平成27年度(2015-2016)

※課題名の前の★は,本年度から新規に採択された研究です。

総合人間学講座

戦後東北史の基礎的研究―〈東北〉論の検討を中心に―
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:河西 英通 教授
東北=〈後進地〉という表象・言説が戦後日本社会において再創造された戦後的物語であることを、東北各地の〈東北〉論の検討を中心に、歴史学研究の動向もふまえながら明らかにし、日本史像総体の脱構築をめざす。

3Dカメラを活用した医療コミュニケーションの記述的研究とその応用
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:高永 茂 教授
研修歯科医と熟練した歯科医師が行う医療面接場面をセンサー(3Dカメラ)で記録し、その映像を分析して比較検討する。さらに、得られた成果を医学教育の現場に還元する。

「少女小説」の受容とコロニアリズムの関係をめぐる日露比較研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:溝渕 園子 准教授
本研究は、近代の日本及びロシアにおいて、「少女小説」という一ジャンルの形成をめぐる様々な欲望が、歴史的・政治的文脈とどのように関わっているのかについて、ジェンダーや翻訳文化、植民地主義の観点から比較文学的に考察するものである。

応用哲学・古典学講座

★「平和」理論の構築―「和解」概念に着目した応用倫理学的アプローチ
■種目:基盤研究(B)
■研究代表者:越智 貢 教授
本研究の目的は、平和実現のための実践的で総合的な理論モデルを提示することにある。そのために平和を現実的な生活の中の「和解」の問題として捉え直し、不和と和解のプロセスおよびそれらの関係を分析しつつ、「和解」としての「平和」の実相に迫る。

★古代中国における呪術系医療文化の基礎的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:有馬 卓也 教授
古代中国における呪術系医療の実態を明らかにしようとする研究。当時、巫医たちが病状からどのような病因を想定したのか、そして治癒あるいは予防のためにどのような医療行為を実践したのか。『淮南萬畢術』を手掛かりに考える。

東アジア近世儒学思想における評価基準としての「二程子」像の総合的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:市來 津由彦 教授
中国北宋における程顥、程頤とその思想の事実究明の密度を高め、南宋・元・明の思想家が思想評価基準として用いる「二程子」像を客観化し、東アジア近世儒学思想の連動様態を思想の理念面から客観的に評価する指標を構築する。

バルトリハリ言語哲学の原像と虚像―『ヴリッティ』と『ティーカー』の比較研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:小川 英世 教授
本研究の目的は、インド哲学諸派の体系化の最初期にあって諸思想家に多大なる影響を与えたバルトリハリの言語哲学の原像と後代の注釈書に基づく理解が示すその虚像との差異の実相を明らかにし、バルトリハリ研究の新たな地平を開拓することである。

善と美の関係再構築に向けて―マルティン・ゼールにおけるよき生の倫理学を手掛かりに
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:後藤 弘志 教授
善にして美という古典的理想はストア・キリスト教的禁欲主義を経てカントにおいて解体する。本研究は1980年代以降の〈よき生〉の倫理学復権の流れの上に、フランクフルト学派第三世代のM. ゼールによる善と美の関係再構築の試みを位置づける。

シュタイナー教育の今日的意義―能力概念に基づく国際調査
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:衞藤 吉則 准教授
本研究は、閉塞する学校教育の「救い主」として世界的な注目を集めるシュタイナー教育について、その今日的意義を、「能力」概念に着目し、グローバルな調査(オーストラリア、フィリピン、中国、日本)を通して理論・実践の両面から論証することをめざす。

礼学形成資料としての両戴記の基礎的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:末永 髙康 准教授
両戴記中で礼の義を解説した諸篇については、これまでほとんど思想史的な研究が行われてこなかった。本研究では、近年の新出土文字資料の知見に基づいて、これらの諸篇の成立や思想について基礎的な考察を加えていく。

ツォンカパを中心とするチベットの仏教と美文詩に関する総合的研究
■種目:研究活動スタート支援
■研究代表者:根本 裕史 准教授
本研究の目的はツォンカパの仏陀観、菩薩思想、彼の詩作品の文体、並びに14〜15世紀のチベット美文詩の形成について包括的に考察し、当時のチベットにおける仏教思想と詩的世界の融合の過程を解明することである。

★性善説の誕生―先秦儒家思想史の一断面―
■種目:学術図書
■研究代表者:末永 髙康 准教授
本書は、郭店楚簡・上博楚簡等の新出土資料の知見に基づいて、子思、孟子間の思想史を再構成したものである。本書においては、孟子による子思思想の選択的受容の姿と、孟子性善説の誕生の過程が詳細に描き出されている。

