大学院先進理工系科学研究科化学プログラム
教授 灰野岳晴(はいのたけはる)
Tel:082-424-7426
E-mail:haino*hiroshima-u.ac.jp
大学院先進理工系科学研究科化学プログラム
准教授 平尾岳大(ひらおたけひろ)
Tel:082-424-7138
E-mail:thirao*hiroshima-u.ac.jp
(*は半角@に置き換えてください)
生物学の中でらせん構造は至るところに存在しています。例えば、DNAの二重らせん構造や、心筋細胞がらせん状に並ぶ様子などがあります。
この自然のらせん構造に触発され、広島大学大学院先進理工系科学研究科の灰野岳晴教授らは、自ら制御可能ならせん状の人工ポリマーを開発しました。このポリマーは、テトラキスポルフィリンモノマー(※3)が相補的分子間相互作用(※4)によりらせん配列することで、キラルなチェーンのような構造をもっています。このようならせん構造は、記憶装置、センサー、キラルな固定相、非対称触媒、スピンフィルターなど、さまざまな分野での応用が期待されています。
本成果は、らせんポリマーの合成に新しい概念を提供するものであり、今後の発展が期待されます。
なお、この成果は、Wiley-VCHより出版されている「Angewandte Chemie International Edition」(I.F.=16.1)に2024年10月24日にオンライン版が掲載されました。
エレガントな生体分子のらせん構造に触発され、人工らせん構造の開発に多大な努力が注がれてきました。その目的は、らせん構造の定義された人工らせん構造を開発し、メモリ、センシングデバイス、キラル固定相、非対称触媒、スピンフィルタリングなど、幅広い潜在的な用途に活用することです。制御されたキラリティーを持つ超分子らせんポリマーは、刺激応答性キラル光学特性を持つ、らせんポリマーの新たなクラスです。分子認識による超分子らせん重合には、立体反転単位を持つ大きな超分子モノマーが必要であり、その報告例は多くありません。そのため、ユニークな分子認識モチーフを用いて、らせんポリマーの右巻き・左巻きの制御を行うことは依然として課題となっています。
広島大学大学院先進理工系科学研究科構造有機化学研究室のグループは、擬似大環状モノマーの超分子重合により生じる超分子擬ポリカテナープポリマー合成に成功しました。本研究では、ポルフィリンを四枚もつキラルな擬大環状構造を開発し、その分子認識により巻き方向を自在に制御する新しい方法を開発しました。(図1)
図1. キラルな擬大環状モノマーから形成する右巻きおよび左巻き擬ポリカテナンポリマー構造
ポリマーは、大きな分子が集まってできた物質群で、自然界ではタンパク質やDNAなどに見られ、工業分野ではプラスチックなどの合成材料として使われます。超分子ポリマーは、分子間で非共有結合が形成され、特定の配置に応じた特定の振る舞いを引き起こします。広島大学の研究チームが開発したのは、擬似的な機械的結合を持つ「擬似ポリカテナン」と呼ばれるポリマーで、非共有結合に加えて、物理的な力で切断できる擬似的な機械的結合も持っています。これは、精密な制御が必要な材料を開発する際に魅力的な特性です。
通常、このようならせん構造は「片手」タイプと呼ばれ、らせんのねじれが一方向にのみ進むものです。このねじれの向きが、他の物質との相互作用に影響を与えるため、研究者たちはそのねじれの方向(左回りまたは右回り)を制御できれば、ポリマーが異なる状況でどのように振る舞うかを制御できることになります。
らせんポリマーはさまざまな用途に役立つ可能性がありますが、特定の向きを持つポリマーを合成するのはこれまで困難でした。ここでは、ビスホルフィリン裂け目ユニットの相補的な二量化反応を制御することによって、向きが決まったらせんポリマーを合成する新しい方法を提案しました。
ビスホルフィリン裂け目ユニットは、他の分子と結合してポリマーを形成する分子部品です。これらのユニットを戦略的に結合させることで、合成されるポリマーの向きを事前に決定することができます。
この新しいらせん状超分子ポリマーを材料分離や触媒(化学反応の促進)に応用し、らせん状超分子ポリマーの新しい機能的化学の創出を目標とします。
(※1)キラル
右手と左手のように、その鏡像がそれ自身と重なり合うことがないもの
(※2)擬大環状構造
炭素原子が大きな環を形成している化合物の総称である大環状化合物に、炭素原子以外の酸素原子や窒素原子などを含むもの
(※3)テトラキスポルフィリンモノマー
ピロールと呼ばれる4つのユニットが4つの炭素原子で連結された環状構造を持つポルフィリン化合物(ヘモグロビンやクロロフィルなどがあります)の一種
(※4)分子間相互作用
原子や分子が互いに集合し結びつく力
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掲載日 : 2024年12月13日
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