メールマガジン No.5(2005年7月号)

 リテラ友の会 メールマガジン No.5(2005年7月号)
2005/07/08 広島大学大学院文学研究科・文学部
 
□□目次□□
1.久しぶりの文学部(元NHKキャスター 武藤千英さん)
2.今月のコラム(表象文化学 四反田 想 助教授)
3.みなさまの声(「21世紀の人文学」2005年第2・3回の感想)
4.広報・社会連携委員会より
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【1.久しぶりの文学部  武藤 千英】
 
 歩くと床が軋み、風が吹くと窓ガラスがビリビリ震える木造の学び舎。秋には、台風で倒壊するのではないかと心配し、冬には隙間風が入るため、コートを着たまま授業を受けたこともあったーーーと書くといつの時代の話かと思われるかもしれませんが、これは、私が平成2年からの4年間を過ごした文学部旧校舎でのことです。広島市の東千田町にあった愛すべき建物は、キャンパスの移転とともに姿を消してしまいました。卒業した年の夏に立ち寄ったときには、すでに取り壊され、跡地に草が伸びているのを見て、巣を壊された鳥のようなさびしさを味わいました。
 
 あれから、12年。東広島市に移った「母校」を、先月、訪ねました。広大な敷地に建つ瀟洒な建物に、私は馴染みがありません。よそ者には眩しく見え、中に入るのに気後れしました。ところが、仏文研究室に一歩入ると、ふわりと学生時代に舞い戻りました。書架に並ぶ本の背表紙も、独特のにおいも、先生たちの笑顔も、あの頃のままです。「そういえば、道2時間の通学時間に授業の予習をしたなあ。フランス文学の原書と仏和辞典を膝に乗せて電車に揺られていたら、うっかり、乗り過ごしてしまったこともあったっけ。」作中人物に魅せられて、その心を読み解くことに夢中だった頃のことがよみがえってきました。
 
 卒業後、私は、キャスターになりました。ニュースをわかりやすく伝えるためには、事件・事故の当事者の行動や、現象の裏側にある人間の心理に思いを馳せることが欠かせません。また、インタビューでは、相手に寄り添ったり、注意深く観察したりしながら、言葉を一つ一つ引き出していきます。10年間の仕事は、人の心に迫ることの連続でした。
 
 このたび文学部を訪れたのは、その経験を皆さんの前でお話しするためでした。はっと気づかされました。仕事の原点、いえ、私の原点は、ここ、文学部にあったのだと。人の心を探求する学問は、思いがけないところで実を結び、人生を豊かにしてくれます。広島大学文学部で学んだことが、これからどんな「贈り物」を届けてくれるのだろう。学び舎に立ち帰って、気持ちを新たにしました。
 
☆武藤(旧姓小畑)千英さん…元NHKキャスター。
広島大学文学部(フランス文学)1994年3月卒業。
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【2.今月のコラム】
 
 「今春のヨーロッパ中世国際研究集会について」
     広島大学大学院文学研究科表象文化学講座:助教授 四反田 想
 
 本年3月26日-27日に広島大学学士会館第1会議室において、広島大学ヨーロッパ中世研究会主催の国際研究集会“Exclusion and Tolerance in Medieval Europe”が開催されました。
 
  国際研究集会のテーマは文字通り「中世ヨーロッパにおける排除と寛容」であり、 哲学、歴史学、 語学、文学の諸分野からすべて英語による2つの講演と10の研究発表及び討論が、学際的視点から活発に行われました。
当研究集会は、主として文学研究科メンバーから構成される「広島大学ヨーロッパ中世研究会」が主体となって獲得した平成16年度科学研究費補助金「中世ヨーロッパ文化の多元性に関する総合的研究」(基盤研究(B)(2))に基づいて実現しました。
  海外からオクスフォード大学テリー・ホードTerry Hoad先生(英語学)とザルツブルク大学ジークリット・シュミットSiegrid Schmidt先生(ドイツ中世文学)を招聘し、各人に基調講演と研究発表を御願い致しました。

