<研究に関すること>
広島大学大学院医科学系研究科・広島大学病院総合診療科
助教 宮森 大輔
Tel:082-257-5461 FAX:082-257-5461
E-mail:morimiya*hiroshima-u.ac.jp
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(注: *は半角@に置き換えてください)
広島大学病院 宮森大輔診療講師、池田晃太朗医師、大学院先進理工系科学研究科 鹿嶋小緒里准教授、大学院医系科学研究科 松本正俊寄附講座教授、石井伸弥寄附講座教授、吉田秀平助教、自治医科大学 小池創一教授、北広島町八幡診療所 岡崎悠治医師による介護レセプトデータを用いた研究により、2018年西日本豪雨災害の被災者において、被災を契機に施設入所した人の割合が増加していることが明らかになりました。
この研究成果が2022年12月29日に、米国学術誌「Journal of the American Medical Directors Association(JAMDA)」に掲載(オンライン)されました。本研究はビッグデータを用いることにより、自然災害が施設入所のリスクとなることを初めて実証しました。
【研究の背景】
世界的な気候変動により自然災害のリスクは年々増加しています。また災害は高齢者の脆弱性の悪化により、介護者の負担を増加させ、結果として介護施設への入所を促進することが推測されていましたが、それを大規模データで実証した研究はこれまで存在しませんでした。本研究は厚生労働省より許可を経て、西日本豪雨災害の被害が大きかった3県(広島県、岡山県、愛媛県)の介護レセプトデータを分析し、65歳以上の被介護者の施設入所の頻度の変化を災害後の半年間で評価しました。
【研究成果の内容】
データに含まれる65歳以上の被介護者 187,861人のうち、1.1%(2,156人)が市町村により被災者として認定されていました。災害後の6カ月間で、被災者の11%(239人)と非被災者群の3%(6184人)が施設入所していました。
被災者群は非被災者群と比較して災害後に有意に高い比率で施設入所していました(調整ハザード比:3.23、95%信頼区間:2.88–3.64)。サブ解析では、特に元々食事摂取が困難であった被介護者において、被災による施設入所の影響が大きい結果となりました(調整オッズ比:6.0、95%信頼区間:3.68–9.79)。
これらの結果により、自然災害は被災した被介護者の施設入所のリスクを増加させ、特に食事摂取が困難な集団において、さらにリスクが高くなることが明らかになりました(図参照)。
【今後の展開】
気候変動による自然災害の増加、また世界的な高齢化社会の進行に伴い、災害を契機とした介護需要の増大が予想されます。要介護高齢者が災害弱者であることを認識し、災害時の介護施設需要の急激な増大に対して平時から対応を検討しておくことは、災害国家である日本では不可欠です。さらに高齢者の中でも特にリスクの高い集団を普段より認識し、備えておく必要もあると考えられます。
本研究では、災害前に施設入所していなかった被介護者が、1カ月以上特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設に入所した場合を施設入所と定義しています。
図)非被災者群と被災群の災害後の施設入所イベントが起こらなかった割合の時系列分析 (A全対象者では、被災群は非被災群と比べて調整ハザード比は3.23で施設入所のリスクが増加した。 (B)自力での食事摂取が困難な集団においては、被災群は非被災群と比べて調整ハザード比6.0で施設入所のリスクが増加した。
また、災害と自力での食事摂取の可否の間の交互作用項のp値は0.001以下であり、統計学的に有意に食事摂取の有無が災害の有無によって施設入所のリスクを変化させることを示している
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掲載日 : 2023年01月17日
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