歴史文化学講座

再考・清化(タインホア)集団
■種目:基盤研究(B)
■研究代表者:八尾 隆生 教授
ヴェトナム黎朝時代史研究に現地史料散佚の危機が迫っている現実に鑑み、黎朝発祥の地清化(タインホア)にて現地史料調査を行い、黎朝成立に貢献した「清化集団」につき、集団概念の精緻化、集団形成過程の復元、史料保存事業への貢献を目的とした研究を行う。

産業組合におけるムラ社会の基盤と断層―東アジアにおける個と組織の視点から―
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:勝部 眞人 教授
明治~昭和前期に、農家経済の組織化を狙って設置されていった産業組合(現在のJAの源流)。その成功要因はムラが自治能力を持っていたためとされるが、現実には逆にムラが危険をもたらす側面もあった。中国・韓国社会と比較しながら、発展類型の鍵を解く。

戦後内戦期から人民共和国に至る<国家―社会>関係の転形と再構築
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:金子 肇 教授
中国における戦後内戦期から人民共和国成立初期に至る時期(1945~55年)を対象として、国家権力の社会への浸透如何、国家による社会の制度的組織化如何という視点から、国家・社会関係の変容を都市・農村の実態に即して描き出す。

平安時代中後期の交通システム
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:西別府 元日 教授
奈良時代から平安時代初期にかけて日本の交通制度として機能していた駅伝制が、平安時代中期以降に衰退して中世社会の交通体系が成立する過程を、駅家の変質と宿の成立を中心に、国司(受領)の交通機能掌握の視点から検討する。

中世盛期スペイン東部における「辺境」と入植運動の空間編成論的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:足立 孝 准教授
本研究は、ヨーロッパの「辺境」とみなされてきたイベリア半島のなかでもとくにその東部、下アラゴン地方における征服・入植運動の諸相と新たな空間編成の生成過程を具体的かつ実証的に検討するものである。

近代東アジア漁業と帝国日本
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:太田 出 准教授
本研究課題は、近代東アジア漁業という視点から、海外への遠洋漁業、漁業移民を積極的に押し進めてきた帝国日本と、受容するないし対抗する側の中国大陸や 朝鮮半島との関係を、歴史学的に考察することで、東アジア漁業史・政治史・外交史に新たな一石を投じようとするものである。

古代ギリシア・ローマ世界における呪詛板の研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:前野 弘志 准教授
この研究の主要な目的は2点ある。1つは、呪詛版に刻まれた呪文および記号の意味と起源を明らかにすること、もう1つは、この分野における概説的な本を出版することである。この計画により、諸宗教間における諸関係の概要が描かれ、エリートと民衆の間の宗教実践の差異性が示されるだろう。

★中国近世の罪と罰―犯罪・警察・監獄の社会史―
■種目:学術図書
■研究代表者:太田 出 准教授
人口爆発、商品経済化、人とモノの移動の激化に伴って急増した犯罪は清代中国を如何に変化させていったのか。犯罪、警察、監獄の実態の解明から中国近世社会のあり方を照射する。また治安維持システムの展開を世界史の中に位置づける試みをも行っている。

日本・中国文学語学講座

広島の女性作家・岡田(永代)美知代に関する基礎的および総合的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:有元 伸子 教授
広島県上下町出身の女性作家・岡田(永代)美知代(1885-1968)について、著作リストや年譜などの基礎データを整備し、著作の公開をはかるとともに、田山花袋「蒲団」のモデルとしてのフィルターを排した総合的な評価を目指す。

言語実験の場としての六朝楽府に関する研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:小川 恒男 教授
この研究は、中国古典詩研究を詩的言語というレベルから再構築するという立場から六朝詩、取り分け六朝楽府を対象とし、新たな言語表現が生み出されるメカニズムを具体的な「場」に即して究明することを目的とする。

成島家を中心とする近世中後期幕臣文化圏の研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:久保田 啓一 教授
18世紀から19世紀前半にかけての武士の文学活動の中心に幕臣と譜代大名が位置していたとの見通しのもと、徳川吉宗時代に幕臣文化圏の中枢にあった成島信遍以降、和鼎・勝雄・司直・良譲そして柳北に至る成島家歴代もまた、それぞれの生きた時代の中で幕臣文化の体現者であったことに鑑み、彼らを柱に据えた立体的かつ総合的な文学史を構築する。

訓点語彙の意味論的研究―文脈付き訓点語彙コーパスの作成―
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:松本 光隆 教授
訓点語彙は、訓点語彙集成の出版により単語の存在は確認できるが、文脈付きでないために意味論的研究には利用しづらい。本研究は、NET上に訓点語彙の文脈付きコーパスを公開し意味論的研究を行う。

