メールマガジン No.110(2022年7月号)
リテラ友の会 メールマガジン No.110(2022年7月号) 2022/7
□□目次□□
1.劉創馥(Lau, Chong-Fuk)教授の講演会報告
2.広島大学国語国文学会2022年度研究集会オンライン開催報告
3.文学部ニュース
4.広報委員会より
1.劉創馥(Lau, Chong-Fuk)教授の講演会報告
【哲学・思想文化学コース(哲学分野) 准教授 硲 智樹】
6月27日に、現在、京都大学の客員研究員として日本に滞在されている香港中文大学(The Chinese University of Hong Kong)のLau, Chong-Fuk教授をお招きし、ミライ・クリエにて、西洋哲学分野の演習の授業(西洋近現代哲学演習B:担当は硲)で、ヘーゲル哲学に関する講演をしていただきました。Lau教授は、ドイツのハイデルベルク大学で博士の学位を取得され、現在は香港中文大学哲学部の主任教授を務めておられます。ヘーゲル哲学を専門とされていて、今回は、「ヘーゲル形而上学の非形而上学的解釈(Eine nichtmetaphysische Deutung der Hegelschen Metaphysik)」というタイトルのもと、ドイツ語で講演をしていただきました。ハイレベルな講演内容でしたが、参加した学生たちはドイツ語の原稿と日本語訳の原稿を並べ熱心に聴き入り、積極的に質問をしていました。また、講演の後は、併設のカフェでお茶を飲みながら、Lau教授を囲み、皆でざっくばらんに会話を楽しみました。参加した学生たちにとっては知的な刺激を受ける貴重な良い機会となったのではないかと思います。なお、講演の邦訳原稿ですが、京都大学の大学院生である久冨俊介さんが訳したものをご提供いただきました。ここに改めてお礼申し上げます。
【哲学・思想文化学コース(倫理学分野) 3年生】
この度、チョン=フック・ラウ先生の講演会に参加させていただきました。 自分の考え等を一旦忘れて、先生の議論に集中して耳を傾けることができ、嬉しかったです。
唯一、哲学(たとえ主張自体は共感できないものでも哲学というだけで)にふれる時だけ、ある意味での特異的で異様なほどの自由さや、「落ち着かない世の中から距離を置き(どこかへの逃避的な意味での‘’距離を置く‘’ではなく)、じっと考える」あり方に由来する、ある種の「ゆるし」に似た安心感が芽生えることや、精確で繊細な言語の扱いに基づく潔癖で透明な美しさを感じることがあるのですが、講演会では、終始そのような感覚に浸っていました。
そして、今回の講演のメインテーマとなった「超越論的哲学」についてももちろん興味深かったですが、哲学上の主張そのものよりも、哲学的議論のあり方を知ることができたことが講演に参加した上での1番の収穫だったと思います。そのあり方とは、たとえば、言説への批判にしてもまず、論脈の吟味や意味の味わいを経て為されているところや、議論における論理のきめ細かさなどが言えると思います(透明性を感じ、美しかったです)。
今後、積極的に取り入れ、活かしていきたいことばかりの講演会でした。この度は勉強の機会をくださり、ありがとうございました。
Lau教授の講演会の様子
2.広島大学国語国文学会2022年度研究集会オンライン開催報告
【日本・中国文学語学コース(日本文学語学分野) 教授 有元 伸子】
7月9日(土)に、広島大学国語国文学会2022年度研究集会がオンラインで開催され、学内外の60余名が発表・講演・質疑に参加しました。
広島大学国語国文学会は90年近い歴史をもつ学会で、広島大学文学部日本文学語学教室が事務局を務めています。
(広島大学国語国文学会のホームページはこちらから)
発行する学会誌『国文学攷』には、作家・三島由紀夫による評論「古今集と新古今集」が掲載されたこともあります(1967年3月号)。三島の学習院時代の恩師でペンネームの名付け親でもある故・清水文雄氏が広島大学を定年退官する際の記念号に、三島が特別寄稿したのです。
さて、国語国文学会の研究集会は毎年7月上旬の土曜日に開催されていますが、ここ数年は、西日本豪雨(2018年)・コロナの感染拡大(2020年)により、残念ながら開催中止が相次ぎました。昨年2021年度は初めてオンライン開催を試み、本年度も検討のうえ、Zoomによるオンライン開催としました。
