平成29年度講演会

第1回「地方大学における細菌コミュニケーション研究」

諸星 知広氏 (宇都宮大学 大学院工学研究科 物質環境化学専攻 准教授)

 平成29年6月6日、本年度第1回の「卒業生等を通した社会交流事業」講演会として、宇都宮大学 大学院工学研究科 物質環境化学専攻 准教授の諸星知広先生をお招きして、「地方大学における細菌コミュニケーション研究」というタイトルでご講演いただきました。

 諸星先生は、平成15年に本学大学院先端物質科学研究科分子生命機能科学専攻博士課程後期を修了後、宇都宮大学工学部助手を経て、現在は宇都宮大学大学院工学研究科物質環境化学専攻准教授の職に就かれています。

 講演会では、宇都宮大学での研究室立ち上げ時のエピソードや微生物間コミュニケーション機構『Quorum Sensing』に関する研究について詳しくご説明いただきました。
 専門的なお話のあとは、研究者を目指す学生さんへ個人的な提言として、調べつくされたと思われるものにこそ宝が埋まっていること、新しい研究を目指すために過去の研究を鵜呑みにし過ぎない事を先生が好きな言葉「枯れた技術の水平思考」(任天堂元技術者:故横井軍平氏の開発哲学)を例に、分かりやすくお話しいただきました。

最後に、研究者を目指す学生さんにメッセージとして

 ① 広い視野をもつこと(自分の研究テーマ以外の事にも)
 ② 研究以外の趣味を持ち、そちらにも全力で取り組む
 ③ ダラダラと仕事をしない。
 (ムダを省く事の方が知識・能力・エネルギーが必要)
 ④ 出来るだけ後輩の指導・手伝いをする。
 (人に分かりやすく教えることは自分が理解していないとできない)
 ⑤ オンリーワンを目指して自分の「名刺」となるような研究をみつける
 ⑥ 年に1本、どんなレベルの低い雑誌でもよい、日本語でも構わない、必ず論文を出し続ける努力をしていればいつかは自分を守る武器になる。
 ⑦ 良い師と巡り合って下さい。
と、大事なポイントを7つあげていただき、講演会を締めくくられました。

 講演会後は、質疑応答や情報交換が熱心に行われました。

 

第2回「超伝導薄膜とトランジスタ、時々低温センター -感性とコミュニケーションで拓く研究生活-」

野島 勉氏 (東北大学 金属材料研究所 准教授)

 平成29年9月7日、本年度第2回の「卒業生等を通した社会交流事業」講演会として、東北大学 金属材料研究所 准教授の野島勉先生をお招きして、「超伝導薄膜とトランジスタ、時々低温センター -感性とコミュニケーションで拓く研究生活-」というタイトルでご講演いただきました。

 野島先生は、広島大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程後期を修了後、千葉大学理学部物理学科助手、オランダ・ライデン大学カマリンオネス研究所客員研究員(日本学術振興会特定国派遣研究者)、その後東北大学極低温科学センター助教授、東北大学金属材料研究所助教授を経て、現在は東北大学金属材料研究所准教授の職に就かれています。

 本日の講演会の前半では、電気二重層トランジスタの電界超伝導と、液体ヘリウムの供給・共同利用実験など現在の仕事内容等についてのご説明、後半では、研究室選びから研究への取り組み方など、学生時代から今までのエピソードを踏まえながら、終始和やかな雰囲気でお話いただきました。

最後に、うまくいった事といかなかった事の経験を振り返って、学生さんへのメッセージとして

  ○プロ意識をもとう(誇りと責任と遊び心)

  ○うまくいかない時は、うまくいかないなりにまとめよう

   (おもいがけずまたチャンスが来た時いつでも再開できるように)

  ○直感を信じよう(自分を信じて、自分で判断が重要)

  ○コミュニケーション能力はいつの時代でも重要

と、締めくくられ講演会を終了しました。

講演会終了後は、活発な質疑応答が行われました。

第3回「無駄になる経験は無い -ベンチャー企業、一般企業を経験して思うこと-」

小迫 照和 氏 (矢崎総業株式会社 技術研究所 研究員)

 平成29年10月6日、今年度第3回の「卒業生等を通した社会交流事業」講演会として、矢崎総業株式会社技術研究所研究員の小迫照和氏をお招きし、「無駄になる経験は無い -ベンチャー企業、一般企業を経験して思うこと-」という題目でお話しいただきました。

 小迫氏は平成22年に本学大学院先端物質科学研究科量子物質科学専攻博士課程後期を単位取得退学後、ベンチャー企業勤務を経て、平成26年より矢崎総業株式会社に入社され、平成28年に 博士(工学)を取得されました。

