AI技術を活用した空撮画像からの災害把握技術の開発

本研究成果のポイント

〇人工知能(AI)技術のひとつである深層学習を利用して、災害後に撮影された空撮画像から建物の被害程度を判別する手法を開発しました。本手法により、倒壊した建物、無被害の建物、屋根にブルーシートがかけられた建物を自動的に短時間で判別できます。

〇1995年兵庫県南部地震や2016年熊本地震をはじめとする近年の地震、津波、台風、土砂災害、洪水災害で撮影された空撮画像と建物被害データを基にして判別モデルを構築し、いずれの災害に対しても精度良く被害を判別できることを明らかにしました。

〇将来、広域・大規模な自然災害が発生した際には、短時間で個々の建物被害状況を把握することが可能となり、迅速かつ適切な災害対応に役立つと期待されます。

概  要

地震のような大規模で広域の自然災害後には、適切な応急対応のために、できるだけ早く被災範囲や被害量を把握する必要があります。特に建物被害に関しては、被害の広がりを把握するために、倒壊のような大被害だけでなく、中程度の被害の把握も重要になります。本研究では、1995年兵庫県南部地震や2016年熊本地震をはじめとして、近年の地震、津波、台風、土砂災害および洪水災害で得られた空撮画像データおよび建物被害データを利用して、AI技術のひとつである深層学習を適用することにより、各建物の被害程度を自動的に判定するモデルを構築しました。 本研究では、深層学習のうち畳み込みニューラルネットワーク(以下、CNN)を適用し、撮影された画像上の建物を倒壊建物、無被害建物、ブルーシート建物へ自動的に分類することを試みました。各種自然災害で得られたデータを学習用・検証用データに分け、CNNによって学習用データで学習した上で、検証用データへ適用したところ、いずれの災害データに対しても90%以上の精度で被害を正しく判別できることが確認されました。また、得られた推定結果をマップとして可視化することで、自然災害による建物被害の分布や範囲を明瞭に把握できることを示しました。 本手法により、短時間かつ自動的に建物被害の分布を把握することが可能となり、将来発生する広域自然災害の早期対応時における基礎資料を提供できる技術として活用されることが期待されます。


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