【研究成果】日本の空き家問題を数学の力で解決! ~最適税金政策の提案~

本研究成果のポイント

  • 2033年に日本全国で30.5%に達すると予想されている深刻な空き家問題を、数理モデルで初めて捉えることに成功しました。
  • 数理モデルを用いて、将来の空き家の動向を予測可能にするだけではなく、地域性を反映した上で最適となる税金政策を提案しました。
  • 広島市のデータをもとに、将来の空き家の空間分布を予測し、自治体の財政圧迫を減らす空き家の有効活用の空間戦略を発見しました。

概要

広島大学大学院統合生命科学研究科 李聖林 准教授は、日本の空き家問題を数理モデルで捉えることに成功しました。本研究では、空き家の動向を現在の人口分布や経済規模から予測できる数理モデルを世界で初めて構築し、地域性を反映することで現実的に考えられる税金政策を提案し、その有効性を調べました。その結果、地域の人口や経済力によって最適な政策が異なることを発見しました。

また、政策による自治体のコストを評価し、空き家を減らすだけでなく、その政策によって自治体の財政がどう影響を受けるかについても明らかにしました。また、空き家の有効活用における空間政策(注1)を提案し、それを行えば、自治体の財政に一層有利になる政策も可能であることを示しました。

本研究の数理モデルは各地域のデータや状況を細かく反映することが可能であり、政府や自治体が空き家政策を実施する上で、事前にその有効性を検討することが可能です。本研究によって実社会課題における数学の新たな可能性を開けると期待されます。

本研究成果は、「Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics」オンライン版に掲載されました。

【語句説明】
(注1) 空間的政策:空間的配置(つまり、位置)によって生じる有効活用間の競争度を利用し、有効活用の都心部集中現象を減らす政策。

広島市の今後100年後の空き家分布の予測と空間政策後の都心部における住居可能領域の推移

広島市の今後100年後の空き家分布の予測と空間政策後の都心部における住居可能領域の推移

論文情報

  • 掲載誌:Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics
  • 論文タイトル:Mathematical modeling and regionality-based optimal policy to reduce empty houses, Akiya, in Japan
  • 著者:李聖林1,2,3,*, 野間田 匡顕2, 椋 実代子2  
    * 責任著者(corresponding author)
    1. 広島大学大学院統合生命科学研究科・数理生命科学プログラム
    2. 広島大学理学部数学科
    3. JSTさきがけ
  • DOI番号:10.1007/s13160-019-00
【お問い合わせ先】

広島大学大学院統合生命科学研究科数理生命科学プログラム 
准教授 李聖林

E-mail: seirin*hiroshima-u.ac.jp

(注:*は半角@に置き換えてください)


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