メールマガジン No.84(2018年3月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.84(2018年 3月号)2018/3/20

□□目次□□
1.文学研究科(文学部)退職教員あいさつ
2.「2018リテラコンサート広島交響楽団金管五重奏」を終えて
3.平成29年度優秀卒業論文発表会
4.広島大学短期交換留学(HUSA)プログラム参加報告
5.文学研究科(文学部)ニュース
6.広報・社会連携委員会より

1.文学研究科(文学部)退職教員あいさつ

【文学部・文学研究科へのエール】
地表圏システム学講座(地理学分野)教授 岡橋秀典

  この度、退職のごあいさつを書かせていただくにあたり、リテラ友の会・メールマガジンをホームページで改めて読み直してみました。当時発案した委員会の委員長であった私が言うのもおかしいのですが、2005年1月に始まったこのメルマガがここまで続いたことに深い感慨を覚えています。これまでご尽力いただいた広報・社会連携委員会の皆さんに心より御礼申し上げます。

  今日まで発刊した号数はこの3月で84号を数え、しかもサイトですべて閲覧できますので、結果的にユニークな我が文学部史になっているように思います。特に、「富士のふもとへ三島に逢いに」で始まった「今月のコラム」シリーズは、教員の研究への思いが垣間見えて貴重でした。最近掲載が滞っているのは残念ですが、ぜひ続けていただきたいと思います。

  このメルマガ36号に「岡先生を偲んで−岡さんが我々に遺してくれたもの」という拙文を掲載しています。このメルマガの発案者が岡元司准教授(2009年逝去)だったからですが、「広島大学はもっと社会へ、もっと広島市へ、そして、もっと世界レベルの研究を!」、これが、岡さんの遺志であったと私が勝手に解釈して書いたのですが、これらのことの重要性は今も変わっていないと思っています。大学改革に右往左往することなく、本学部(研究科)がこれからも「挑戦する・行動する」自律的な組織であってほしいと願っています。

  長い間、お世話になりました。これまで支えていただいた皆様に心より感謝申し上げます。文学部の裏庭にはりんごの木があります。あの白い花、たわわに実った果実が好きでした。時々りんごの木に再会したいと思っています。「どうかお元気で。またお会いいたしましょう。」

 

岡橋教授の最終講義の様子(2月13日)

【文学研究科の昔と今と】
応用哲学・古典学講座(倫理学分野)教授 松井 富美男

  これまで多くの先生方をお見送りし、いよいよ私の番となりました。赤穂義士や死刑囚も似たり寄ったりの心境だったのでしょうか。広島大学での在職期間は22年。あっという間でした。赴任当初キャンパスは未整備で、野犬も出没する有り様。下見界隈も閑散として、会食するのにも一苦労でした。その後ハード面が整備され、ずいぶんと賑やかになりました。
この間、文学部内でもいろいろな出来事がありました。なかでも文学部の「夜明け前」と称される、大学院改組をめぐる昼夜を徹した会議は印象的です。今思えば、その方向性が妥当であったかどうかは疑問ですが、少なくとも意思決定主体が文学部にあったことだけは確かです。今日そうした伝統が廃れつつあるのは残念です。

  前大学の理事長から、教員の議論は「正論であるが、理屈だ!」と公然と一喝された覚えがあります。この文学部は私にとって教育研究に恵まれた場所でした。その喜びは何にもかえがたく、今でもありがたかったと思っております。こちらに移って、カント倫理学や生命倫理の研究を深化させると共に、時代のニーズに応じて、対話哲学や老い研究などにも着手することができました。これらの研究はどれも道半ばですが、今後も可能な限り継続していきたいと考えています。

  加えて、いつ頃からか文学研究科に多くの外国人留学生が在籍するようになりました。研究科はかろうじて「大学院大学」の体裁を保っているものの、その受け皿は脆弱なままです。今後もこの方向で生き延びていくのであれば、彼らが学業を修めて帰国したときに社会的にどう評価されるかが重要です。そのためにはカリキュラム改編を含めた改革も必要でしょう。この期に及んで述べることではないのですが、年来の一関係者として気になっております。

  最後になりましたが、文学部教職員の皆様方、今日まで長い間お世話になりました。

松井教授の最終講義の様子(2月17日)

