輸送システムプログラム

プログラムの紹介と概要

 古来人類は人や物を行き交わすことにより文明を発展させて来た。それ自体が文明の産物である乗り物は,人や物の輸送手段として重要な役割を果たすとともに,文明の発展に伴い陸から海へ,そして空へと媒体としての場を広げてきている。人類の活動のグローバル化が進展する現在では,それらの場,すなわち陸圏,海圏,空圏を含めた地球圏全域での複雑な輸送ネットワークが構成されており,人類の種々の活動を支えている。船舶・航空機・自動車・鉄道など乗り物を主体とする輸送機器および物流システムの工学技術は,輸送のハードおよびソフトの観点からこれまで以上に重要となっている。一方,輸送機器の運用の場でもある地球圏は今日深刻な環境問題に直面しており,輸送機器の工学技術を考えるにおいては,従来行われている環境低負荷型の視点に立った設計のみならず,人工物である輸送機器と自然環境とが調和した共生システムを構築・維持する観点が必要不可欠である。したがって,ローカルエリア及びグローバルエリアの両視点で海洋環境や大気環境を理学的・工学的見地から探究しつつ,地球圏環境を保全・創造する工学技術を開発し,さらには,輸送機器と地球圏環境とが共生するための工学技術を構築していくことが極めて重要となる。輸送システムプログラムはこうした分野の技術者に必要となる工学を総合的に教育する。
 具体的には,1年次の総合的な基礎教育,2年次の数学や力学などの工学基礎教育をベースとして,3,4年次に専門的な工学教育を行う。この際,輸送機器や地球圏環境にわたる広範な知識の習得と思考能力の向上が求められる。すなわち,自然環境と調和・共生する輸送機器や物流システムを計画,製作,建設,維持するための工学及び,地球圏環境を分析・把握し,環境へのインパクトを低減するための環境関連機器や環境システムを計画,設計,製作,維持するための工学を中心に学習する。
 本プログラムの特徴の一つとして,工学知識の教育に加えて技術者としての総合的な能力の養成を特に重視していることが挙げられる。この実現のために,工学的手法を用いて実際に物を計画・設計・製作・性能評価させる創成型プロジェクト科目群を教育の柱の一つに据えている。こうした学習を通じて,陸・海・空を含めた地球圏の輸送機器および環境関連機器に関わる技術的問題に対して総合的な取組みを率先して行う人間,すなわち,自ら問題を発見でき,科学的,合理的に問題解決策を探り,調和的,倫理的に問題を解決できる実行力とリーダーシップを有する技術者,研究者に育つ人材を輩出する。
 プログラムにより養成された技術の展開分野は主として,輸送機器関連分野,環境保全・自然エネルギー利用技術分野である。具体的には,船舶・海洋,航空・宇宙,自動車,情報・通信機械,風力・海流発電などのハードウェアのみならず,輸送・物流システム,電機・コンピュータシステム,システムエンジニアリングなどのソフトウェアなど,幅広い分野となる。

 主専攻プログラムにおける教養教育の位置付け

 幅広い教養に支えられた豊かな人間性を培い,人類や社会が直面している地球環境問題,社会環境問題を理解します。さらに,人と社会,自然と工学との多角的な関わりの中でそれを解決するための道筋を考える能力を培います。そのために,
 
  (1)様々な社会問題を多面的に捉え,その全体像を把握する力と姿勢を習得します。
  (2)専門以外の分野に接し,幅広い視野を獲得します。
  (3)スポーツを通して人間生活の基本である健康・体力に対する知識を学びます。
  (4)社会の中における機械システム工学技術者の立場を理解し,倫理的問題を解決する能力を養成します。

プログラムの詳述書


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