【研究成果】PM2.5による喘息悪化メカニズムを解明

本研究成果のポイント

  • PM2.5に含まれる多環芳香族炭化水素が肺胞マクロファージを活性化する
  • 活性化したマクロファージはIL-33産生を介して炎症を引き起こす

概要

広島大学大学院統合生命科学研究科 石原康宏准教授、カリフォルニア大学デービス校Christoph Vogel博士、Norman Kado博士、ドイツライプニッツ環境医学研究所Thomas Haarmann-Stemmann博士らから成る3ヶ国間国際共同研究グループは、PM2.5に含まれる多環芳香族炭化水素が肺胞マクロファージに作用し、インターロイキン33の産生を介して炎症反応を増悪させることを明らかにしました。

PM2.5は易感染性や肺機能低下、喘息の発症・悪化の素因となると考えられていますが、そのメカニズムは分かっていませんでした。一方、疫学的な研究より、喘息の重篤度と炎症性サイトカインであるインターロイキン33(IL-33)の発現量が相関することが報告されていました。

呼吸器系における主要な免疫細胞は肺胞マクロファージです。石原准教授らは、マクロファージをPM2.5に曝露すると、インターロイキン33(IL-33)の産生が増加することを発見しました。このメカニズムとして、PM.2.5に付着している多環芳香族炭化水素が芳香族炭化水素受容体(AhR)に結合することにより、IL-33の転写が活性化することを示しました。加えて、炎症状態にあるマクロファージは、PM2.5によるIL-33産生の感受性が高まっていることも分かりました。

これらの成果は、PM2.5を吸い込むと、AhRとIL-33を介したメカニズムにより、喘息などの炎症性呼吸器疾患が増悪することを示唆しています。

本研究成果は、アメリカ東部標準時間の2019年6月13日に米国毒性学会(Society of Toxicology)のウェブサイトにオンラインで先行して公開され、公式ジャーナルである「Toxicological Sciences」170巻2号に掲載予定となりました。

PM2.5による喘息悪化の分子メカニズム
大気中のPM2.5を吸入するとPM2.5は肺の奥まで入り込み、PM2.5に含まれる多環芳香族炭化水素が肺胞マクロファージの芳香族炭化水素受容体(AhR)に結合する。AhRはインターロイキン33(IL-33)の産生を増加させてアレルギー性炎症を悪化させる。

論文情報

  • 掲載雑誌: Toxicological Sciences
  • 論文題目: Interleukin 33 expression induced by aryl hydrocarbon receptor in macrophages
  • 著者: 石原 康宏1,2 (責任著者), Thomas Haarmann-Stemmann3, Norman Y. Kado1,4,5, Christoph F.A. Vogel1,4
    1. カリフォルニア大学デービス校 健康環境センター
    2. 広島大学 大学院統合生命科学研究科 生命医科学プログラム
    3. ライプニッツ環境医学研究所
    4. カリフォルニア大学デービス校 環境毒性学部
    5. カリフォルニア州環境保護庁
  • DOI番号: 10.1093/toxsci/kfz114
【お問い合わせ先】

広島大学大学院統合生命科学研究科
准教授 石原 康宏

TEL: 082-424-6500
E-mail: ishiyasu*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えて送信してください)


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