2.「2018リテラコンサート広島交響楽団金管五重奏」を終えて【日本・中国文学講座准教授 川島優子】

  2月4日、小雪が舞い散る立春の日曜日、サタケメモリアルホールにて「2018リテラコンサート」が開催されました。今回は、「子どもから大人まで楽しめる」をコンセプトに、第一部は地元東広島の「次郎丸太鼓」による演奏、第二、三部は「広島交響楽団」による金管五重奏が繰り広げられました。和太鼓の力強い響き、金管の優しく切ない音色、日常の慌ただしさを忘れさせてもらえる二時間となりました。「新旧ドラえもんメドレー」やアンコール曲の「それ行けカープ」など、皆さんにも大いに楽しんでいただけたようです。ロビーに子ども用の休憩スペースを設けたことも、お母さん方に喜ばれました。また、中田彩香さん(文学部三年生)の司会ぶりも、司会初挑戦とは思えないほど落ち着いており、たいへん好評でした。

  しかし課題も見えてきました。今回は280名ほどの方に来場いただきましたが、残念ながら少し空席が目立ちました。アンケートでも、「リテラコンサートの存在を初めて知った。もっと皆に知ってもらいたい」「すばらしい内容だったのに、入場者が少なくて残念」といった声が見られました。広報活動にも力を入れたつもりではありましたが、ポスター掲示による従来型の広報はもちろんのこと、様々な発信の手段を再度検討する必要があるのかもしれません。

  リテラコンサート自体の在り方についても議論がなされるところです。構成員のレクリエーションの一環として2005年に始まり、今回で十一回目を迎えたこのコンサートも、当初とは目的や対象が大きく変わりました。「幅広い年齢層が気軽に素晴らしい演奏を楽しめるのはたいへん貴重な機会」「子どもに本物とふれあう機会をいただけた」との声も多く、時代の流れや予算の関係上難しいところはあるかもしれませんが、個人的には、文学研究科がこのような企画を続ける意味は大いにあるのではないかと感じています。

  コンサートの模様については、文学部のHPにも掲載されております。

2018リテラコンサート広島交響楽団金管五重奏

第1部 次郎丸太鼓の皆さん

2018リテラコンサート広島交響楽団金管五重奏

第2・3部 広島交響楽団金管五重奏

3.平成29年度優秀卒業論文発表会

  2月16日(金)文学部B251講義室におきまして、「平成29年度優秀卒業論文発表会」が開催されました。今回のメールマガジンでは、その中から1人の卒業論文の要旨を紹介いたします。また、指導教員からもコメントをいただき、あわせて掲載いたします。

“The Path to Salvation:Religiosity in the Lyrics of Bob Dylan”
欧米文学語学・言語学コース 英米文学語学専攻 山崎 航
  本論文はアメリカのミュージシャン ボブ・ディランの歌詞に見られる宗教性について論じたものである。三浦久の先行研究によると、ユダヤ人として生まれ育ち、戦後やキューバ危機を生きてきたことから、1988年までディランの作品の原動力となっていたものは死に対する恐怖であった。ディランは自己と神が同一であるというような神秘主義的体験や自然の中に神を感じるというような汎神論的感覚を経験することによって死後魂はその出処である神と結びつくという境地に達し、恐怖を克服した。

  1989年以降の作品では、女性関係を解決することができないという現世における苦しみとそこからの救済というプロットが現れる。この時期の作品の中で、ディランは神と恋人である女性を同一視するという表現方法を用いている。つまり、ディランの作品において女性は聖書における神のような役割を一部担っており、その女性(神)への愛についてディランは告白している。過去のハシードなどの作品や言説にも人間と神との関係を魂と神の恋愛関係というメタファーで捉えるという類似表現が見つかることから、ディランはこうした表現を意図的にとっていると思われる。またその理由として箴言の「主は愛する者をしかる」という言葉にあるように、ディランは女性関係による苦しみを神からの愛の折檻として解釈を変えることによって苦しみ自体から逃れようとしているのではないかと考える。

