栄養班

栄養班の概要

食料生産に必要なリンは経済的に採掘可能な資源が数十年以内に枯渇することが懸念され、埋蔵量のない我が国では極めて重要な資源問題となっている。その一方で、これまでに農耕地土壌中には未利用のリンの蓄積が進んでいる。このような現在の状況下で必要な方策は、「未利用のリンを如何に循環利用するか」にかかっている。未利用のリンを循環利用するために、「植物のリン利用効率改善」(難利用性土壌リンからの植物による吸収能力の強化、植物における低リン耐性機構の解明と活用)、「土壌中の養分動態の解析」(陸域におけるリン循環の実態の把握)、土壌微生物の活用についての研究に取り組む。
 また、植物に取り込まれた栄養は体内での有効利用を行うため、老化葉から新生葉への再転流を行っている。貧栄養環境下で生育する植物は再転流能が高いことが知られている。そこで、「植物の栄養素再配分システムの改良」により植物の栄養再転流能を活用することを目指す。

特色

長期連用試験圃場を活用!

広島大学大学院生物圏科学研究科附属瀬戸内圏フィールド科学教育研究センターには、ユニークな長期連用試験圃場を保有している。ここでは、肥料三要素(窒素、リン酸、カリウム)などの施用量を管理し、養分欠乏などの条件が作物生育にどのような影響を及ぼすかの試験を行うことができる。この圃場を活用して独自の研究を行うほか、共同研究も行っている。

これまでの成果

低リン耐性を強化することに成功した!

シロバナルーピンは通常の植物が直接吸収できない土壌中のリンを吸収できる形にする能力を有する。その能力に酸性ホスファターゼという酵素が関わっている。シロバナルーピンのもつLASAP2という分泌性酸性ホスファターゼの遺伝子をタバコに導入したところ、吸収できる形のリンが少ない土壌での生育が改善した。

新しい植物ホルモン・ストリゴラクトンは葉の老化を制御する

ストリゴラクトンは多くの植物でリン吸収に関与する植物ホルモンである。シロイヌナズナの葉を一週間暗黒処理すると葉が老化(黄変)するが、ストリゴラクトン関連遺伝子の突然変異体は老化が遅延することから、ストリゴラクトンは老化の正の制御因子であることが分かった。ストリゴラクトン合成系酵素遺伝子の突然変異体は合成ストリゴラクトンGR24を加えることで老化が進行するようになるが、ストリゴラクトンの信号伝達系突然変異体はGR24を加えても表現型が回復しない。


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