リテラ友の会 メールマガジン No.40(2010年11月号)
2010/11/24 広島大学大学院文学研究科・文学部
□□目次□□
1.リテラ「21世紀の人文学」講座2010リポート
2.第4回広島大学ホームカミングデー「世界とふれあい/語学カフェ」リポート
3.文学研究科外国人留学生懇親会リポート
4. リテラカフェ レポート
5.文学研究科(文学部)ニュース
6.広報・社会連携委員会より
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【1.リテラ「21世紀の人文学」講座2010リポート 歴史文化学講座教授 井内太郎】
『「永遠のヒーロー」坂本龍馬』
今年度の「21世紀の人文学」講座は、NHKの大河テレビ小説「龍馬伝」をもっとよく知ろうという企画のもと、「龍馬の生きた時代の歴史と文学」というテーマで行われました。講師は勝部眞人先生「幕末政治と坂本龍馬」、久保田啓一先生「志士と文学―若・漢詩―」というように、文学研究科でこの企画テーマに最も相応しい方々にお引き受け頂きました。
ぼくは、講師のお話を聞きながら、一方で龍馬に惹かれて部屋いっぱいに集まられた参加者(広島市内の「龍馬ファンクラブ」のメンバーも多数参加!)の様子をじっとうかがっていたのですが、龍馬を語る側の熱意と、お話しを一言も聞き漏らさないぞという参加者の緊張感や意欲を感じ取ることができました。みなさんが「なるほど」、「へ~、そうだったのか」、「え~、うそでしょ~」と、手に汗握り一喜一憂しながら講師のお話の世界にのめりこんでいくのを見ていると、そこに人文学の知的営みを媒介として、文学研究科と市民が一体となる時空が形作られていることを身をもって感じました。やはり、この講座は文学研究科の知的営みのみならず、人文学の世界を一般の人々に広く知ってもらい、広島の文化を育む大切な企画だと思います。
講師のお話にも少し触れないわけにはいきません。勝部先生のお話しは、いわゆる薩長「盟約」の書簡と、その龍馬の裏書きを題材に、まるで謎解きのように展開しました。従来の軍事同盟の密約という説明に疑義を呈され、ではその盟約の裏に隠された実際の密約とは何か、薩摩が長州に示した秘策とは何か明らかにされました。久保田先生は、幕末期の志士たちの詠んだ和歌や漢詩の世界についてお話しになりました。それによると、土佐藩士は山内容堂公を別とすれば、どうも和歌・漢詩の世界では旗色が悪かったようです。またやはり、明治維新の評価が常につきまとっていて、志士たちの実際の言行・教養・学識について冷静な文学的評価がなされてこなかったという指摘は、龍馬ファンでありながら西洋史研究者でもあるぼくも考えさせられました。
もちろん、ドラマや小説の展開にはヒーローが必要であり、その過程でその人物が偶像化されていき人々を魅了していく部分もありますが、同時に史実は史実として冷静に受けとめなくてはなりません。確かにそうでしょう。けれど
も、どう言われようとぼくにとって龍馬は、生きる勇気を与えてくれる「永遠のヒーロー」なのです!
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【2.第4回広島大学ホームカミングデー「世界とふれあう語学カフェ」リポート】
第4回広島大学祭ホームカミングデー文学研究科企画では、今年で5回目となる「世界とふれあい / 語学カフェ」を開催しました。今回は、ミャンマー、中国(重慶)、イタリアの留学生が、なかなか知ることの出来ないお国事情をパソコンを使いながら紹介しました。和やかな雰囲気につつまれた会場では、留学生の皆さんが用意して下さったお国で好まれているお菓子を食べながら話を聴き、小さな国際交流の場となった語学カフェでした。
また、同時に学生ロビーでは、3人の留学生が紹介するそれぞれの国の写真を展示したフォトギャラリーも開催しました。発表をしていただいた留学生のなかから、ふたりの感想を紹介します。
◇皮 冠一【中国/重慶】
重慶、積み木のように建物が積み上げられた町、真夏でも食べたくなる鍋料理のある町、天秤棒を担いだ「棒棒軍(バンバンジュン)」が大挙してお客を待ち構えている町、短いスカートを穿いた情熱的な女性のいる町。美しい町!