第1日目に研究発表Paper Session 1 (司会:地村彰之, 発表:水田英実, 山代宏道, 教育学研究科中尾佳行)、研究発表2 (司会:中尾, 発表:四反田想、 ベルンハルト・エーリンガーBernhard O"hlinger, シュミット), 招待講演Lecture A (ホード)とレセプション、第2日目は研究発表3 (司会:四反田、発表:原野、日本大学有泉泰男, 地村, ホード)と招待講演B (シュミット)という日程でした。目下、英文会議録Proceedingsを刊行準備中です。イギリス、オーストリアで活躍中の気鋭の研究者を迎えて,率直な意見交換が行われ、実り多い研究集会でした。
全て英語での発表と討論という状況で試行錯誤もありましたが、ホード、シュミット両先生に議論を積極的にリードして頂き、また地村、中尾両先生の英語力に助けられつつ、国際共通言語としての英語の重要性を再認識する良い機会となりました。また、「排除」と「寛容」というアクチュアルな普遍的テーマについて非欧米圏の研究者から問題提起する意義も、ヨーロッパの研究者に十分理解して頂けたのではないでしょうか。

今回は国際研究集会として個別発表の集合体という性格が見られましたが、次回はシンポジウム形式で開催し、討論によるテーマの更なる深化を目指したいと考えています。 

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【3.みなさまの声】
 
 5月14日(土)および6月18日(土)に広島大学東千田キャンパスにて[おこなわれました「21世紀の人文学」講座2005『文藝の新たな地平』第2回「現代文学への新たなアプローチ」、第3回「現代の舞台芸術と映像文化」[には、第1回に引き続き、多数のみなさまにお越しいただき、どうもありがとうございました。
  会場にていただきましたアンケートから、みなさまの声を抜粋して紹介させていただきます。
 
〔第2回・新田玲子助教授「戦争を知らない世代のための新しい戦争文学」に対して〕
  *「次世代への投げかけ方の切り口がたいへん面白かった」(60歳代・男性)     
  *「新田先生の紹介された本を全部読みたい。」(70歳代・女性)
 
〔第2回・伊藤詔子教授「〈自然を前景化しテーマ化する〉新たな文学の創造と読み」に対して〕
  *「グローバリズムとかネイチャリングとか…何気なく耳にしていた言葉の奥深さへの案内…新鮮な驚きとともに、楽しく拝聴しました。」(60歳代・女性)     
  *「先生のスピーディーで内容の濃いお話に時間を忘れて聞き入りました。」(30歳代・女性)
 
〔第3回・河原俊雄教授「モーツァルトの『魔笛』をどう演出するか?」に対して〕
  *「広島ではなかなか知り得ないオペラ演出の動向を知ることができて大変興味深かったです。映像もたくさん拝見できてよかったです。」(30歳代・女性)     
  *「情熱あふれるお話と魅力的なビデオのご紹介に、時間の経つのが惜しまれるほどひき込まれました。素晴らしいご案内ありがとうございまた。」(60歳代・女性)
 
〔第3回・中村裕英教授「シェイクスピア映画について」に対して〕
  *「“ハムレット”の例のように、同じ題材をとっても表現方法の違いなど興味深く拝聴しました。映画の見方の今後の姿勢にも影響されると思います。」(60歳代・女性)     
  *「私がシェイクスピア全集を讀んでいたのは戦時中であった。現在は全く忘れていたが、又讀み直そうと思う。」(80歳代・男性)
 
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【4.広報・社会連携委員会より 岡 元司】
 
 5月17日の「リテラ・アワー」における「キャスターの仕事と私」と題する武藤千英さんのお話は、幸い私も拝聴させていただくことができました。キャスターとしてのまごころのこもったお仕事ぶりや、なぜ今再びフランス語に取り組んでいらっしゃるかなどのお話を、たいへん興味深くうかがいました。[各界における文学部卒業生のみなさまのこうしたご活躍は、われわれ教職員にとりましても、たいへん励みになります。今後ますますのご活躍をお祈りしております。
 なお、8月にリテラ友の会会員のみなさまにご参加いただける「ランチ&ミーティング」という企画を立案中です。この件は、近いうちにあらためてご連絡させていただきます。また、リテラ友の会・メールマガジンも、おかげさまで今号で5号に達しました。ご感想や今後に向けてのご提案などもお寄せいただけましたら幸いです。

 

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リテラ友の会・メールマガジン
オーナー:広島大学大学院文学研究科長 岸田裕之
編集長:広報・社会連携委員長 岡橋秀典
発行:広報・社会連携委員会
 
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