『金瓶梅』の服飾描写からみる中国近代小説の誕生と展開に関する研究
■種目:若手研究(B)
■研究代表者:川島 優子 准教授
明の終わり(十七世紀)に誕生した長編の白話小説『金瓶梅』は、詳細な描写を最大の特徴とする。本研究は、『金瓶梅』における服飾描写に着目し、服飾描写が人間を描出するひとつの手段として用いられていることを明らかにすることで、中国文学における近代小説の誕生、発展の過程を明らかにしようとするものである。

1960年代のテレビ文化黎明期におけるテレビドラマ制作と〈文学〉
■種目:若手研究(B)
■研究代表者:瀬崎 圭二 准教授
1960年代のテレビ文化黎明期において、文学者がテレビという新しいメディアをどのように捉え、そこにどのような可能性と限界を見ていたのかという点について、テレビドラマの表現を中心に考察する。

欧米文学語学・言語学講座

TEIと文献学を融合したシェイクスピア・ジョンソン・ディケンズの作品のデジタル化
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:今林 修 教授
本研究の目的は、TEI(Text Encoding Initiative)のガイドラインに沿って、今日までの文献学で培われて学際的蓄積を加味しながら、英文学における電子テクストの学術決定版(Digital Definitive Scholarly Texts of English Literature)を作成することである。

★コンピュータによる『カンタベリー物語』諸写本と印刷本の計量的比較
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:地村 彰之 教授
ジェフリー・チョーサー『カンタベリー物語』のヘングウルト写本・エルズミア写本とキャクストン版(c1476; c1482)、ピンソン版(1492)、ウィンキン・ドゥ・ウォード版(1498)などの刊本の言語について、語彙・統語・文体の視点から総合的に研究する。

★アメリカ文学における平和への戦略―第二次世界大戦がもたらした文学的影響
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:新田 玲子 教授
第二次大戦後の作家のなかには、戦争の愚かさを強調するだけでなく、戦争について書くこと自体に戦争の危険が内在していることを意識した者が少なくない。本課題はそうした作家たちの平和への戦略を分析する。

アンドリュー・マーヴェル研究―人間関係と表現技術―
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:吉中 孝志 教授
英国詩人 Andrew Marvell (1621-78) の交友関係と敵対関係を相関図として纏め、彼の人脈がどのようにテクストに影響を与え、またテクストがどのように人間関係を形成する働きをしていたかを明らかにする。

地表圏システム学講座

現代インドの経済空間構造とその形成メカニズム
■種目:基盤研究(A)
■研究代表者:友澤 和夫 教授
本研究は、近年急速な経済発展をみせるインドを対象に、主要産業の空間構造を解明することを第1の目的とする。次いで、大都市の郊外を対象に、ローカルスケールでの社会構造やポリティックスの変化を把握する(第2の目的)。第3には、資源開発やインフラ整備といった国土空間の開発や利用を解明する。以上を通じて、現代インドの経済空間構造とその形成ダイナミズムを提示することを本研究の最終目的としている。

原産地遺跡と利用遺跡からみた隠岐産黒曜石の採取・採掘活動、物流の通史的研究
■種目:基盤研究(B)
■研究代表者:竹広 文明 教授
本研究は、隠岐産黒曜石をめぐって、隠岐の辿った環境変化を背景とする要因も視野におき、原産地での採取・採掘活動、本土側への物流の出現、形成過程とその後の展開について、復元することを主目的とする。

弥生時代鍛造鉄器の生産と流通に関する考古学的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:野島 永 教授
弥生時代の鍛冶遺構の情報収集をする。製作実験を行い、鍛冶技術レベルを類型化する。その上で、鉄器生産を中心として玉生産・水銀朱生産など、他手工業生産との複合・集約化の様相を具体的に示し、手工業の集約化が首長権力の経済基盤の形成に関わっていく様相を概観していく。

★スマトラ・マレー半島におけるシュリーヴィジャヤの美術史学的調査研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:伊藤 奈保子 准教授
7~12世紀頃、マラッカ海峡を中心に東西貿易で栄えたとされるシュリーヴィジャヤは、その勢力範囲や都、また宗教形態等について未だ明確にされていない。本研究はスマトラ地域マラユに焦点を当て、美術史の視点からその一解明を試みる。

数値標高モデルから作成されるステレオ画像の変動地形研究への適用
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:後藤 秀昭 准教授
本研究は、詳細な数値標高モデル(DEM)から作成される実体視可能なステレオ画像を変動地形研究で本格的に利用するとともに、それを用いた研究の展開を図ることを目的とする。


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