広島で被爆した南方特別留学生に関する本の出版記念式典(於マレーシア)に本学副理事が参加しました



平成27(2015)年8月6日、マレーシアのタンジュン・マリム市にあるスルタン・イドリス教育大学にて、広島で被爆した南方特別留学生アブドゥル・ラザク氏(故人)の被爆体験とその生涯をマレー語で記した本、『Razak Sensei(ラザク先生)』の出版記念式典が開催され、本学から堀田泰司副理事が参加しました。



故ラザク氏は、昭和19(1944)年に当時の国費留学生制度であった南方特別留学生として来日し、昭和20(1945)年4月に広島大学の前身の広島文理科大学に進学しました。しかしながら、同年8月6日に授業中に被爆され九死に一生を得ましたが、勉学半ばにして帰国せざるを得ませんでした。



帰国後、マレーシアにおける日本語教育の発展に大きく貢献され、特に、1980年代に開始された同国の東方政策の事業(*1)では日本語教育の主任として中心的な役割を果されました。また、日本とマレーシアの友好関係の強化にも努められるとともに、自らの被爆体験をマレーシアの人々に伝え、平和活動の推進にも貢献されました。これらの功績に対して、平成25(2013)年に広島大学から名誉博士号を授与(*2)しましたが、残念ながら同年7月にご逝去されました。



出版記念式典は広島に原爆が投下された8月6日にあわせて開催され、冒頭、広島で挙行された平和祈念式典の模様と南方特別留学生の被爆体験を再現した映像が放映されました。続いて、故ラザク氏の母校で自らも教鞭をとったスルタン・イドリス教育大学からザカリア・カサ学長、故ラザク氏の長男で元マレーシア科学大学長のズルキフリ・アブドゥル・ラザク氏、在ペナン日本国総領事館の谷口裕子領事から挨拶がありました。その後、同じくスルタン・イドリス教育大学の同窓生であるアブドゥル・ラーマン ペナン州知事から『Razak Sensei(ラザク先生)』の出版披露がありました。



最後に、今回の出版に携わった有識者を交えて、故ラザク氏が自らの教育活動を通じて伝えたかったことについてのパネル・ディスカッションが行われ、同氏が日本での生活や被爆体験から、日本人の勤勉さや謙虚さ、助け合いといった伝統的な精神を学ぶとともに、戦争の悲惨さ、平和への願いの重要性を、広くマレーシアの人々に知らせたかったことが述べられました。



この出版記念式典やパネル・ディスカッションの模様はマレーシア国内でも広くテレビ放映されました。本学の堀田副理事も取材を受け、33年前にマレーシアの東方政策の事業のために故ラザク氏と一緒に働いた当時の思い出を語りました。



今年で被爆70年を迎えますが、この出版をきっかけとして故ラザク氏の被爆体験が広くマレーシア国内で伝えられるとともに日本とマレーシアの友好関係が更に深まることが期待されます。

(*1)東方政策(ルック・イースト政策)。日本や韓国の労働倫理や経営哲学などを学ぶことによって経済発展を目指していく構想。1982年の開始以来、約15,000人の留学生や研修生がマレーシアから日本に派遣された。



(*2)アブドゥル・ラザク氏以外にもブルネイ元首相のペンギラン・ユソフ氏、インドネシア元国会議員のハッサン・ラハヤ氏にも名誉博士号が授与された。本年3月には広島大学から『被爆した南方特別留学生への名誉博士号授与の記録』を作成。





ペナン州知事(中央)からの出版披露




パネル・ディスカッションの様子




故ラザク氏の長男で元マレーシア科学大学長の

ズルキフリ・アブドゥル・ラザク氏




今回出版された『ラザク先生』(左)と本年3月に本学が

作成した名誉博士号授与の記録(右)



【問い合わせ先】

広島大学教育・国際室(国際センター)

国際交流グループ  

TEL: 082-424-6042

E-mail: kokusai-kyoten"at"office.hiroshima-u.ac.jp 

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