 本日の講演会では、現企業で学んだこと・ベンチャー企業と一般企業の違い・失業から転職を経験して思うこと・社会に出て役に立った学生時代の経験・博士号を取る前後の意識の変化等についてお話しいただきました。

 最初に、小迫氏の現在の研究テーマである「金属腐食のメカニズム」についてお話しいただきました。金属材料はあらゆる場所で使用され、私たちの生活を支えており社会貢献度が高いが、依然として良くわかっていないことも多く、新参者でもできることが沢山ある分野であるため、やりがいがある分野であることをお話しいただきました。
 次に、現企業で学んだこととして、新技術の開発には異分野融合が必須であり、多様な経験は無駄にならない事や、自分のスキルを活かせる場所は、意外なところにあるので、‘専門外だからNG’と言わず、未知の分野でも‘先ずは飛び込む’ことが大切だと、ご自身の経験談を交えながらお話しいただきました。
転職時に考えていたこととして、自分の‘根っこ’を問う(どのように働きたいのか?)、自分の可能性を狭めない(前向きに捉え、自身のスキルを活かせる場所は意外なところにある)ことをあげられ、これから就職活動をむかえる学生達にとっても大変参考になるお話をお聞きする事ができました。

 講演会の後半では、社会に出て役立った学生時代の経験として次のことをあげられました。
  ・教科書を徹底的に読み、基礎を掘り下げる
  ・物理的イメージを描くスキルの養成
  ・議論を徹底的にしてディベート力をきたえる(質問が大切)
  ・多くの失敗をし、多くの恥をかく(失敗をおそれない 質問をする事を恥ずかしいと思わない)
  ・国際学会発表、Nature Photonics誌への論文掲載

 また、在校生への提案として
  ・どんな経験もエンジニアとして成長する糧にする気概で働く
  ・常に‘危機感’を持って働く
  (研究職、エンジニア = 社会的貢献が大きい)
ことをあげられ、最後に、「皆さんは非常に恵まれた研究環境にいます。先端研で学べることに誇りを持って」と締めくくられました。

講演会終了後は、終始和やかな雰囲気の中、質疑応答や思い出の話などをお聞かせいただきました。

 

第4回「新事業の創生に向けチャレンジし続ける ‐川の流れは速く,谷は深い‐」

林 司 氏 (日新電機株式会社 研究開発本部 技師長)

第4回講演会

 平成29年11月4日,今年度第4回の「卒業生等を通した社会交流事業」講演会として,日新電機株式会社 研究開発本部 技師長の林司氏をお招きし,「新事業の創生に向けチャレンジし続ける ‐川の流れは速く,谷は深い‐」という題目でお話しいただきました。

 林氏は1988年広島大学大学院工学研究科材料工学専攻博士課程後期を単位取得退学後,1992年に博士(工学)を取得されました。1988年に日新電機株式会社に入社後は,EL材料,熱電材料の開発,半導体・液晶関連製造装置の開発やプロセス開発,薄膜・ナノ材料の構造評価等に携わり,プロセス研究センター長,物性評価センター長を経て,現在は研究開発本部技師長として活躍されています。

 本日は,林氏の土台を創った広島大学での研究等・新事業創生に向けた挑戦とその成否・山登りの話・イノベーションについてご講演いただきました。

 最初に,研究から開発に至るまでには「魔の川」が,開発から事業化に至るまでには「死の谷」が,事業化から産業化に至るまでには「ダーウィンの海」があることを説明され,これまで携わってきた様々な新事業創生がどのようにして産業化に至ったか,もしくは至らなかった(「魔の川」・「死の谷」等に落ちた)かをお話しいただきました。
 次に,広島大学で行った実習や研究について説明され,研究室配属の時に配管や装置の立ち上げを自分達で行った経験が,入社後も役立ったと話されました。
 山登りについての話では,どのようなルートをたどっても頂上を極めることが大事であると学んだこと,頂上からは360度周りを見渡すことができ,別の頂上が見えてきて次の頂上にも挑戦したくなること,頂上を極めた者同士で感動を共有できることを話されました。
 また,21世紀のイノベーションモデルについての説明があり,頂上を極めた者はイノベーションにチャレンジすべし,と述べられました。
 まとめとして,これからも挑戦し続ける,パラダイム破壊型イノベータでありたいと締めくくられました。

 講演終了後は質疑応答や,今年で創立100周年を迎えた日新電機株式会社の紹介がなされました。

第5回「半導体ソリューションと最新テクノロジーが促すビジネスワールド エンジニアへの新たな指針」

佐藤 仁 氏(ルネサスエレクトロニクス株式会社 組織活性化本部 人事総務統括部 グローバル人事部 部長)

