最新のX線偏光観測により「かに星雲」の磁場構造が明らかに

本研究成果のポイント

〇代表的な高エネルギー天体である「かに星雲」を、X線で初めて偏光撮像した

〇磁場の整列度がパルサーの回転軸に対し非対称な分布となっていることが分かり、従来の予想が覆された

〇フィラメントやジェットなどの周辺環境が、この特異な磁場構造を作ると考えられる

概  要

 2021年末に打ち上げられたIXPE衛星は、X線で「偏光観測」と「撮像」を初めて実現した衛星です。また「かに星雲」はおうし座にある代表的な高エネルギー天体で、中心にある高速回転する中性子星(パルサー)から吹き出す高速のプラズマ風(パルサー風)をエネルギー源として、電荷を持った粒子が周りに広がり幅広い波長で輝いています(パルサー風星雲)。パルサー風星雲の活動性を担うのは磁場であり、波(電磁波)であるX線の偏り方を測る偏光観測は、磁場の構造を探る強力な手段です。 

 従来の「撮像」では、細かい構造もありますが、X線放射はパルサーの回転軸に対し概ね対称であることが知られていました。しかしIXPE衛星による「X線偏光撮像」で、磁場の向きが場所によって異なり、また磁場の整列度(どの程度綺麗に向きが揃っているか)が極めて非対称であることが初めて明らかになりました(図参照)。この成果はイタリアのN. Bucciantiniが主導し、広島大学 宇宙科学センターの水野恒史をはじめとする日本の研究者も大きな貢献をして、論文として出版しました(Bucciantini et al.2023, Nature Astronomy 7, 602)。 

 さらに水野・Bucciantiniらは詳細な解析を行い、可視光で知られているフィラメント構造や、パルサーの回転軸に沿って吹き出すジェットがこれら磁場の整列度の変化を生み出している兆候をとらえ、第二論文として出版しました(Mizuno et al. 2023, PASJ 75, 1298)。 

 
【論文情報】

  •  Bucciantini, N., Mizuno, T., et al. 2023, Nature Astronomy 7, 602 
  •  Mizuno, T., Ohno, H., Watanabe, E., Bucciantini, N., Gunji, S., Shibata, S., Plane, P., Weisskopf, M. C. 2023, PASJ 75, 1298 


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