第8回 HiHA Seminar「インターロイキン-18(IL-18)の話」(5研究科共同セミナー:9月9日)

5研究科共同セミナーとして,第8回HiHA Seminarを開催します。
(主催: HiHA 広島大学健康長寿研究拠点)
ぜひご参加ください。

【演題】インターロイキン-18(IL-18)の話

【講演者】岡村 春樹 氏
     (兵庫医科大学 腫瘍免疫制御学 特任教授)

【日時】平成 28 年 9 月 9 日(金) 16:00-17:30

【場所】広島大学先端科学総合研究棟 3F 302S会議室

【概要】
 生物には恒常性(ホメオスタシス)を保とうとする特徴があり、個体や細胞の環境に変化が起きた時はそれをストレスとして感知するシステムを保有している。免疫/炎症は病原体などの侵入者を感知し排除してもとの状態を回復させる働きをするので、個体レベルでのホメオスタシスを保つ生体反応とみることもできる。細胞レベルでも活性酸素や細胞漏出物を感知するとインフラマゾームが活性化されて細胞を保護しようとする仕組みがあるらしい。IL-18は免疫担当細胞だけでなく、心筋、神経など、様々な細胞で発現されており、インフラマゾームが活性化されると、インフラマゾームを構成する蛋白の一つであるカスパーゼ-1によって、IL-18は生物学的に不活性な前駆体から活性型へと変換される。このことはIL-18が様々なストレス応答に関与していることを示唆している。
 IL-18は我々がIFN-γ誘導因子として発見した(Nature 378, 88, 1995)。その後、IFN-γの誘導はIL-18とIL-12との協働によって起こることが明らかになるとともに、インフラマゾームの発見によってその生物学的な役割についての見方が大きく変わってきた。免疫系においては活性化T細胞、γδT細胞、NK細胞などがIL-18受容体を発現し、活性型IL-18によってシグナルが伝達される。一方、心筋など非骨髄系細胞におけるIL-18のシグナル伝達の仕組みや受容体のあり方などには不明なところが多い。またIL-18欠損マウスは心臓、脳などに様々な異常がみられ、細胞変性を伴う疾患との関連も想像されるが、その生物学的な役割は十分にはわかっていない。
 我々の観察ではIL-18はBcl-XLなど細胞の生存促進分子の発現やオートファジーを高めることが示されている。このIL-18の特性は活性化リンパ球の数を増やす作用ともつながっており、実際、IL-18は活性化CD8T, γδT, NK細胞の生存を促進し、その数を著しく増大することができる。このため、最近注目を浴びているがんの免疫治療への応用も検討されている。IL-18の研究は始まったばかりのように思われる。本セミナーではIL-18の今後の研究課題などについても話してみたい。


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