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  • 【研究成果】COVID-19による死亡者の約20%、70歳以上の未感染者の約4%がI型インターフェロンに対する中和抗体を保有する~COVID-19重症化の病態解明に貢献~

【研究成果】COVID-19による死亡者の約20%、70歳以上の未感染者の約4%がI型インターフェロンに対する中和抗体を保有する~COVID-19重症化の病態解明に貢献~

本研究成果のポイント

  • I型インターフェロン(I型IFN)(注1)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(注2)に対する感染免疫に重要な役割を果たします。そのため、I型IFNの働きに問題がある場合にCOVID-19が重症化する可能性が高くなることが知られています。
  • 本研究で、COVID-19死亡例や高齢の最重症例(注3)では、I型IFNに対する中和抗体(注4)の保有頻度が非常に高い(約20%)ことが判明しました。そのため本中和抗体を測定することで、重症になりやすい方を予測したり、重症化のリスクに応じて治療方針を選択したりすることが実現する可能性が期待されます。
  •  国外の未感染者を対象とした調査では、高齢であるほどI型IFNに対する中和抗体の保有率が高くなり、70歳以上では約4%の方が同中和抗体を保有することが判明しました。また、本邦の未感染者を対象とした調査では、健常者の約0.3%が同中和抗体を保有することが明らかになりました

概要

Jean-Laurent Casanova(ロックフェラー大学[米国])、Paul Bastard(イマジン研究所[フランス])らの研究グループ、岡田賢(広島大学大学院医系科学研究科小児科学 教授)、江藤昌平(同大学院生)、津村弥来(同研究員)、田中純子(広島大学大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学 教授)らの研究グループ、森尾友宏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野教授)、貫井陽子(同感染制御部准教授)らの研究グループは、他の研究グループと共同で国際共同研究グループ(CHGE:COVID HUMAN GENETIC EFFORT)(注5)を結成し、COVID-19患者(5,857例)および健常者(34,159例)の検体を収集して、I型IFNに対する中和抗体の保有状況を調査しました。
その結果、COVID-19による死亡例および80歳以上の最重症例は、I型IFNに対する中和抗体を高頻度(約20%)に保有することが判明しました。一方、COVID-19の軽症者における中和抗体の保有率は70歳未満で0.18%、70歳以上で約4%(70~79歳 1.1%、80歳以上 3.4%)と低く、本中和抗体を保有することがCOVID-19重症化のリスク因子になることが明らかとなりました。
なお、本研究はAMED 2021年度 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する研究」(研究代表者:岡田 賢) の支援により行われたもので、その研究成果は、8月19日23時に「Science Immunology」に公開されます。

図1:COVID-19最重症例における年齢毎のI型IFNに対する中和抗体の陽性率

 COVID-19最重症例では、中和抗体の保有率が高い(COVID-19未感染者における中和抗体の保有率は、70歳未満で0.18%、70~79歳で1.1%、80歳以上で3.4%)。さらに、高齢であるほど中和抗体の保有率が高くなる傾向を認めた。
※灰色の範囲は標準誤差を示す。

図2: COVID-19死亡例におけるI型IFNに対する中和抗体の陽性率

COVID-19死亡例では、全年齢層において中和抗体の保有率が高い(COVID-19未感染者における中和抗体の保有率は、70歳未満で0.18%、70~79歳で1.1%、80歳以上で3.4%)。
※灰色の範囲は標準誤差を示す。

用語解説

(注1)I型インターフェロン(IFN):
IFN-α, IFN-β, IFN-ωなどが該当する。ウイルス感染によって産生され、強力な抗ウイルス活性をもたらす。本研究では、I型IFNの代表としてIFN-α2, IFN-ωに着目して研究を実施した。
(注2)COVID-19:
2019年に発生した新型コロナウイルス感染症で、SARS-CoV-2と呼ばれるウイルスが原因で起こる感染症。
(注3)最重症例:
重症度が高く、集中治療室で全身的な管理が必要な症例。
(注4)I型IFNに対する中和抗体:
I型IFNの活性を中和する自己抗体。I型IFNに結合して、そのウイルス感染防御機構を阻害する自己抗体を示す。
(注5)CHGE(COVID HUMAN GENETIC EFFORT):
COVID-19重症化のメカニズムの解明を目指した国際共同研究グループ。

論文情報

  • 掲載誌: Science Immunology
  • 論文タイトル: Autoantibodies neutralizing type I IFNs are present in ~4% of uninfected individuals over 70 years and account for ~20% of COVID-19 deaths
  • 著者名: Paul Bastard*、江藤昌平、津村弥来、貫井陽子、田中純子、森尾友宏、岡田賢、 Jean-Laurent Casanova*、そのほかに173人の研究者。
    * Corresponding Author (責任者)
  • DOI: https://doi.org/10.1126/sciimmunol.abl4340
【お問い合わせ先】

<研究に関すること>
広島大学大学院医系科学研究科
小児科学 教授 岡田 賢
TEL:082-257-5212
FAX:082-257-5214
E-mail:sokada*hiroshima-u.ac.jp

<報道(広報)に関すること>
広島大学 広報部広報グループ
〒739-8511 東広島市鏡山1-3-2
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E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)


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