物の合成実験の方法について意見交換すると共に、今後の共同研究の可能性について相談する。
渡航中研究成果:
ポアティエ大学IC2MP研究所Fabien Baron助教の元を訪問し、グローブボックスを用いた雰囲気を制御した環境下での鉄成分に富む粘土鉱物合成手法を見学した。Baron助教により合成実験のシミュレーションもして頂き、合成実験について有益な情報を得ることができた。また、Baron助教から、将来的により長期にIC2MP研究所に滞在し、グローブボックスを用いて合成実験をすることも可能であると提案して頂き、今後の共同研究について有益な議論を行うことができた。さらに、Baron助教が合成した試料について、HRTEMによる構造解析が出来ないかとの提案があり、継続的に共同研究の相談を行なっていくことで同意した。実験設備の見学や事前には想定していなかった共同研究の発案など、オンライン会議では得ることの出来ない成果を得ることができた。
Université de Lille
渡航目的:
グローブボックスを使った鉄成分に富む含水鉱物の合成実験の方法について意見交換すると共に、今後の共同研究の可能性について相談する。
渡航中研究成果:
リール大学地球科学科Franck Bourdelle教授を訪問した。筆者の緑泥石に関する過去の研究について相談すると共に、Bourdelle教授が現在行なっている研究についての説明を受け、HRTEMでの結晶構造解析が適用できないか提案を受けた。また、STXMとTEMでの緑泥石化学組成分析の手法比較を行うことができないか提案し、研究の進め方について議論することができた。継続的に議論を行い、共同研究を行うことで合意した。
全体を通して
各研究機関での滞在期間は短かったが、実際に滞在したことによって共同研究者の同僚などとも議論することができ、想定しなかった新しい共同研究の可能性が生まれることがあった。また、滞在先を超えて研究者を紹介していただくことができたことで、出発前に想定した以上の成果を得ると共に、今後の発展に繋がる滞在となった。末筆ながら、HIRAKU-Globalプログラムによる支援に深く御礼申し上げる。
IS2M研究所でのセミナー発表の様子
リール大学水熱合成実験室にて
(愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター 助教 井上 紗綾子)