樹木の多様性が気候変動影響を緩和する

本研究成果のポイント

〇過去57年間の温暖化と乾燥化の影響により、カナダの乾燥地森林の生産量は10年あたり1.3%低下した。

〇樹木形質の多様性が最も低い (単一樹種から成る) 林分と、最も高い林分を比較したところ、気候変動による負の影響下のなか多様性の高い林分では生産量が13%高いレベルで維持された。

〇森林の機能を長期的に維持するには、樹木形質の多様性を考慮することが重要である。

概  要

 乾燥気候帯は、気候変動の影響を強く受ける生態系の1つである。世界人口の約35%がこの地域に居住しており、そこに分布する森林は重要な生態系サービスを提供している。そのため、気候変動に対する森林機能の耐性を向上させ、持続可能な管理を進めることが求められる。本研究では、カナダ西部の乾燥気候帯に分布する北方林を対象に、長期的な気候変動が森林の生産量に及ぼす影響を調べるとともに、樹木の多様性によるその影響の緩和効果を検証した。

 1958年から2015年にかけてモニタリングされたカナダ・州政府のデータを解析した結果、温暖化と長期的な乾燥化の進行に伴い、森林の生産量が10年あたり1.3%の割合で低下していることが確認された。一方、樹木形質 (乾燥耐性など) の多様性が高い森林においては、このような負の影響が緩和され、単一樹種から成る森林に比べ生産量が13%向上することが明らかになった。また、資源獲得性に優れた樹種 (落葉広葉樹) が優占する森林では、温暖化が有益に働く可能性も示唆された。

 これらにより、樹木形質の多様性が長期的な気候変動の影響を軽減し、持続可能な炭素吸収源としての機能を維持するうえで重要であることが示された。さらに、気候変動対策として進められる森林再生や植林活動では、単に植林面積を拡大するだけでなく、機能的に異なる多様な樹種を組み合わせることにより、より効果的に「自然に根ざした解決策」を実施できる可能性が示された。

【DOI】https://doi.org/10.1126/sciadv.adn4152


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