メールマガジン No.50(2012年7月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.50(2012年7月号)
2012/7/23 広島大学大学院文学研究科・文学部
         
□□目次□□
1. 新任教員挨拶
2.「浜野佐知監督 講演会」レポート
3. 文学研究科(文学部)ニュース
4. 広報・社会連携委員会より        
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【1.新任教員挨拶】 
  
 文学研究科では、4月に7人の教員が着任いたしました。前回に続き2人の新任教員のコラムを掲載いたします。
  
○着任のご挨拶 歴史文化学講座教授 金子肇
  
 4月1日付で歴史文化学講座に着任しました。もともと本文学部・文学研究科の出身で、若い頃3年ほど東洋史研究室の助手を勤めた経験があります。その後、下関市立大学経済学部に移って22年間を過ごし、今回縁あって再び舞い戻ってまいりました。母校で教育・研究に携わることができるのは何よりの喜びです。
  
 私の専門は中国近現代史ですが、より具体的には20世紀前半の約50年間(清朝末期・中華民国期・人民共和国初期)を対象にした3つの研究テーマを抱えています。1つめは、中央・地方関係の歴史的展開を行財政史の視点から解明しようとする研究、2つめは憲政の導入・展開から中国の近代国家形成の特質を探ろうとする研究、そして3つめは商工業税政との関係を通して同業団体と同業秩序の変容過程を明らかにしようとする研究です。一見すると、3つの研究テーマは何の脈絡もなく選択されたかのように思えます。しかし、何れも20世紀中国に継受された専制王朝以来の政治的・社会的諸要素と新たに導入された西欧的諸制度との軋みに焦点をあて、その軋みのなかに中国「近代」の歴史的個性を見出していこうとする点で、大きな問題意識は共通しています。
  
 歴史学の本領は個別歴史事象の実証的再構成という点にありますが、事象の細部に沈潜するばかりでなく、それをより大きな時間軸・空間軸のなかに位置づけていくことも必要です。学生たちには、「木を見ながら森も眺める」ことができるように、歴史研究の醍醐味を伝えていきたいと願っています。
  
☆金子肇教授のプロフィールは、こちらをご覧ください。
    
○着任のご挨拶 総合人間学講座准教授 溝渕園子
 
 2012年4月1日付で、本学文学研究科総合人間学講座に着任いたしました。3月まで熊本大学文学部で勤務しておりましたが、このたびご縁をいただいた広島の地で、気持ち新たに研究・教育に励む所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
   
 私の専門は比較文学ですが、主に近現代の日本とロシアのかかわりについて、文学のフィールドから研究してきました。異なる文化が様々に接触しつつ多様な文化が形成されていくなかで、日本やロシアの文学にはどのような異文化表象が見られるのか、そしてそれはどのように編成されたのか、というテーマに取り組んでいます。近年は、異文化表象の問題から言語文化の越境性へと関心がひろがり、翻訳文学を視野に入れた研究も進めているところです。
  
 文学作品という過去から届けられたメッセージを読み解く。過去が語りかけてくるものを、現在の自分の問題として受けとめ、未来に向けて思索する。それは、心躍る瞬間であり、胸が締め付けられるような思いをする場でもあると思います。文学研究の成果そのものだけでなく、研究の過程で自己の感性や思考が呼び起こされる体験もまた学生たちと共有できるよう、教育に取り組みたいと考えています。
  
 微力の身ではございますが、一つずつ経験を重ねながら、歴史ある広島大学の発展に一教員として少しでも貢献できればと思っております。ご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
  
☆溝渕園子准教授のプロフィールは、こちらをご覧ください。
  
  
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【2.「浜野佐知監督 講演会」レポート 日本文学語学講座教授 有元伸子】

 浜野佐知監督は、鳥取出身の女性作家・尾崎翠の世界や老女の性を描いた映画など、女性の視点からの作品作りで評価の高い映画監督です。新作「百合子、ダスヴィダーニヤ」上映のために広島に来られると伺い、講演をお願いしたところ、快諾くださいました。
  
 当日は、4本の短縮版上映を交えながら、作品の背景や自らと映画との関わりなどを、パワフルかつ繊細に語ってくださいました。会場のノリもよく、ふだんの教室では聞けない用語も頻発して、浜野節全開。聞き手は勇気づけられ、元気をいただきました。質疑には脚本の山﨑邦紀さんも加わり、監督のお話を相補してくださいました。
  
 講演後のある学生の感想は、「4年間でいちばん勉強になり、一番笑えました」。一教員としてはもっと授業をがんばらねばと思いますが、企画者としては嬉しい限りです。翌日からの広島市内での映画上映にも、講演会に参加した学生が来て、熱心に鑑賞し、監督に感想を話しかけていました。後日、浜野監督から、「広大での講演は本当に楽しかった」とメールをいただきました。またこうした機会がもてることを願っています。  
 この特別講義に参加した学生の感想を紹介します。
  
