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近年の大学教育では、専門知識だけでなく、協働力や問題解決力などの「汎用的能力」の育成が重視されています。しかし、学士力や社会人基礎力、就職基礎能力を議論する際には、大学が身に付けさせるべきだと考える能力や、雇用側が求める人材像に基づいて論じられることが多く、学生自身の経験に基づく視点が欠けています。「全国学生調査」は、日本の大学生の学習経験に関する貴重な調査であり、文部科学省が実施しています。本調査の目的の一つは、学生が大学生活で身に付けた能力について、学生の主観的評価を把握することにあります。これまで本センターでは、IR報告の一環として「全国学生調査」の成果を活用し、広島大学の教育活動の現状を把握してきました。今回は、過去3回の調査(2019年度、2021年度、2022年度実施)の一部結果を用いて、全国の大学、国立大学、そして本学の学生が大学生活で身に付けた能力に対する主観的評価の特徴を報告し、本学の教育活動への示唆を提示します。
全体的な評価
過去3回の調査では、「大学教育を通じて、次のような知識や能力が身に付いたと思いますか」(2019年度調査では「次の知識や能力を身に付けるために、大学教育は役に立っていると思いますか」)という設問が設けられています。本設問には、図1に示すように、特定の分野の学びに限らない「汎用的能力」に関する項目が含まれています。
図1:「全国学生調査」の調査項目における「汎用的能力」に関する項目
これらの項目に対する回答を点数化し、その平均点を整理した結果(図2)、全体的な傾向として「多様な人と協働する力」や「幅広い知識、ものの見方」など、知識や技能を活用する能力については、学生の自己評価がおおむね高いことが明らかになりました。その他に最も顕著であったのは、「専門分野に関する知識・理解」に対する自己評価が高い一方で、「外国語を使う力」についてはすべての項目の中で評価が最も低いという結果です。本結果に関連すると考えられる「異なる文化に関する知識・理解」という項目も、他の項目と比較して、学生の自己評価が低いという結果になりました。過去3回の調査において、これらの項目について本学の結果は全国の大学と同様の傾向を示していますが、興味深いことに、2019年度と2021年度調査では、「異なる文化に関する知識・理解」という項目で本学の学生の自己評価が全体よりやや高いという結果が得られました(2022年度は同程度)。
図2:大学生活で身についた能力の自己評価の比較
外国語能力向上に繋がる活動の提供
では、なぜ学生は大学教育を通じて自身の外国語能力の向上を実感できないのでしょうか。大学がどのような教育活動を提供すれば、学生に外国語能力の向上を実感させることができるのでしょうか。これらの問いに対する示唆を「全国学生調査」から見出したいと考えます。調査項目の一つに「大学在学中に経験した以下の項目はどの程度有用だったと感じますか」という設問があります。本設問からは、大学が提供した教育活動に対する学生の参加状況と評価を把握することができます。回答項目は3回の調査で多少調整されていますが、外国語能力の向上につながる可能性のある項目に着目すると、「海外留学・海外研修(短期留学を含む)」「海外の大学等が提供するオンライン授業(オンライン留学等)」「学内で自分と異なる文化圏の学生と交流する機会」「主に英語で行われる授業の履修(語学科目を除く)」という4つの項目が含まれています。外国語能力の向上につながる教育活動に参加したことのある学生による、これらの教育活動への評価を点数化した結果(図3)を見ると、全国の大学より本学の学生は、本学の提供する教育活動をおおむね有用だと評価していることが読み取れます。
図3:大学が提供する外国語能力の向上に繋がる教育活動の有用性の比較
続けて、本学の学生の中でこれらの国際的な教育活動(オンライン留学・異なる文化圏の学生との交流・英語で行われる授業)に参加した経験のある学生の比率(図4)を見ると、そもそも参加した経験がない学生が大多数であることがわかります。本結果が、異文化理解と外国語能力に対する自己評価の低さにつながった背景の一つであると考えられます。
図4:広島大学における外国語能力の向上に繋がる教育活動への参加状況
まとめ
過去3回の調査結果を振り返ると、本学の学生による大学生活で身に付いた能力への主観的評価は、全体的には全国の大学の傾向と類似していました。その中で特に注目すべき点は、全国的な結果同様、異文化理解と外国語能力に対する自己評価が特に低いという結果です。さらに、外国語能力の向上につながる教育活動について、本学は学生から全国の大学と同等、またはそれ以上の評価を得ていますが、これらの活動に参加した経験のある学生が少なく、全体的な評価の向上につながっていないと推測されます。このような結果を受け、「グローバル人材を育成する一貫教育の確立」という目標を掲げる本学では、これまで実現してきた国際化の成果をより広く普及させ、学生の外国語能力の向上の実感につなげられるよう、さらなる努力が求められていることが示唆されています。
教育学習支援センター

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