大学院統合生命科学研究科
教授 大塚 攻
TEL: 084-622-2362
E-mail: ohtsuka*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
本研究成果のポイント
- 殖産業に甚大な被害をもたらす魚類寄生虫ウオジラミ類の吸着メカニズムを世界で初めて詳細に解明した
- 付属肢の単純な遊泳行動を吸盤の開閉運動に変換させるクチクラ(※1)の内部構造を見出した
- クチクラの内部構造の相違によって様々な運動機能を発現させることができる
- ウオジラミ類の吸盤は種の違いがほとんどないステレオタイプであることから,粘液で覆われた魚類の組織上への付着に特化した吸着メカニズムであると推定された
概要
ウオジラミ類の吸盤は頭胸部と付属肢の変形によって吸盤が形成されている。広島大学大学院統合生命科学研究科の大塚攻教授らは、この吸盤の宿主への着脱は、付属肢の単純な前後運動と体表クチクラの内部構造の特殊化によってもたらされていることを解明した。この吸盤の構造は種による違いがほとんどないステレオタイプで、魚類の粘液に密着する適応的構造を考えられる。
本研究の成果は、学術雑誌「Arthropod Structure and Development」オンライン版に掲載されました。
A.ウオジラミの吸盤。頭胸部(CT)と遊泳肢(L3)から構成されている(走査型電子顕微鏡);B. 頭胸部周辺のクチクラ膜(Aの CT. M)の断面(透過型電子顕微鏡)、シャッター式風呂ふたのような内クチクラ(ENC)が運動の方向性を規定する;C. 頭部先端にある補助吸盤(AのLN)の断面(透過型電子顕微鏡)、硬軟の構造が互い違い2層に配置し、人工筋肉のような構造となっている。
用語解説
(※1) クチクラ:甲殻類などの外骨格を構成する、多糖類が主成分の丈夫な膜構造。通常、上クチクラ、外クチクラ、内クチクラという成分の異なる3層で構成される。今回の研究では、ウオジラミの内クチクラの構造的多様性が様々な機能の違いをもたらしていることが判明した。
論文情報
- 掲載誌: Arthropod Structure and Development
- 論文タイトル: The cephalothoracic sucker of sea lice (Crustacea: Copepoda: Cal;igidae): The functional importance of cuticular membrane ultrastructure
- 著者名: Ohtsuka, S., Nishida, Y., Hirano, K., Kaji, T., Kondo, Y., Komeda, S., Tasumu, S., Koike, K. and Boxshall, G.A.
- DOI: https://doi.org/10.1016/j.asd.2021.101046