冒頭の文字は、私が故郷の重慶に対するイメージである。私は二年前に留学で広島にやってきて、現在広島大学文学研究科修士課程に所属している。来年の卒業に望んで、現在修士論文でバタバタ。最後の大学生活になるかもしれないが、「世界とふれあう語学カフェ」で、故郷を紹介する機会を頂きまして、非常に有意義で、本当に光栄の至りである。
私は19年間も重慶で暮らしてた。そこには私の色々な思い出がある。現在故郷と離れても、心の絆ような存在は変わらない。異郷にいて、嬉しいにつけ、苦しいにつけ、重慶の街、人、食べ物を思い出したら、困ったときに力になってくれる。郷土の重慶は私の力の源である。郷土を心にし、私はこれから広い世界を見る。動く世界を見る。色々な問題を考えていく。
◇CONTI SARA【イタリア】
語学カフェの担当者から「イタリアについて学園祭で話しませんか」という話を頂いたとき「私に頼んでいいのかな?」思ったことを覚えています。というのは、私は、幼少の頃から日本に住み、時々イタリアに帰国する休暇以外日本に住み、小学校・中学校・高校と教育は全て日本で受けてきた『ほぼ日本人』だったからです。
しかし、そんな私だからこそ、イタリアを違った視点で紹介できるのではないかと思い、参加することに決めました。ちょうど、夏休みに帰国したばかりだったので、新しい情報を伝えられる!!と意気込んで、自分の鈍ったイタリア感覚を取り戻すのに必死になりました。
発表では、写真をスライドで映して説明を加えるという形をとりましたが、前日にやっと完成させることができたので、説明原稿の作成に間に合わず、直前まで緊張しましたが、話し始めてからは、楽しいのと、嬉しいのとで時間はあっという間に過ぎました。故郷のや生活を伝える、このような機会が与えられたことにとても感謝しています。
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【3.文学研究科外国人留学生懇親会レポート】
10月28日(木)18時より毎年恒例の文学研究科外国人留学生懇親会を学士会館レセプションホールで開催しました。今回は、外国人留学生が65人、チューター2人、教職員21人、合計88人の参加がありました。新入生一人一人のユニークな挨拶や、留学生代表の、きろろ「未来へ」の熱唱がありました。また、豪華(?)景品(ハロウィーンにちなんだお菓子でした!!)がもらえるビンゴゲームで、会場は盛り上がりました。留学生も教職員も和気あいあいと楽しい時間を共有することができ、今回も盛況のうちに閉会しました。
当日、歌を披露してくださったユジョコウさん(寧波大学からの交換留学生)の感想を紹介します。
懇談会に参加するのは初めてです。中国にも懇談会があるが、日本のものとはちょっと違います。中国では、学長か部長かが学生たちを集めて、いろいろな質問をしたり、学生の意見を聞いたりするのを懇談会と言います。だから、初めて「懇談会」と聞いた時、知識が少ない私はただの話し合いと勘違いしました(笑)。ある日、掲示板で「歌とか出し物ができる留学生」を募集するというお知らせを見ました。歌が大好きな私は、何も考えずに応募しました。しかし、これが学生代表の唯一の出し物になるとは思いませんでした。
いよいよ懇談会の日が来ました。いま思うと本当に楽しい一晩でした。われわれ留学生がおいしい食べ物がいっぱい食べられただけではなく、いろいろな文学部の先生との交流もできました。ふだん顔を合わせることがない先生に会ったり、時々会ってもなかなか交流するチャンスがない先生に話したりすることができて、本当によかったと思います。私はそこでkiroroの「未来へ」という曲を歌いました。なぜこの曲を歌ったかというと、初めてこの曲を聞いた時、その歌詞にすごく感動し、その気持ちをぜひみんなと分かち合いたいと思ったからです。先生たちとみんなの拍手と笑顔をもらえて嬉しくてたまりませんでした。みんなに感謝をしたいです。その後は「ビンゴ」というゲームをやりました。いつも宝くじでは幸運に恵まれいない私が、意外にも運がよくて景品をもらいました。きっと先生たちとみんなからもらった力と好運のお陰だと思います(笑)。食べ物もいっぱい、交流もいっぱい、景品までもらった私は、本当に大満足でした。みんなにとってもきっと忘れられない一晩だろうと思います。
