担当授業科目名
比較文化論、コミュニケーション原論
概要
私の専門は文化人類学です。人類学は「驚き」を大切にする学問です。当たり前だとされている様々なことに対して心底驚くこと、そこから、どうしてこんな風になっているのか、なぜこんなことが行われているのだろうと「問い」を発し、その「問い」を他の人たちと共有しうる公共的なものに鍛え上げていく。こうした過程は、どのような研究でも重要ですが、とりわけ人類学に特徴的なのは、自らの感性や情動を大切にする点です。
AIが全面的に社会システムに組み込まれる時代の到来とともに、近代的な知性ではとても太刀打ちできない状況を私たちは生きることを余儀なくされます。その際、今よりずっと大きな意味をもつようになるのは、私たちが「感じる身体」として存在しているということです。AIにはない「感じる身体」が、環世界を構成している自然や人工物、他の生きものや他の人間たちと交錯し、絡み合うなかから生み出される感覚的・情動的知性。こうした知性は、理性より一段低いものとして近代科学の潮流においては軽視されてきましたが、人類学はこうした知を手放さず、粘り強く探究してきました。そして今、感覚的・情動的知性と、そこから立ち上がる関係性は、新たなかたちを取りながら蘇りつつあります。そこから見えてくる古くて新しい「社会」や「地域」のあり方についての研究を行なっています。
研究分野
文化人類学、医療人類学、地域精神保健、地域デザイン、発酵文化
研究活動
● 著書
『プシコ ナウティカ―イタリア精神医療の人類学』世界思想社、2014年。(単著)
『トラウマを生きる―トラウマ研究1』京都大学学術出版会、2018年。(共編著)
『トラウマを共有する―トラウマ研究2』京都大学学術出版会、2019年。(共編著)
『文化人類学の思考法』世界思想社、2019年。(共著)
『医療人類学を学ぶための60冊―医療を通して「当たり前」を問い直そう』明石書店、2018年。(共著)
『世界の手触り―フィールド哲学入門』ナカニシヤ出版、2015年。(共著)
『自然学―来るべき美学のために』ナカニシヤ出版、2014年。(共著)
『身体化の人類学―認知・記憶・言語・他者』世界思想社、2013年。(共著)
● 学術論文
「喚起する言葉―人類学的記述をめぐって」『臨床精神病理』38(1)、2017年
「〈agio〉のある環境―イタリアの精神医療における〈生態学的転回〉について」『こころと文化』13(1)、2014年
● その他の論文
● 受賞歴
多文化間精神医学会奨励賞(2015年)
外部資金獲得実績
● 科学研究費取得実績
● その他外部資金習得実績
所属学会
日本文化人類学会、多文化間精神医学会
詳細情報
● 研究者総覧