【研究成果】遺伝情報の正確な伝達を保証する分子メカニズムを解明

本研究成果のポイント

  • 全反射照明蛍光顕微鏡を用いた解析により、6型キネシンと呼ばれる染色体分配に重要なタンパク質の一分子での挙動を明らかにしました。
  • 6型キネシンが5型キネシンと協調して細胞内で機能し、遺伝情報伝達の正確さを保証していることが判明しました。
  • 6型キネシンには、2つの独立した機能があることを世界で初めて示しました。

概要

 広島大学大学院統合生命科学研究科・広島大学健康長寿研究拠点の登田 隆特任教授、湯川格史助教のグループは、未来ICT研究所の古田健也博士との共同研究により、遺伝情報(染色体)を正確に伝達するのに必要な分裂酵母モータータンパク質6型キネシンの挙動を一分子レベルで測定することに成功しました。
 登田教授らはさらに、細胞内では6型キネシンに二つの重要な役割があり、一つは5型キネシンと協調するモーター活性依存的な働きと、もう一つはモーター活性非依存的なもので、染色体を引っ張る機能をもつ微小管構造を安定化させる働きがあることを発見しました。これまで、染色体分配には複数のキネシンモーター分子が必要であることが知られていましたが、実際にそれらがどのように役割を果たしているかについては不明でした。今回の成果によって、5型と6型2つのキネシン分子の協調関係が明らかになりました。
 本研究で作用機序が明らかになったキネシン分子は、酵母からヒトまで高度に保存されています。したがって、高等生物においてもこれらのキネシン分子による同様の機構が存在すると考えられます。
 本研究成果は、「Scientific Reports」オンライン版に令和元年5月14日に掲載されました。

分裂酵母モータータンパク質6型キネシン

(図)全反射照明蛍光顕微鏡による分裂酵母モータータンパク質6型キネシンの一分子レベルでの挙動解析。測定方法の概略(a)と実際の挙動(b)

論文情報

  • 掲載雑誌: Scientific Reports
  • 論文題目: Kinesin-6 Klp9 plays motor-dependent and -independent roles in collaboration with Kinesin-5 Cut7 and the microtubule crosslinker Ase1 in fission yeast
  • 著者: Masashi Yukawa1,2* and Masaki Okazaki2, Yasuhiro Teratani2, Ken’ya Furuta3 and Takashi Toda1,2*
    1. 広島大学健康長寿研究拠点(HiHA)
    2. 広島大学大学院 先端物質科学研究科 分子生命機能科学専攻(論文投稿時の所属)
    3. 情報通信研究機構 未来ICT研究所
    * Co-corresponding author(共同責任著者)
  • DOI: 10.1038/s41598-019-43774-7
【お問い合わせ先】

広島大学大学院統合生命科学研究科
特任教授:登田 隆
助教:湯川 格史

TEL:082-424-7868/7754
E-mail:takashi-toda*hiroshima-u.ac.jp, myukawa*hiroshima-u.ac.jp
             (注:*は半角@に置き換えてください)

 


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