熱流センサを使用した室内空間の温度上昇量の予測手法の開発と検証

本研究成果のポイント

室内空間の温度上昇を概算するために使用可能な熱流密度の経時変化を、熱流センサを使用して取得する方法を提案した。

環境シミュレーションチャンバーで断熱性の異なる14種類の工法を用いた熱貫流実験を実施し、提案手法の妥当性を検証した。

実大の解析モデルを用いたシミュレーションによって、今回の検証に使用した断熱工法を用いると、無対策の場合と比較して、夏場の室内温度の上昇量を48%抑制できることを示した。

概  要

地球規模での気候変動に対する建築分野の取り組みの中で、もっとも効果的な対策の一つが建物の断熱性能を向上させることである。現在も材料、工法レベルで断熱性能向上の取り組みは盛んに実施されているが、断熱性能の評価方法は熱抵抗と熱透過率(U値)に基づいて数値化されており、建築物の所有者や使用者が直観的に理解することは困難である。

本研究では、このような問題に対処するために、「室内温度」という誰にでも直観的に理解しやすい指標を簡易的に推定する手法の確立に取り組んだ。この研究では壁材や屋根材を透過する熱流量を測定できる熱流センサに着目し、室内と屋外を再現できる環境シミュレーションチャンバーを利用して、種々の環境条件下で熱貫流実験を実施し熱流センサの数値から熱流密度を予測する式を確立した。次に、以上の評価方法を用いて断熱性能の異なる14種類の屋根材の断熱性能評価試験を実施した。

最後に、一般的な工場の実物大の解析モデルを作成し、実験結果から得られた特性値を利用して工場室内の温度上昇量の推定を行った結果、今回用いた断熱工法の中で最も有効な工法は、夏場の室内温度の上昇量を48%抑制できることが示された。


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