学士会館を出た時、寒い風が真正面から吹いてきました。しかし、寒いと思いませんでした。人との交流は心を暖めることができると思います。先生たちとみんなからもらったその温かさは寒い冬の風を打ち負かして、私の心をすごく暖かくしてくださいました。「未来へ」の歌詞を思い出しました。「ほら、足元を見てごらん、これがあなたの歩む道。ほら、前を見てごらん、あれがあなたの未来」です。日本に来てもう半年経ったが、振り返って見ると、とても楽しい出来事ばかりです。たくさん友達ができたり、いろんな体験ができ、本当にうれしいです。この懇談会は私の存在の証であり、私の留学生活の節目であると感じました。未来へ向かって、時間を無駄しないように頑張れば、きっと自分の夢への道が開けると私は信じています。だから、日本にいる残りの半年を大切にして、精一杯頑張りたいと思います。
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【4.リテラカフェ レポート 地表圏システム学教授 岡橋秀典】
『リテラカフェ 広島市内で開催』
本研究科主催の「リテラカフェ」が11月13日(土)に広島大学病院で開催されました。理学研究科は前々からサイエンスカフェを継続的に開いていますが、文学研究科のカフェはこれが初めて。私は大学病院にはこれまで行ったことがなかったので、正直不安でしたが、正面玄関に案内があり、一安心。ただ、会場の2階レストラン「みどり」までは少し距離があり、しかもくねくね廊下を曲がっていくので、また不安に。でも会場に入ると、コーヒー、紅茶、パンが用意されていて、何と無料。ふだん私が関係する総合博物館の講演会ではまったくそうしたサービスがないので、これは衝撃的なことでした。確かに、ポスターには、「コーヒーや紅茶を飲みながら、楽しい雰囲気で龍馬について語り合いましょう!」と書いてありましたが---。このサービスの効果は絶大で、会場は講演開始前から和やかな雰囲気に。事務の方々の周到な準備のお蔭でした。
まず、越智病院長、山内研究科長の挨拶の後、講演開始。講師は勝部真人教授。テーマは「21世紀の人文学」講座に続いて再び竜馬。「坂本龍馬はヒーローだったか?」という挑発的テーマがよかったのか、約60名の出席者で会場はほぼ満員でした。そのうち、入院患者25名、病院職員11名ということでしたので、ここで開かれた目的は十分達成されたように思います。講演は史実とドラマの違いを考えさせるようによく練られていて、大いに楽しめました。患者さんのためを考えられたのでしょう。講演が前半と後半に分かれていて途中休憩があるのも、なかなかよい工夫。病院でなくても、この形は一般の方相手の講演会にはベストフィットかもしれません。
参加者の感想のうち、印象に残ったものをいくつか。
・史実がよくわかって良かった。本当のことがわかった。
・アマリナイヨウガリカイデキナイ(←おそらく患者さんなのでしょう。体調のせいかと思われます。)
・講師の熱さが理解を助けたように思います。面白かった。
・小説・TVで感じていた違和感が少しとけかかったような気がしました。
・ドラマを見てファンになりましたが、結構本当の事と違う事がわかり、楽しむフィクションとして見ていこうと思います。
・お茶パン付で最高!!史実とフィクションの相違を意識する必要がある点まで気づかせ充実した楽しい時間であった。
・分かり易くて面白かったです。ヒーローへの仮託は危ないというまとめは面白かった。誰かかっこいい声の大きな人に頼りたいと思いがちなのではないかと思いました。今に通じる考えるべき大切な事だと思います。
