19世紀の東アジアにおける近代建築の研究

本研究成果のポイント

〇19世紀の東アジアにおける近代建築の導入と発展について、ジャーディン・マセソン商会の建築物を対象に明らかにした。

〇商人たちの国境を越えた商業ネットワークと建築空間との関連をとらえ、建築を社会との関連で考察する一助とした。

〇本研究の成果は東アジアにおける歴史的建造物の保存や建築史研究の国際化に貢献する。

概  要

 日本における近代建築の発展は江戸時代末期から明治初期の洋風建築の発展から開始される。筆者はこれまで、この日本における洋風建築の導入過程を19世紀の国際社会から理解することを試みてきた。

 本研究は、19世紀の東アジアにおける近代建築研究の一つとして、イギリス商人ジャーディン・マセソン商会の建築物について研究している。19世紀の香港や上海、横浜に支店を開設したジャーディン・マセソン商会は、各地で商業活動を営み、経済的なネットワークを構築した。各支店の建築にあたっても、図面や材料、建築家の流通において、同商会の商業ネットワークが関係していることを明らかにした。

 本研究の成果は、東アジアの歴史的建造物の保存はもとより、これまで一つの国で語られることが多かった近代建築史を、国際的なものとして考察する一端となる。

参考文献

  1. Susumu Mizuta (2023) Commercial architecture of a British trading firm in the Far East, 1830s-1930s: building of Jardine Matheson & Co. offices and warehouses, Journal of Asian Architecture and Building Engineering, Vol. 22, Issue 6, pp.3367-3385.
    https://doi.org/10.1080/13467581.2023.2205497
  2. Susumu Mizuta (2024) Constructions on the Commercial Network of a British Colonial Firm: Branch Buildings of Jardine Matheson & Co. in Nineteenth-Century East Asia. In A. Achmadi , P. Walker & S. Speechley (Ed.). Architectural Encounters in Asia Pacific: Built Traces of Intercolonial Trade, Industry and Labour, 1800s-1950s, pp. 118-132. London: Bloomsbury Visual Arts
    http://dx.doi.org/10.5040/9781350421394.ch-007


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