平成29年12月18日、ルネサスエレクトロニクス株式会社 人事総務統括部 組織活性化本部 グローバル人事部長の佐藤仁氏をお招きし、「半導体ソリューションと最新テクノロジーが促すビジネスワールド エンジニアへの新たな指針」という題目でお話しいただきました。

 佐藤氏は、同志社大学商学部を卒業され、都市銀行へ入行、その後外資系企業に勤務され、現在はルネサスエレクトロニクス株式会社のグローバル人事部部長としてご活躍されています。

 講演では、ルネサスエレクトロニクスの会社概要、半導体ビジネスソリューションについてお話しいだきました。
 半導体の過去のビジネスモデルは、高品質・微細化による付加価値の追求でしたが、現在のビジネスモデルは、開発・製造の分業化とソリューションビジネスの提供による価値創造に変容しています。ソリューションとは、顧客の抱える問題を解決するための製品開発(ソフトウェアを含む)とサービスを統合したアプローチのことで、半導体メーカーの製造開発・設計営業の各部門がエンドユーザーのニーズを把握したうえでの想像力(課題設定能力)・問題解決能力が求められていると説明されました。
 つぎに、最近注目されているIoT(Internet of Things あらゆる「モノ」がインターネットにアクセスする可能性をもつ状態になること)とM2M(Machine-to-Machine 機械と機械が通信しあい自律的に制御すること)について詳しくお話しいただきました。

 最後に、ご自身の経験から学生のみなさんへのアドバイスとして以下のことを挙げられ講演会を締めくくられました。
・目的意識をもって勉強する(ムダなことはない)
・好きな事に対する情熱がすべて
・下手でもいい、好きな事を語り、議論をしよう
・ニュースを見よう(日経)新聞を読もう(たまにはビジネス誌も)
・海外へ行く(異文化に出てこそ発見がある)

第6回「半導体ソリューションを支える アナログ技術とアナログエンジニア」

平木 充 氏(ルネサスエレクトロニクス株式会社 オートモーティブソリューション事業本部 共通技術開発第一統括部 シニアスペシャリスト)

 平成29年12月22日、今年度第6回の「卒業生等を通した社会交流事業」講演会として、ルネサスエレクトロニクス株式会社 オートモーティブソリューション事業本部 共通技術開発第一統括部 平木充氏をお招きし、「半導体ソリューションを支える アナログ技術とアナログエンジニア」という題目でお話しいただきました。

平木氏は、1988年に東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了し、日立製作所入社、ルネサステクノロジ、ルネサスエレクトロニクス㈱でメモリ回路、アナログ回路、高速インターフェース回路の開発に従事され、現在は共通技術開発第一統括部のシニアスペシャリストとしてご活躍されています。

 講演会では、近未来のイメージビデオの視聴や実際に実現したソリューションとして車車間通信ソリューション(V2X)やHEV/EV駆動モーター用インバーターキッドソリューションなどの例をあげて、専門的なご説明をされました。
 次に、静電容量を利用した 触れずに操作するユーザーインターフェイス3Dジェスチャデモに触れさせていただき、技術者を目指す学生にとって貴重な体験ができました。

 最後に、みなさんへのメッセージとして、デジタルは現代社会を支えるメインの技術となっています。その一方で、デジタルで実現した如何なるシステムも、そのまわりを取り巻く現実のアナログ世界とのやり取りができてこそ初めてシステムとして機能します。アナログはこのやり取りを担う技術であり、将来にわたって必要不可欠なキー技術であり続けます。したがって、大学でアナログ技術を学ばれた学生の皆さんには、将来、企業に就職されても幅広い活躍の場があります。と話され、「ここは負けない分野を作れば明るい未来はやってくる」と、講演会を締めくくられました。

第7回「一技術者の半導体の仕事20年史 ~これまでとこれからやること~」

中原 健氏 (ローム株式会社 パワーデバイス生産本部研究開発部 統括課長)

平成30年1月15日、今年度第7回の「卒業生等を通した社会交流事業」講演会として、ローム株式会社 パワーデバイス生産本部研究開発部統括課長中原健氏をお招きし、「一技術者の半導体の仕事20年史~これまでとこれからやること~」という題目でご講演をしていただきました。

 参加した学生は、半導体業界の20年間の変遷、これからの展望について熱心に耳を傾けていました。

第8回「無線通信技術・サービスの最新動向」

山田 曉氏 (株式会社NTTドコモ 先進技術研究所 主幹研究員)

平成30年2月6日、今年度第8回の「卒業生等を通した社会交流事業」講演会として、株式会社NTTドコモ 先進技術研究所 主幹研究員の山田暁氏をお招きし、「無線通信技術・サービスの最新動向」という題目でご講演をしていただきました。

 参加した学生は、携帯電話や無線LAN(Wi-Fi)に関する、最新の技術動向およびサービスについて熱心に耳を傾けていました。

 


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