本研究成果のポイント
〇実際の走行環境で遭遇する条件として隣接車線を走行する車両の空気力学的影響を考慮し、その影響による自動車の空気抵抗増加の原因を明らかにしました。
〇空気抵抗増加の要因を分類し、空気抵抗変化の近似評価について定量的な検証を加えました。
〇「渦構造」を抽出する最新の流れのデータマイニング技術を適用し、近似評価が困難な剰余成分の発生原因となる、「側方車両の影響による車体周り気流の特徴的な変化」を明らかにしました。
概 要
従来の自動車の空力設計・開発では、無風の路上を姿勢や速度が一定で走行する理想的な状態を想定し、性能評価がなされてきました。しかし、近年では実際の路上走行中に遭遇する様々な外乱の影響を考慮する必要性が指摘されており、その一例として隣接車線を走行する車両(側方走行車両)による影響が考えられます。一方で、これまで側方走行車両による空気力学的影響については、走行安定性に関連する研究が多く、空気抵抗変化に注目した研究はあまりなされていませんでした。
そこで本研究では、特に隣のレーンを走行する車両の影響に注目し、同影響下の自動車の空気力特性と、その要因となる空力現象を解明しました。風洞模型試験と流れの数値解析を行い、並走する2台の簡易車両モデル周りの速度場と圧力場を詳細に調査して、空気抵抗増加の要因を「I. 側方車両の周囲圧力場の影響」、「II. 側方車両の周囲風向変化の影響」、および「III. 2車両の相互作用等による余剰成分」の3種に分類しました。そして、一般的な走路条件ではI., II.の成分による近似評価がある程度有効であることを示しました。また、これらの成分として評価できないIII.の余剰成分を生じる物理メカニズムを明らかにするため、「渦中心」と「渦を形成する流線」を抽出する最新の流れのデータマイニング技術を適用し、側方車両の影響によって車体背面に顕著な圧力低下を生むと考えられる渦流れを明らかにしました。
論文情報
Nakamura, Y., Nakashima, T., Shimizu, K., Hiraoka, T., Nouzawa, T., Kanehira T., and Mutsuda, H., Identification of wake vortices using a simplified automobile model under parallel running and crosswind conditions, Journal of Fluid Science and Technology, Vol. 18, No. 1 (2023), DOI: 10.1299/jfst.2023jfst0005.
Shimizu, K., Nakashima, T., Hiraoka, T., Nakamura, Y., Nouzawa, T., and Doi, Y., Aerodynamic drag change of simplified automobile models influenced by a passing vehicle, Mechanical Engineering Journal, Vol. 7, No. 1 (2020), DOI:10.1299/mej.19-00366.