【研究成果】セイタカアワダチソウから新たな抗癌活性物質を発見

本研究成果のポイント

  • 分裂酵母を用いて、セイタカアワダチソウ抽出液からモータータンパク質の一つであるヒト14型キネシンの働きを阻害する新規低分子化合物(低分子コラベン酸誘導体)を同定することに成功しました。
  • 取得した低分子コラベン酸誘導体が、実際に乳癌細胞に対して増殖抑制効果を持つことを明らかにしました。
  • 本研究で行った分裂酵母を利用した阻害剤探索アプローチは、ヒト疾病治療薬シーズを体系的に発掘するためのブレークスルーとなる発展性を秘めています。

概要

 広島大学大学院統合生命科学研究科・広島大学健康長寿研究拠点の登田 隆特任教授、湯川格史助教のグループは岩手大学農学部の木村賢一博士、理化学研究所環境資源科学研究センターの越野広雪博士との共同研究により、キク科植物セイタカアワダチソウ抽出液からモータータンパク質の一つであるヒト14型キネシン(HSET/KifC1)の働きを阻害する新規低分子化合物(低分子コラベン酸誘導体)を同定することに成功し、その化合物が抗癌活性を有することを発見しました(図1)。14型キネシンは、中心体制御に異常をきたした癌細胞において過剰産生された中心体を擬似的に二極にクラスター化させる役割があり、本来致死となるはずの多極紡錘体形成を抑えることにより、乳癌をはじめとする多くの癌細胞の増殖を促進することが明らかにされています。従って、本研究で得られた低分子化合物を基に、より特異的で副作用の少ない抗癌剤開発につながることが期待されます。また、本研究で行った分裂酵母を利用した阻害剤探索アプローチは、癌のみならず他のヒト疾患に関わるキネシン以外の原因タンパク質を標的とした阻害剤スクリーニングにも即応用可能であることから、本研究は種々の疾病治療薬シーズを体系的に発掘するためのブレークスルーとなる発展性を秘めています。
 本研究成果は、「Bioorganic & Medicinal Chemistry」オンライン版に令和元年11月8日に掲載されました。

 

(図1)ヒト14型キネシン阻害物質としてセイタカアワダチソウから新たに発見した低分子コラベン酸誘導体と分裂酵母および乳癌細胞における阻害効果

(図1)ヒト14型キネシン阻害物質としてセイタカアワダチソウから新たに発見した低分子コラベン酸誘導体と分裂酵母および乳癌細胞における阻害効果

論文情報

  • 掲載雑誌: Bioorganic & Medicinal Chemistry
  • 論文題目: Kolavenic acid analog restores growth in HSET-overproducing fission yeast cells and multipolar mitosis in MDA-MB-231 human cells
  • 著者: Naoaki Kurisawa1, Masashi Yukawa2,3, Hiroyuki Koshino4, Takumu Onodera5, Takashi Toda2,3 and Ken-ichi Kimura1,5*
  1. 岩手大学 総合科学研究科
  2. 広島大学健康長寿研究拠点(HiHA)
  3. 広島大学大学院 統合生命科学研究科
  4. 理化学研究所 環境資源科学研究センター
  5. 岩手大学 農学部 応用生物化学科
    * Corresponding author(責任著者)
  • DOI: 10.1016/j.bmc.2019.115154

 

【お問い合わせ先】

広島大学大学院統合生命科学研究科
特任教授 登田 隆, 助教 湯川 格史
TEL:082-424-7868, 7754
E-mail:takashi-toda*hiroshima-u.ac.jp, myukawa*hiroshima-u.ac.jp
(注:*は半角@に置き換えてください)

 


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