以上のように、なかなか好評でした。熱弁をふるわれた勝部先生、ご苦労様でした。さて、講演会とは一味違ったリテラカフェ。「市内で度々やって下さい」という声をバックに今後も継続が望まれます。課題をあげれば、講演する研究者と一般聴衆を結びつけるサイエンスコミュニケーターならぬヒューマニティコミュニケーターでしょうか。自然系では、サイエンスコミュニケーターの進行によるカフェの試みが既になされていますが、人文系ではまだあまりなさそうです。ある意味、わが部局の使命の一つは人文学を広く社会に説明できる人材の養成にあるのでしょうから、大学院生にはぜひコミュニケーターを担当してもらいたいですね。文学研究科がチャレンジのする価値は十分あるように思います。いかがでしょうか。
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【5. 文学研究科(文学部)ニュース】
○第42回全日本学生フランス語弁論大会で優勝
去る11月13日に京都外国語大学で開催された第42回全日本学生フランス語弁論大会で文学部人文学科欧米文学語学・言語学コース3年の片岡彩子さんが優勝しました。
弁論タイトル は「田舎万歳(Vive la campagne!)」
優勝商品として、在日フランス大使・エールフランス賞(エールフランス航空提供のヨーロッパ往復航空券、並びにブルゴーニュ大学提供の国際夏期講座受講資格)が授与されました。今後の活躍を期待したいものです。
○リテラ スプリングコンサート2011 SPRING CONCERT-広島交響楽団木管五重奏-
【日時】平成23年3月21日(月・祝日)14:00開演(13:30開場)
【会場】広島大学サタケメモリアルホール(広島大学東広島キャンパス内)
【ステージ構成】
1部=二胡演奏家 竹内ふみのさん
2・3部=広島交響楽団木管五重奏
☆入場無料
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【6.広報・社会連携委員会より 衛藤吉則】
本委員会に所属して4年目になります。岡橋先生、河西先生、井内先生という3名の委員長のもと務めて参りました。お三方とも着想が豊かで、先日行われた「語学フェ」や「新入生へのお薦めの一冊」は岡橋先生のときに産声をあげ、「リテラ・ナイトーク」は河西先生、玄関ロビーでの「テーマ設定によるサテライト展示」「リテラ・カフェ」は井内先生の代から始められました。みな、どうやったら文学部・文学研究科のことを分かりやすく楽しく紹介できるか、という思いの中で生まれてきたように思います。
いまは、ひところの暑さも去り、清々しい秋を楽しむ催しが企画されています。教養としては、話題の「龍馬」をテーマにした公開講座(勝部先生と久保田先生)が開催され、大好評でした。大学祭では、チョー・チョー・ミェンさんと皮冠一さんとコンティ・サーラさんによる「語学カフェ」や、古瀬先生、竹広先生、野島先生を中心とする考古学分野のみなさんによる「鑪製鉄の実習」がおこなわれました。語学カフェでは留学生たちのお話も興味深く、退席する人はほぼなくつねに満席状態でしたし、お昼から夜中まで作業がつづいた製鉄実習は熱心な考古学ファンの子どもたちの心にきっと古代へのロマンを育んでくれたことでしょう。文学部のホームページに写真を掲載しますのでぜひご覧ください。
最後に、現在、文学部玄関ロビーでは「月」をテーマにした文学部の研究資材(『竹取物語』絵入り版本、唐詩画譜、Au Claire de la lune『月明かりで』、禅と月(仙厓書画))が解説とともに展示されています。どうか急ぐ足を止めて、少しだけ秋の月に思いをはせ、ながめていってください。井内委員長のもと、来年の秋のテーマは「酒」にしようといまから楽しみにしています。
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リテラ友の会・メールマガジン
オーナー:広島大学大学院文学研究科長 山内廣隆
編集長:広報・社会連携委員長 井内太郎
発行:広報・社会連携委員会
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