<研究内容について>
広島大学 大学院医系科学研究科
教授 相澤秀紀
TEL: 082-257-5115
E-mail: haizawa*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
<AMED事業について>
日本医療研究開発機構 (AMED)
疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課
TEL: 03-6870-2286
E-mail: brain-pro*amed.go.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
広島大学大学院医系科学研究科 相澤秀紀教授と同 脳・こころ・感性科学研究センター 山脇成人特任教授の研究グループは、脳深部で炎症に関与するPCSK5 遺伝子がうつ病のような症状を引き起こすことを動物実験の結果から明らかにしました。
うつ病は広く見られる精神疾患であり、世界の全人口の約4%が苦しんでいます。一方で、自殺率や再発率が高いことからその治療薬や予防薬の開発が社会的な課題となっています。
うつ病の病態を詳しく調べるために研究グループは、慢性的にストレス状態に置かれることでうつ病のような行動を示すマウスを調べ、これまであまり研究の進んでいなかった脳深部の微小領域である手綱核(たづなかく)という部分に炎症反応が見られることを確認しました。次世代シーケンサーを使い遺伝子発現を網羅的に調べたところ、手綱核では炎症反応に関与するPCSK5 遺伝子が活性化しており、PCSK5 遺伝子の働きを抑えたマウスでは脳内の炎症反応の改善とともに抗うつ効果を認めました。
本研究は、脳の炎症細胞がうつ病の基盤にあることを示すと同時に、炎症に関与するPCSK5 を作用点とした新しい抗うつ薬の可能性を示唆するものです。
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)脳科学研究戦略推進プログラム及び日本学術振興会科学研究費補助金新学術領域研究による支援を受けて行われました。本研究成果は、米国科学雑誌「Neuropsychopharmacology」オンライン版に掲載されました。
手綱核におけるPCSK5の役割を示す模式図
これまでの研究から失望や罰により手綱核の神経細胞が活性化し、セロトニン神経系などの神経伝達物質異常に関与することがわかっている。今回の研究成果によると、慢性ストレスが手綱核の神経細胞のPCSK5 遺伝子の発現を上昇させた。PCSK5タンパク質は細胞外基質を分解するタンパク質分解酵素MMPを活性化して脳の炎症に関与する単球やミクログリア細胞の動きを活発にした。このようなPCSK5 遺伝子のはたらきを抑制すると手綱核の炎症反応の改善とともに抗うつ効果が得られた。
(※1) PCSK5
Proprotein convertase subtilisin/kexin type 5の略で、MMPなどの他の特定のタンパク質を切断することで活性化させるタンパク質として働く。ヒトの脳における働きには不明な点が多く、本研究成果をもとに今後の研究による解明が期待される。
(※2) サイトカイン
細胞が分泌する生理活性タンパク質。特に、免疫細胞同士の情報伝達を担い、炎症反応を制御する。インターロイキンやインターフェロンなどの種類がある。
(※3) MMP
Matrix metalloproteinaseの略で、MMP2やMMP14など多数の種類があり、細胞と細胞の間を埋めるタンパク質を分解する酵素としてはたらく。細胞間を埋めるタンパク質は炎症細胞の動きやすさ(遊走能)を左右することから、MMPは生体の炎症反応に関与すると考えられている。
(※4) ミクログリア細胞
脳の中にある小型の細胞。脳に何らかの障害が生じると活性化して炎症物質であるサイトカインや活性酸素を放出したり、損傷を受けた細胞を除去するなど、脳内の免疫細胞のような働きをする。
<研究内容について>
広島大学 大学院医系科学研究科
教授 相澤秀紀
TEL: 082-257-5115
E-mail: haizawa*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
<AMED事業について>
日本医療研究開発機構 (AMED)
疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課
TEL: 03-6870-2286
E-mail: brain-pro*amed.go.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
掲載日 : 2020年09月17日
Copyright © 2003- 広島大学