○博士課程前期(日本文学語学) 安原杏佳音  
 6月22日、映画監督・浜野佐知さんの講演会が開かれました。監督は71年からピンク映画監督として活動され、98年からは一般映画監督としても精力的に制作を続けておられます。
  
 講演はとにかくパワフル! 映画制作の経緯や女性監督としての苦難、一般映画第一作目に選んだ女性作家・尾崎翠への想い、そして自身の映画の魅力などなど、淀みなく歯切れよく、どきりとするほど歯に衣着せず、語って下さいました。その語り口に学生はもちろん先生方や一般の方もみるみる引き込まれ、「もっと聞きたい!」という思いを残しつつあっという間に講演会は終了しました。
  
 その中でも印象に残ったのは、理不尽なことには臆せず「喧嘩売ったれ!」という監督の信条。男性しか映画を撮れなかった時代、頼み込んで若松プロに入った監督は男性の幻想でしかない女性像に違和感を覚え、自らメガホンを取ります。テーマは「女の手に女の性を」。「全く評価されなかった」そうですが、それは監督のテーマがどれだけ革新的であったかの裏返しではないでしょうか。具体的にどんな映画を撮られたかは質疑応答のとき質問できず悶々としましたが、そのあとの懇親会でぐっと近い距離で教えて頂けました!(ここには書けませんが!)
  
 そんな監督の精神は、そのまま映画の核となっています。最新作「百合子、ダスヴィダーニヤ」ではロシア文学者湯浅芳子と、芳子が愛した作家宮本百合子の深い絆と友愛が描かれています。世間から「変態」とされた同性愛というセクシャリティを偽らない芳子の生き様が「衝撃」だった、と監督は語っておられましたが、社会の理不尽さへの怒りをエネルギーに変え、革新を起こしてきた監督ご自身と芳子には非常に通じるものを感じました。
  
 そして監督はご自身の強い思いと同時に、これまでの苦難や挫折についても、飾らず語って下さいました。泣くことも笑うことも人より多くそのどれもが濃い、監督の人生が伝わる講演でした。パワフルで辛口な監督ですが、サングラスの向こうの目はとても優しかったのが印象に残っています。
  
 何かに従属するのではなく、自分の心と頭で生きること。自身の生き様と作品を通して女性としての生き方を語りかけて下さった浜野監督、本当に、ありがとうございました。
    
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【3. 文学研究科(文学部)ニュース】
  
〇第24回 内海文化研究施設季例会・公開講演会
【日時】平成24年7月30日(月) 13時30分~ (約90分)
【場所】広島大学文学研究科 B104講義室〔広島大学東広島キャンパス〕
【講師】NPO法人おおのの風 代表理事  坂 史朗 氏
【演題】NPO活動による“新・みやじま紀行”に寄せて
   ―宮島の新しい観光や魅力の深耕にむけて―  
  詳しくは、こちらをご覧ください。
      
〇広島英語研究会 第53回夏季研究大会
【日時】平成24年8月4日(土)、8月5日(日)
【場所】広仁会館大会議室(広島大学霞キャンバス)  
  詳しくは、こちらをご覧ください。
    
〇受賞のお知らせ
フェーダーマイヤー教授がオーストリア共和国から表彰されました詳しくは、こちらをご覧ください。
  
〇サテライト展示1階ロビー【コレクション企画展示】のご案内
 6月から文学研究科サテライト展示を地理学研究室のご協力で『地震と活断層 』に模様替えしました。注目を集めている南海トラフの海底地形や活断層の画像がケースいっぱいに展示してあります。3D赤緑メガネで見る南海トラフの海底地形は、驚きです!お近くにお越しの際は、是非ご覧下さい。
    
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【4.広報・社会連携委員会より 八尾 隆生】
  
 今年度より広報・社会連携委員会委員になりました八尾です。本号は名目上私が編集の担当となっております。
 本号では前号に続き二人の新任の先生から文章をいただきました。また各種講演会、催し物に関する記事を掲載しております。是非完読をお願い致します。
 今年度は鬱々とした梅雨の季節が延々と続く感じがいたします。天候は異常、政治も異常、給与も異常、会議や調査は山盛り(内容は異常ではありません、回数が異常。念のため)・・・
 このような愚痴を言っているのは私に限ったことではないでしょうが、せめて「読んでちょっと楽になった」と感じていただける、内容はしっかりしつつも「ゆるゆる?」ないし「ゆとり?」感をもてるメルマガにしていきたいと非力ながら考えております。どうぞ二年間よろしくお願い致します。
 
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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  勝部眞人
編集長:広報・社会連携委員長  友澤和夫
発行:広報・社会連携委員会

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