【教学分析報告】「満足」の先へ:授業満足度4.2時代の本学の教育の未来

 日本の高等教育政策において、学生による授業アンケートは、単なる主観的な感想の収集にとどまらず、大学教育の内部質保証および、学修者本位の教育への転換を実現するための不可欠な根拠データとして位置づけられています。特に近年は、学生の学びの状況や授業に対する多角的な評価を可視化し、組織的な教育改善へと還元することが強く求められてきました。このように授業アンケートは、全学的なカリキュラム検証や教学マネジメントを支える政策的に重要な指標として扱われています。
 本学では、全学的な教育改善活動の一環として、全学部生を対象とした「授業改善アンケート」を継続的に実施しており、2009年度以降の全学学部生の回答結果の要約を広く公開しています。2015年度までは「前期・後期」の年2回体制でしたが、2016年度のターム制導入に伴い「年4回」へと収集機会が拡充されました。また、評価尺度についても2013年度までの「4点尺度」から2014年度以降は「5点尺度」へと変更されています。本報告では、これらの制度変更を跨いで長期的な比較を可能とするため、4点尺度のデータを5点満点相当へ変換した変換値(1〜5点の換算値)を用いて経年変化を捉えています(下図)。
 

 本学の授業満足度は、2009年度の3.7程度の水準から経年的に堅調な右肩上がりの上昇傾向を示してきました。特に近年(2021〜2025年度)においては4.2前後という高い水準で推移・安定しています(最高値は2021年度第4タームの4.306)。
 このように、全学部生を対象とした授業満足度が長期にわたり一貫して向上し、4.2を超える高水準で安定していることは、本学が推進してきたFD活動の全学的定着や、多様な教育の質向上施策が成果を上げている表れと前向きに評価してもいいと思います。同時に、こうした背景には大学側の教育改善努力のみならず、素直で前向きに授業へ参加する学生が増加しているという学修者側の気質変化が寄与している可能性もあります。ただし、その要因については今回の結果のみから特定することは困難です。この仮説を検証するためには、他大学における同様のデータの傾向と比較することは一助になるかもしれません。
 満足度が4.2〜4.3に達した現在の高水準安定期においては、現在の評価指標が示す「満足」の内容を質的に吟味・再定義するフェーズに入ったと考えられます。高い満足度が単なる友人関係や履修のしやすさ(例:居心地の良さ)にとどまっているならば、大学教育本来の目的である高い課題負荷(思考力・探究力を鍛える学修量)の確保と相反するリスクを孕んでいます。つまり、高い満足度が望ましい現象を表しているとは限らないということです。今後は、心地よい満足から、高い学修負荷を乗り越えた先にある成長実感を伴う満足へと授業の質を引き上げていくことが期待されるかもしれません。
 また、別の視点として、教育改善の基盤が定着・成熟した現状を踏まえれば、教育改善に投じるマネジメントリソースを整理し、その分、研究や社会貢献といった大学にとっての他重点領域へエフォートを高めていく方向へ舵を切ることも、経営戦略上の選択肢として考えられます。いずれにしても、今回のような根拠データを全学的な大学運営に運用していくことこそが、本学が「100年後にも世界で光り輝くために」意義のある視点となるでしょう。

【問い合わせ先】

教育学習支援センター

e-mail:capr@hiroshima-u.ac.jp
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