場所:先端物質科学研究科 401N
- 非クラマース系の電気四極子が創発する多彩な物性
鬼丸 孝博(先端物質科学研究科) 13:20-14:00希土類金属間化合物では,4f電子と伝導電子の相互作用によって,磁性秩序以外にも多彩な物性が生じる。4f2配位の非クラマースPr3+イオンを含むPrT2X20 (T: 遷移金属, X: Zn, Al, Cd)は磁気モーメントをもたない基底二重項をとり,4f電子の異方的電荷分布に対応する電気四極子が活性となる。この系では,四極子秩序と超伝導の共存や非フェルミ液体状態などの新規現象が次々に見出されており,四極子が創発する物性研究は新たな局面を迎えている。
T. Onimaru and H. Kusunose, J. Phys. Soc. Jpn. 85, 082002 (2016). - Chiral磁性体におけるc-f混成とRKKY相互作用,そして重い電子状態
松村 武(先端物質科学研究科)14:10-14:50物質中の電子はその置かれた環境の対称性に応じて様々な混成効果を引き起こし,磁場で電荷秩序が誘起されるなどの非対角応答を示す。結晶構造に反転心も鏡映面もないchiral磁性体では,相互作用そのものにも非対角項があり,らせん磁気秩序などのchiralな構造をもたらす。対称性の高い結晶でも出現する非対角応答やらせん磁気構造,chiral磁性体におけるRKKY相互作用や重い電子状態の形成機構について概観する。
- デュアルフェルミオン法とそのハバードモデルの金属絶縁体転移への応用
田中 新(先端物質科学研究科)15:10-15:50強相関電子系の電子状態の理論として,動的平均場理論は有力な理論であり,近年盛んに用いられている。しかし,この理論では,一つのサイト内での時間相関を正しく扱うことができるが,空間相関については正確ではない。近年提案されたデュアルフェルミオン法では,動的平均場近似を摂動論的に拡張して長距離相関効果を取り入れる。本セミナーでは,デュアルフェルミオン法とそのハバードモデルの金属絶縁体転移への応用について議論する。
- BiS2系層状化合物における超伝導 -局所構造制御の重要性-
水口 佳一(首都大学東京 理工学研究科)16:00-17:00BiS2系超伝導体はBiS2電気伝導層と絶縁層からなる層状超伝導体であり,銅酸化物系や鉄系高温超伝導体と類似の積層構造を有する.母物質はバンド絶縁体であり,Bi-6p軌道への電子ドープで超伝導が発現する。一方,単純な電子ドープのみでは超伝導が発現せず,局所構造を制御することが超伝導発現に重要であることがわかってきた。最近解明されつつあるBiS2系超伝導体の本質的な超伝導相図についても紹介する。