プログラム成り立ちの背景

プログラム成り立ちの背景

放射線の産業、医療、エネルギー分野での利用は、人類に多大な恩恵をもたらします。しかし、その利用を一歩誤ると健康被害の発生や広島・長崎の原爆被災の様に一瞬にして社会そのものが破壊されます。

広島大学は、世界で最初の被爆地に誕生した総合大学であり、広島の原爆被害からの復興を学術面で支えて来ました。被ばく医療では、原爆放射線医科学研究所を中心に、世界をリードする研究成果を挙げてきており、21世紀COEプログラム「放射線災害医療の先端的研究教育拠点」では、ゲノム障害科学を導入した新しい放射線災害医療学を切り開き、当該分野の人材育成を進めました。さらに、本学は西日本ブロックの三次被ばく医療機関に選定され、我が国の緊急被ばく医療の拠点として活動すると共に、国際的な緊急被ばく医療ネットワークである国際原子力機関(IAEA)のRANET及びWHOのREMPANに参加し国際的な活動にも取り組んできました。

平成23年3月11日に発生した東日本大震災と、それに続く福島第一原子力発電所事故では、三次被ばく医療機関として、延べ1,300名以上の「緊急被ばく医療支援チーム」を福島県に派遣し、被ばく傷病者対応や住民被ばく管理などを行うと共に環境汚染調査を実施し、福島県民の安全・安心に資する活動を行ってきました。

現地での体験を通して明らかとなったことは、原発事故は、健康被害や環境汚染に加え、人心や社会に破壊的な影響を及ぼすことです。同時に、この様な原子力災害からの復興には、放射線科学、環境科学、及び社会科学などの幅広い学際的な知識を有し、明確なビジョンのもとに国際社会と連携しながら復興を指導できるグローバルリーダーが不可欠なことです。しかし、この様な人材は、我が国のみならず国際的にも絶対的に不足しています。そして、この様な人材の育成は、原発事故を起こした日本やチェルノブイリなどの関係国で必要であるのみならず、国際的にも緊急を要する課題となっています。

このような課題解決に資することが出来る人材を育成するために、本プログラムは生まれました。


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