• ホームHome
  • 大学院先進理工系科学研究科
  • 【研究成果】希土類プラセオジムを含む化合物の超伝導の発現に電気四極子のゆらぎが必要不可欠であることを世界で初めて実験的に立証

【研究成果】希土類プラセオジムを含む化合物の超伝導の発現に電気四極子のゆらぎが必要不可欠であることを世界で初めて実験的に立証

本研究成果のポイント

  • 希土類プラセオジム(Pr)を含む化合物において、Prの電気四極子が空間整列した状態(電気四極子秩序)で超伝導が発現するには、電気四極子のゆらぎが必要不可欠であることを、世界で初めて実験的に立証しました。
  • 単結晶試料の電気抵抗を圧力下で測定した際、静水圧性の高い圧力媒体(アルゴン)を使用した場合は電気四極子秩序温度以下で超伝導が常に観測されました。一方、静水圧性の低い圧力媒体(グリセリン)の場合には、試料に異方的な歪みが加わることで、電気四極子秩序と同時に超伝導も消失しました。これらの実験事実は、電気四極子のゆらぎが超伝導の発現に必要不可欠であることを示します。
  • 自然科学研究支援開発センター低温実験部で独自に開発した、10万気圧の超高圧を発生できる圧力容器と絶対温度0.1 K(=-273.05 ℃)以下の極低温での電気抵抗を測定できるシステムを用いて、超伝導と電気四極子秩序の相関を捉えることに成功しました。

概要

広島大学自然科学研究支援開発センターの梅尾和則 准教授と同大学大学院先進理工系科学研究科の鬼丸孝博 教授の研究グループは、希土類Prを含む化合物において、Prの電気四極子の秩序温度以下で発現する超伝導状態には、電気四極子のゆらぎが必要不可欠であることを、世界で初めて実験的に立証しました。

われわれの研究グループでは、2010年にPrカゴ状化合物(PrIr2Zn20)が、絶対温度0.11Kで電気四極子秩序を示し、それより低温の0.05Kで超伝導を示すことを見出しました。しかし、その後の研究では、その超伝導と電気四極子の関係は不明のままでした。本研究では、融液固化法によって育成したPrIr2Zn20の純良単結晶試料に自作の圧力セルを用いて10万気圧までの圧力を印加し、断熱消磁冷凍機を用いて絶対温度 0.1K以下の極低温まで冷却して、電気抵抗率を自作の測定システムにより精密に測定しました。その際、静水圧性の高い圧力媒体であるあるアルゴンを使用した場合には、電気四極子秩序温度以下で超伝導が常に観測されました。一方、静水圧性の低い圧力媒体であるグリセリンを用いた場合には、試料に異方的な歪みが加わることで、電気四極子秩序と超伝導が同時に消失しました。このことは、電気四極子のゆらぎが超伝導の発現に必要不可欠であることを示します。

本研究の成果は、アメリカ物理学会の学術誌Physical Review Bのオンライン版に掲載されました。

用語解説

(1) 希土類元素
周期律表で、原子番号21のスカンジウム(Sc)、29のイットリウム(Y)に、57のランタン(La)から71のルテチウム(Lu)のランタノイド元素を加えた17元素の総称。18世紀の終わりにそれらの一部が発見されたとき、その希少性から「希土類」と名付けられた。

論文情報

  • 掲載誌: Physical Review B
  • 論文タイトル: Simultaneous collapse of antiferroquadrupolar order and superconductivity
                        in PrIr2Zn20 by nonhydrostatic pressure
  • 著者名: 梅尾和則*1、瀧川莉穂2、鬼丸孝博2、安達誠3、松本圭介4、高畠敏郎2 (*責任著者)
    1. 広島大学自然科学研究支援開発センター
    2. 広島大学大学院先進理工系科学研究科
    3. 広島大学大学院先端物質科学研究科
    4. 愛媛大学大学院理工学研究科
  • DOI: 10.1103/PhysRevB.102.094505
【お問い合わせ先】

自然科学研究支援開発センター
准教授 梅尾 和則
TEL: 082-424-6276
E-mail: kumeo*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


up