当日は朝10時に開始。昼の総会を挟んで、一般の研究発表5件、特別研究発表1件、公開講演1件のプログラムで、17時30分に終了しました。一般発表は、日本語学・古典文学・近現代文学と、多岐に渡る内容で、活発な議論がありました。
特別研究発表は、教育学部に昨年度赴任された白田理人先生による「北琉球奄美喜界島方言における人称代名詞を含む指示表現」。聞き手に近い対象を指すときに、その人の所有物でなくても「あなたのこれ」のような表現をする、といった鬼界島の言語の特質は興味深いものでした。加えて、「消滅危機言語の保存」プロジェクトの一環であることも衝撃的でした。いま保存せねば消滅するかもしれない言語の研究は、喫緊の重要な仕事です。
研究集会の掉尾を飾ったのは、本年度で定年退職される文学部の妹尾好信先生による特別講演「疑問だらけの『伊勢物語』「筒井筒」―定番教材をどう読み解くか―」です。
妹尾先生は、平安期の和歌・歌物語、中世の擬古物語などに関する実証・読解の研究を数多く世に問われてきた傍ら、国語教科書の編集にも長く携わってこられました。 講演は、文学研究と国語教育の両面で優れた仕事をしてきた妹尾先生が、その接点について、高等学校古典教科書の定番中の定番教材である『伊勢物語』の「筒井筒」を例に検討されたものでした。
検定のある教科書の注解を変更するための実務的なご苦労話も含めて、研究の引き出しの豊かさ・読解の深さと自在さをたっぷりと楽しく聞かせていただきました。刺激的な講演に、現場の高校・高専の教員や平安文学の研究者からの熱心な質問が相次ぎました。
広島大学国語国文学会2022年度研究集会ポスター
妹尾先生の講演の様子
こうして研究集会は成功裏に閉会となりました。
開催形態の決定には色々と迷いもありましたが、このところの感染拡大傾向と、当日午前に大雨の影響によるJRの運休があったため、結果的にはオンライン開催にして大正解でした。オンラインで開催できるメリットは極めて大きいでしょう。
一方で会員相互の交流や親睦の促進、ことに大学院生がOB・OGなどの研究者と直接交流できる機会の確保や、運営のノウハウの継承という点からも、いつかは対面に戻すことも検討せねばなりません。
今年度も妹尾先生の講演を聴講するために多くの卒業生修了生が参加され、懐かしいお名前もモニター上で散見されました。直接会場でお会いできれば、どれほど懇親がはかれたことでしょう。(もちろん一方で、オンラインだからこそ参加できた方もおられるでしょう)。
来年度以降の研究集会をどのように開催するか、会員からの意見を聴取するとともに、学内外の他学会の例も参考にしつつ、模索したいと思います。
3.文学部ニュース
4.広報委員会より
【広報委員会委員 八尾 隆生】
報道では今年の広島の梅雨ははわずか2週間あまりで明けたとか。その割に大雨が降ったかと思うと夏本番の暑さになったり、衰えたからだに堪えますが、皆さま如何お過ごしでしょうか。エアコンの電気代も気になりますが、コロナの方もいい加減にしてほしいものです。ここ最近のメルマガを読み返しますと、記事の至る所にコロナコロナが現れて、鬱鬱となります。
今号では対面とオンライン学術会議それぞれ1件の模様を中心に構成いたしました。硲先生、有元先生、西大條さま、御多忙中のところ、ご寄稿いただきありがとうございました。
それでは皆さま、もう第7波が来てますが、くれぐれもご自愛くださいませ。せっかくのオープンキャンパスが無事開催されることを祈念して。
////////////////////////////
リテラ友の会・メールマガジン
オーナー:広島大学文学部長 友澤和夫
編集長:広報委員長 末永高康
発行:広報委員会
広島大学文学部に関するご意見・ご要望、
メールマガジンへのご意見、配信中止・配信先変更についてのご連絡は
下記にお願いいたします。
広島大学人文社会科学系支援室(文学)
電話 (082)424-6602
FAX (082)424-0315
電子メール bun-koho@office.hiroshima-u.ac.jp
バック・ナンバーはこちらからご覧いただくことができます。
////////////////////////////