[指導教員コメント 吉中孝志教授]
  山崎君は、2年生になって英米文学を専門に学び始める時には既にボブ・ディランについて卒業論文を書くんだ、と決めていたようです。まだディランがノーベル文学賞を受賞するかなり前のことです。
  昨今の多くの学生さんたちが、単位のために、卒業のために、論文を書くのとはわけが違いました。まさに文学研究の原点、好きだからもっと知りたい、もっと勉強したいという気持ちが溢れる製作過程と、成果になったと思います。もちろん、最終的に単一の、しかも日本人の研究者の先行研究に頼りすぎてしまったという大きな課題は残りましたが、ディランの思想の神秘主義的な側面の考察や神と女性とが一体化したような人称の使い方を指摘したテクストの分析などは優れた議論になりました。

平成29年度優秀卒業論文発表会 山崎 航

発表する山崎航さん

平成29年度優秀卒業論文発表会

平成29年度優秀卒業論文発表会を終え、

久保田研究科長と指導教員の先生方といっしょに記念撮影

4.広島大学短期交換留学(HUSA)プログラム参加報告【欧米文学語学・言語学コース(英米文学語学専攻3年) 古木大志】

  私は2017年9月から2018年2月までの間、広島大学短期交換留学(HUSA)プログラムでイギリスのシェフィールド大学に1学期間留学しました。今回はその留学を終えての成果、心境について書きたいと思います。

  現地では文学、メディア、英語などに関する授業を受講し、様々な知識を得ることができました。授業の中ではディスカッションやグループワーク、プレゼンテーション、エッセイなど様々な授業体系を経験し、それぞれの能力を高めることができました。また、授業内で自分と違ったバックグラウンドを持つ学生たちと意見を交わしたりする中で、様々な角度からの見方やそれぞれの国の文化についても知識を深めることができました。授業以外のところでも、サークル活動や大学主催のイベントが豊富にあり、それらに参加するなどして、たくさんの経験ができました。授業、課外活動の全てにおいて現地学生やほかの留学生との交流もとても貴重な経験で、多くのことを学ぶことができました。留学期間中、すべてが順調にいくことばかりではなく、もちろん大変なことやうまくいかないこともありました。しかし、そのたびに自分の弱点や改善方法を見直し、課題と向き合ったことで得たものは大きかったと実感しています。

  今回の留学で得たものはこれからの勉学と、さらに卒業後のキャリアの中で生かしていきたいと思います。四月からは広島大学の留学アドバイザーとしても活動することになっているので、留学を検討している学生たちをしっかりとサポートしていきたいと思っています。

※2017年9月27日発信のメルマガ81号には留学する前の古木さんの心境を「広島大学短期交換留学(HUSA)プログラムに参加するにあたって思うこと」と題して掲載しています。こちらもご覧ください。

広島大学短期交換留学(HUSA)プログラムに参加報告
広島大学短期交換留学(HUSA)プログラムに参加報告

5.文学研究科(文学部)ニュース

○平成30年度広島大学入学式

日時:2018年4月3日(火)11時 開式
場所:東広島運動公園体育館(アクアパーク)

6.広報・社会連携委員会より【広報・社会連携委員会委員長 高永茂】

  3月号には毎年退職なさる先生方の挨拶が掲載されます。その記事を読みながら、「そうでしたね」とつぶやいてしまうことがあります。退職なさる先生方には感謝を申し上げるとともに、これからのさらなるご活躍をお祈りします。今月号には優秀卒業論文発表会と交換留学プログラムの記事もあります。こちらの記事からは若者の息吹のようなものが感じられます。「前途洋々」ということばがぴったりだと思います。忙しい仕事のあいまに開かれたリテラコンサートも忘れられません。太鼓の迫力と繊細な金管五重奏のパフォーマンスは強く心に残っています。

  私は広報・社会連携委員会の委員長を2年間務めてきました。この3月で任期が終わりますので、私自身は委員会から離れることになります。広報・社会連携委員会では広島大学文学部と文学研究科の諸行事や学生の皆さんの活動を広島大学の内外に発信してきました。新年度から新しい体制になりますが、今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  久保田 啓一
編集長:広報・社会連携委員長  高永 茂
発行:広報・社会連携委員会

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広島大学大学院文学研究科 情報企画室
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