【研究紹介】未来のリサイクルのカタチ「微生物燃料電池」の開発 -微生物の力で、廃水から電気を生み出す-

10月は、経済産業省、環境省、文部科学省など関係8省庁が、リデュース・リユース・リサイクルの推進を進める「リデュース・リユース・リサイクル推進月間(略称:3R推進月間)」です。

そこで、未来のリサイクルを支える、柿薗俊英准教授(先端物質科学研究科)の「微生物燃料電池」の研究をご紹介します。

柿薗先生は、微生物を利用して「廃水からの発電」と、「廃水の浄化」を同時に行うシステムの研究開発を行っています。この研究成果は、ユニ・チャーム(株)が開発中の使用済み紙おむつからパルプ繊維を取り出すリサイクル工程でも使われています。
http://www.unicharm.co.jp/company/news/2017/1206662_3926.html

40年も育てた木を原材料として、紙おむつのパルプ繊維は製造されています。この研究成果をもとに、将来、使用したパルプ繊維を安価に再生して繰り返しリサイクルすれば、自然を壊すことなく紙おむつを製造することも期待できます。

「微生物燃料電池」とは?

「電池」というと、懐中電灯などに使う「乾電池=battery」を思い浮かべます。それは、すでに電池の中に蓄えられている電気を使うものです。

しかし、今回ご紹介するのは「微生物燃料電池=fuel cell」。微生物の生命活動をうまく利用して、電気をためつつ使う仕組みを指しています。

廃水から電気を手に入れる、というアイデアの実現

リサイクルを行う工程では、一度使ったものを洗うため、どうしても廃水が出てきます。廃水の中には、発電する微生物が意外にも多いのです。それは、特殊なものではなく、田んぼや下水処理場に集められた生活排水などにもいる、ごく普通の菌です。

人間は食事からエネルギーを体に取り込み、呼吸とともに電子を体外に捨てています。廃水の中にいる微生物も同様に、水中の栄養分(汚れ)を体に取り込み、電子を体外に電子を捨てます。しかし、人間と異なり、呼吸だけでなく、炭素繊維などに渡すことができるものがいるのです。

下水処理施設などでは、水中に酸素を送り込むことでその活動を促進して水の浄化を行っています。微生物燃料電池では、廃水の中に直径10ミクロン(0.01mm)の炭素繊維の束を浸けて、そこに電子をうまく付着させるようにします。それが「電子(電気)をためる」ことになり、同時に廃水も浄化されるという仕組みです。

電子の付着した炭素繊維に電極をつなぐと、直流の電気が流れ出します。現時点では、およそ2リットルの微生物燃料電池で単3乾電池1本分くらいの電気を取り出せます。

柿薗先生は、この仕組みを使ってより多くの電気を取り出す研究開発を行っています。

柿園先生の研究の特長は2つ。

1つは、炭素繊維の形です。炭素繊維は平たいシート型のものがよく使われています。それを、編み込み繊維に変えることで、電子を付着させる表面積を約1000倍に拡大でき、集められる電気の量が飛躍的に多くなりました。

炭素繊維(左2つが従来のシート型、右が編み込み繊維)

もう一つは、微生物燃料電池の形(つまり、廃水を入れておくタンクの形)を横型から縦型にしたことです。
研究室で実験している段階では、研究室の中に置ける小さなものでも充分です。しかし、縦型にすることで、下水処理場などの大きな水槽でも使える可能性が広がり、実用に向けてステップアップしました。

研究室に設置してある微生物燃料電池

実用化への道のり

柿薗先生は「大型化できる道筋がついたことは、下水処理施設などでの実用化への一歩です」と話しています。

人間と水は切っても切れない関係です。これからも、廃水がなくなることはないでしょう。
今の下水処理場は、電気を使って廃水を浄化していますが、いつの日か、発電所を兼ねる下水処理場が生まれるかもしれません。

柿薗先生(中央)と学生

【お問い合わせ先】
広島大学広報グループ

E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)


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