カウンターナラティヴから語るアメリカ文学
伊藤 詔子 監修 新田 玲子 編集
ページ: 378ページ | |
ISBN: 978-4-7553-0269-5 | |
発行年月: 2012-10-10 | |
価格: 3,400円+税 | |
出版社: 音羽書房鶴見書店 |
内容紹介
「ナラティヴ」は人の意識や認識の根幹とかかわる抽象概念である。「物語」と訳されることが多いが、複数の意味を同時に含み、物語ることと同時に物語られる内容も指す。時間・空間認識の基本的な型でもあり、物語を伝える強固な器でもある。誰でも昔話を暗誦することができるのは、それがナラティヴの器に入っているからだともいえる。
特定のナラティヴが教育やメディアを通して長期的に共有されると、それは主流かつ標準的なもの、すなわちマスターナラティヴとなって一定の支配力を持つようになる。そして、語りの循環と継承によって文化/社会/歴史などにまたがるゲシュタルト的文脈を形成する。ナラティヴは、この意味では、集団が共有するマスターナラティヴと、個人の語りとの接点で発せられる声という側面も持つ。よって、支配的なナラティヴのエージェントとして末端で力を振るう語りもあれば、逆にマスターナラティヴを批判し、その一方的な支配力を相対化しようとする語りも現れる。後者はしばしば「別の物語」を対置する語りとなり、カウンターナラティヴと呼ばれる。
本書は、こうしたナラティヴ/カウンターナラティヴの発生・衝突・継承の現場を丹念に語り起こすことによって、人と文化の個別性と、その多様なダイナミズムとを浮かび上がらせようとする試みである。主たる対象はアメリカ文学の領域ではあるが、世界各地と繋がりつつ種々の文脈が交差する場所としてのアメリカが論じられる。(後略)
(週刊読書人1月4日新年特大号掲載 文・長岡真吾)
目次
まえがき | |
I | カウンターナラティヴとアメリカン・ルネサンス |
II | エスニシティとジェンダーにみるカウンターナラティヴ |
III | カウンターナラティヴの新たなる展開 |
あとがき |