【研究成果】ノックアウトウニの成体の作出に成功!

Pks1ノックアウト成体ウニ

本研究成果のポイント

  • CRISPR-Cas9システムを利用したゲノム編集により、ウニにおける高効率なゲノム編集法を確立しました。
  • 色素合成に関与するポリケチド合成酵素をコードするPks1遺伝子をノックアウトし、これを研究室内の環境で飼育することにより、アルビノ表現型を示すノックアウトウニの成体の作出に成功しました。

概要

広島大学大学院統合生命科学研究科 数理生命科学プログラムの坂本尚昭准教授と同大学大学院博士課程後期学生劉大明らの研究グループは、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集により、ノックアウトウニの成体の作出に成功しました。

バフンウニ(Hemicentrotus pulcherrimus)(図1)は、日本に広く分布しているウニであり、発生生物学の研究においても用いられる動物です。本研究では、バフンウニの幼生の色素合成に重要なポリケチド合成酵素をコードするPks1遺伝子を標的とし、CRISPR-Cas9システム(図2)による遺伝子ノックアウト(注)を行いました。その結果、変異導入効率100%の高効率な変異導入に成功し、すべてのノックアウト胚が色素をもたないアルビノ表現型を示すプルテウス幼生へと発生しました。また、このプルテウス幼生をさらに飼育し続けたところ、色素合成以外は正常に発生し、変態後には真っ白なアルビノウニへと成長しました。これは、ゲノム編集によって生まれた世界初のノックアウトウニの成体です。

本研究の成果は2019年7月29日付で日本発生生物学会の機関誌「Development Growth & Differentiation」のウェブサイトにて先行公開されました。

※注.遺伝子ノックアウト
遺伝子(DNA)の塩基配列を改変し、遺伝子そのものを破壊する研究手法。

図1 バフンウニ
バフンウニ(Hemicentrotus pulcherrimus)は、日本に広く分布しており、国内における発生学の研究材料としても使われます。

図2 CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集
CRISPR-Cas9システムでは、ガイドRNA (sgRNA)とCas9ヌクレアーゼを細胞に導入すると、sgRNAがCas9ヌクレアーゼを相補的な塩基配列をもつ標的部位へと先導し、Cas9ヌクレアーゼが標的部位にDNA二重鎖切断を導入します。この切断部位が修復される過程で、欠失/挿入などの変異が導入されます。

論文情報

  • 掲載雑誌: Development Growrh and Differentiation
  • 論文題目: Establishment of knockout adult sea urchins by using a CRISPR-Cas9 system.
  • 著者: Daming Liu*, Akinori Awazu, Tetsushi Sakuma, Takashi Yamamoto, Naoaki Sakamoto# (*筆頭著者、#責任著者)
  • DOI番号: 10.1111/dgd.12624
【お問い合わせ先】

広島大学大学院統合生命科学研究科 数理生命科学プログラム
准教授 坂本 尚昭

TEL: 082-424-7447
E-mail: naosaka*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えて送信してください)


up