熊野町で検証実験中の渓流モニタリングシステムで観測された地盤変位について

防災・減災研究センター   土田 孝・橋本涼太
 (株)計測リサーチコンサルタント  大町正和・梅本秀二

  広島大学防災・減災研究センターと株式会社計測リサーチコンサルタントは、土砂災害警戒区域における住民の警戒と避難に役立てるため、渓流内の地盤の動きを常時監視する土石流センサーを開発しました。そして、試作した土石流センサーの性能を調べるための検証実験を、2020年1月から熊野町川角地区大原ハイツ山側の渓流で行っています。
  センサーは図-1に示す測点①~測点⑤にそれぞれ2箇所ずつ設置し、計10箇所でモニタリングを実施しています。

図-1 地盤変位センサーの設置位置
(各測点ごとに2箇所で計10箇所、写真は被災直後のもので現在は広島県により砂防ダムが建設されています。)

 

図-2 スマートフォンによる各計測点の地盤変位の確認画面

  地盤変位のデータはパソコンで確認するシステムでしたが、6月末にスマートフォンでも確認できるよう改善しました。図-2はスマートフォンの画面で渓流内の地盤変位を確認する画面です。

  これまでの観測の結果、いずれの計測地点でも気温変化による周期的な変動が確認されました。気温の上がる昼間に上流側へ、気温の下がる夜間に下流側へ変位しており、1日の最大の変位量は概ね2~4mm 程度となっています。

  図-3図-4はそれぞれ測点①と測点⑤の各2つの計測点における日変動(各日の0 時のデータを抽出し前日からの変位量(日変位量)を算出)と熊野町の降水量の関係を示しています。図のように7月17日までの間に日雨量の最大は129㎜でしたが、日変動は非常に小さく6月以降は±1㎜以内です(気温変化が冬季よりも少ないため)。
  これは降雨により渓流内の地盤はほとんど変位していないことを示しています。測点②、③、④の計測点も同様の結果でした。

図-3 測点①の2計測点における日変動と熊野町の降雨の関係

図-4 測点⑤の2計測点における日変動と熊野町の降雨の関係

 

 今後も引き続き豪雨に対する警戒が必要となりますので、見えにくい斜面の動きを可視化する本観測システムの活用をさらに検討していきたいと考えています。
  本検証実験は熊野町総務部危機管理課、川角大原ハイツ自主防災会、大原ハイツ復興の会、技術士会中国本部防災委員会の研究協力を得て実施しています。また本研究は、科学技術振興機構西日本豪雨復興支援(A-STEP機能検証フェーズタイプ)によって実施したものです。

 

お問い合わせ先

広島大学 防災・減災研究センター                 先進理工系科学研究科 地盤工学研究室
特任教授 土田 孝                                        助教  橋本 涼太   
E-mail: ttuchida*hiroshima-u.ac.jp              E-mail: ryotahashimoto*hiroshima-u.ac.jp

(注:*は半角@に置き換えてください)


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