【研究成果】アカヒトデシダムシは新種だった!~90年越しの再同定~

本研究成果のポイント

  • シダムシ類(甲殻亜門: 嚢胸下綱)はヒトデ類の体腔内に寄生する内部寄生虫です。
  • アカヒトデに寄生するアカヒトデシダムシは1931年にはじめて報告され既知種と同定されましたが、本研究により新種であることを確かめました。
  • 本種の体の一部は宿主の体壁に癒着しています。このような特徴はシダムシ類において初めて発見されました。

概要

広島大学大学院統合生命科学研究科の博士課程前期学生の吉本明香里さん、同研究科の若林香織准教授の研究グループと、鳥羽水族館の森滝丈也学芸員、(株)水土舎の齋藤暢宏研究員は、アカヒトデの体内に寄生するシダムシ類の一種を調べ、外部形態と遺伝子情報を基に、新種であることを確かめました。シダムシはヒトデの体腔内(*1)に寄生する内部寄生性の甲殻類です。体は複雑に枝分かれしており、『シダの葉』のように見えます。本種を含め、世界で35種、日本で8種が報告されています。

アカヒトデは日本の本州中部以南の磯によく見られる赤~橙色のヒトデです。アカヒトデにアカヒトデシダムシが寄生することは1931年に発見されていましたが、今日までの約90年間、既知種として同定されてきました。しかし、本研究において複数の生きたアカヒトデシダムシを精査したところ、既知種にはない特徴を持っていることが分かり、新種であることが確認されました。

アカヒトデシダムシだけに見られる特徴の一つは、体の一部や体と宿主の体壁が膜のようなものを介して癒着していることです。この特徴は1931年にも観察されていたようであることが当時の記載からわかりますが、シダムシ類についての研究がほとんどなかった時代であったせいか、癒着については注目されていませんでした。さらに、アカヒトデシダムシは宿主であるアカヒトデの体壁にも硬く癒着しています。本種でしか記録されていないこのユニークな特徴は、学名の由来にもなっています。

この成果は、The Crustacean Societyが発行する専門誌Journal of Crustacean Biologyのウェブサイトで公開されました。

 

(図1)  アカヒトデシダムシ(矢印)に寄生されたアカヒトデ(体腔内をむき出しにした状態)。

用語解説

(※1) 体腔
動物の体内にある、体壁と内臓の間にある空間。

論文情報

  • 掲載誌: Journal of Crustacean Biology
  • 論文タイトル: A new species of Dendrogaster Knipowitsch, 1890 (Thecostraca: Ascothoracida: Dendrogasteridae) parasitic in the sea star Certonardoa semiregularis (Müller & Troschel, 1842) (Echinodermata: Asteroidea) from Japan
  • 著者名: Akari Yoshimoto*, Takeya Moritaki, Nobuhiro Saito and Kaori Wakabayashi# (*筆頭著者、#責任著者)
  • DOI: 10.1093/jcbiol/ruaa040
【お問い合わせ先】

広島大学 大学院統合生命科学研究科 生物資源科学プログラム
准教授 若林香織
TEL: 082-424-7989
E-mail: kaoriw*hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)


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