スピン流が超高速で発生する瞬間を撮影

本研究成果のポイント

〇電子スピンを10兆分の1秒のフレームレートで撮影する技術を開発した。

〇光でトポロジカル絶縁体のスピン流が発生する瞬間の撮影に成功した。

〇光スピン制御を利用した光スピントロニクス技術の新たな原理を実証した。

概  要

 2023年ノーベル物理学賞が与えられた「アト秒(100京分の1)光パルス」によって,近年,超高速な電子の運動が次々と明らかになってきています。しかし,電子が持つスピン自由度まで実験で検出することは非常に困難であるため,次世代スピントロニクス技術で利用されるスピン流など電子スピンの超高速な運動まで明らかになっていませんでした。本研究では,電子スピンを直接的に観察できるスピン角度分解光電子分光技術 (SARPES) とフェムト秒(1000兆分の1秒)光パルス技術を組み合わせた新たな装置の開発に成功しました。この装置をトポロジカル絶縁体に利用して,光パルスでスピン流が発生する瞬間を観察することに成功しました。この成果は東京大学の近藤猛准教授と広島大学の黒田健太准教授が主導して得られたもので論文として出版されました(Kawaguchi et al. 2023, Review of Scientific Instruments 94, 083902)。 

 光照射で次々刻々と超高速に変化する電子スピンの運動を撮影できる本装置は,光の情報を電子スピンに変換する技術(光スピン制御)を組み込んだ光スピントロニクスデバイスや太陽電池などへ適用できます。 


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