文化財学

(教育研究分野:地表圏システム学)

実物の文化財を対象とした実践的な研究により、人間の生活・文化の特質を追究します。

本研究科の文化財学分野は、古建築学・美術史学・工芸史学という3つの学問領域を、専門的かつ学際的に研究できる、日本でも例のない分野です。

史跡や古建築、絵画や彫刻・書跡などの美術品、漆工・金工・陶磁・染織といった工芸品等、幅広い歴史的文化遺産について、実物(モノ)に即した調査を実践し、文字資料だけでは見えにくい史実の読解力を養成します。また、教員がモノを扱う現場で蓄積した豊富な知識を裏付けとして、各領域の保存学について最先端の指導を行う点も特徴の一つです。

博士課程前期では教員や先輩の調査研究にスタッフとして加わることで、修了時に博物館・美術館等の学芸員、教育委員会の文化財担当者、研究機関等の研究員として、すぐに役立つ実力を身につけることができます。

さらに博士課程後期では、自らが調査の先頭に立った研究を積み重ねることで、大学教員として、次代を担う高度専門職業人を育てる人材ともなり得ます。

明王院 国宝 本堂・五重塔

▲ 明王院 国宝 本堂・五重塔

福山市・明王院の本堂と五重塔は、いずれも国宝に指定されています。文化財学分野では、これらを建造物として研究するだけでなく、内部の絵画や彫刻の表現・技法、思想的意味などを解明し、さらに境内の前方に広がる草戸千軒からの出土品の調査をも加味して、文書には遺っていない歴史を総合的に浮き彫りにします。

明王院五重塔内部

▲明王院五重塔内部

大学院での現地調査の一コマです。

持光寺 国宝 普賢延命菩薩像

▲持光寺 国宝 普賢延命菩薩像

尾道市・持光寺の国宝普賢延命菩薩像は、仁平3年(1153)の開眼供養銘をもつ平安時代でも数少ない仏画の優品です。文化財学分野では、自然科学的方法を駆使して、肉眼では把握できない情報の収集にも積極的に取り組んでいます。例えば上の写真では、菩薩の髪は岩群青(塩基性炭酸銅)、唇や輪郭線は朱(硫化水銀)を用いて描かれていることが、X線の透過度によって判明します。


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