平成28年度(2016-2017)

※課題名の前の★は,本年度から新規に採択された研究です。

総合人間学講座

★社共合同運動の基礎的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:河西 英通 教授
戦後合法化した日本共産党は、東欧の人民民主主義・人民戦線・社共合同の動きを参考にしつつ、日本社会党内の分裂状況を踏まえて、1948年から49年にかけて、社会党員の包摂を図る。本研究はこの社共合同運動の全国的展開を明らかにする。

3Dカメラを活用した医療コミュニケーションの記述的研究とその応用
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:高永 茂 教授
研修歯科医と熟練した歯科医師が行う医療面接場面をセンサー(3Dカメラ)で記録し、その映像を分析して比較検討する。さらに、得られた成果を医学教育の現場に還元する。

「少女小説」の受容とコロニアリズムの関係をめぐる日露比較研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:溝渕 園子 准教授
本研究は、近代の日本及びロシアにおいて、「少女小説」という一ジャンルの形成をめぐる様々な欲望が、歴史的・政治的文脈とどのように関わっているのかについて、ジェンダーや翻訳文化、植民地主義の観点から比較文学的に考察するものである。

応用哲学・古典学講座

「平和」理論の構築―「和解」概念に着目した応用倫理学的アプローチ
■種目:基盤研究(B)
■研究代表者:越智 貢 教授
本研究の目的は、平和実現のための実践的で総合的な理論モデルを提示することにある。そのために平和を現実的な生活の中の「和解」の問題として捉え直し、不和と和解のプロセスおよびそれらの関係を分析しつつ、「和解」としての「平和」の実相に迫る。

古代中国における呪術系医療文化の基礎的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:有馬 卓也 教授
古代中国における呪術系医療の実態を明らかにしようとする研究。当時、巫医たちが病状からどのような病因を想定したのか、そして治癒あるいは予防のためにどのような医療行為を実践したのか。『淮南萬畢術』を手掛かりに考える。

東アジア近世儒学思想における評価基準としての「二程子」像の総合的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:市來 津由彦 教授
中国北宋における程顥、程頤とその思想の事実究明の密度を高め、南宋・元・明の思想家が思想評価基準として用いる「二程子」像を客観化し、東アジア近世儒学思想の連動様態を思想の理念面から客観的に評価する指標を構築する。

★パーニニ文法学の視座からのディグナーガ言語理論アポーハ論原像の再構築
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:小川 英世 教授
本研究の目的は、ディグナーガの仏教言語理論「アポーハ論」が、パーニニ文法学の言語活動の言語理論に立脚して構想されたものであることを明らかにし、同論が「異現(仮現)」に比定し得る「戯論」のディグナーガ的理論化であることを立証することである。

シュタイナー教育の今日的意義―能力概念に基づく国際調査
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:衞藤 吉則 准教授
本研究は、閉塞する学校教育の「救い主」として世界的な注目を集めるシュタイナー教育について、その今日的意義を、「能力」概念に着目し、グローバルな調査(オーストラリア、フィリピン、中国、日本)を通して理論・実践の両面から論証することをめざす。

礼学形成資料としての両戴記の基礎的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:末永 髙康 准教授
両戴記中で礼の義を解説した諸篇については、これまでほとんど思想史的な研究が行われてこなかった。本研究では、近年の新出土文字資料の知見に基づいて、これらの諸篇の成立や思想について基礎的な考察を加えていく。

★チベットの中観思想と文学の総合的研究
■種目:若手研究(B)
■研究代表者:根本 裕史 准教授
本研究はチベット仏教ゲルク派の創始者ツォンカパ・ロサンタクパ(1357–1419)以降に成立した詩作品・宗教歌を分析し、中観思想と文学の融合、並びに宗派意識の形成という問題に着目して、チベット文化史の一側面を明らかにするものである。

歴史文化学講座

再考・清化(タインホア)集団
■種目:基盤研究(B)
■研究代表者:八尾 隆生 教授
ヴェトナム黎朝時代史研究に現地史料散佚の危機が迫っている現実に鑑み、黎朝発祥の地清化(タインホア)にて現地史料調査を行い、黎朝成立に貢献した「清化集団」につき、集団概念の精緻化、集団形成過程の復元、史料保存事業への貢献を目的とした研究を行う。

★近現代中国における国家、税政と同業団体
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:金子 肇 教授
近現代中国の歴代政府が展開した都市商工業税政と同業団体(会館・公所、工商同業公会)との関係を系統的に描き出す。対象とする都市は、19世紀の開港以来多くの同業団体が叢生・発展した上海、対象とする時期は20世紀初頭の清朝末期から社会主義化の下で同業団体が消滅する1950年代までとする。

古代ギリシア・ローマ世界における呪詛板の研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:前野 弘志 教授
この研究の主要な目的は2点ある。1つは、呪詛版に刻まれた呪文および記号の意味と起源を明らかにすること、もう1つは、この分野における概説的な本を出版することである。この計画により、諸宗教間における諸関係の概要が描かれ、エリートと民衆の間の宗教実践の差異性が示されるだろう。

中世盛期スペイン東部における「辺境」と入植運動の空間編成論的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:足立 孝 准教授
本研究は、ヨーロッパの「辺境」とみなされてきたイベリア半島のなかでもとくにその東部、下アラゴン地方における征服・入植運動の諸相と新たな空間編成の生成過程を具体的かつ実証的に検討するものである。

日本・中国文学語学講座

広島の女性作家・岡田(永代)美知代に関する基礎的および総合的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:有元 伸子 教授
広島県上下町出身の女性作家・岡田(永代)美知代(1885-1968)について、著作リストや年譜などの基礎データを整備し、著作の公開をはかるとともに、田山花袋「蒲団」のモデルとしてのフィルターを排した総合的な評価を目指す。

言語実験の場としての六朝楽府に関する研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:小川 恒男 教授
この研究は、中国古典詩研究を詩的言語というレベルから再構築するという立場から六朝詩、取り分け六朝楽府を対象とし、新たな言語表現が生み出されるメカニズムを具体的な「場」に即して究明することを目的とする。

成島家を中心とする近世中後期幕臣文化圏の研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:久保田 啓一 教授
18世紀から19世紀前半にかけての武士の文学活動の中心に幕臣と譜代大名が位置していたとの見通しのもと、徳川吉宗時代に幕臣文化圏の中枢にあった成島信遍以降、和鼎・勝雄・司直・良譲そして柳北に至る成島家歴代もまた、それぞれの生きた時代の中で幕臣文化の体現者であったことに鑑み、彼らを柱に据えた立体的かつ総合的な文学史を構築する。

★岩国市に伝存する和漢古典籍の総合的調査研究―分類総合目録の作成に向けて―
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:妹尾 好信 教授
山口県岩国市には、吉川家伝来の図書類を始め大量の古典籍資料が現存している。本研究は、吉川史料館・岩国徴古館・岩国市中央図書館・岩国市学校教育資料館などに所蔵されている古典籍資料を悉皆調査し、書誌情報をデータベース化して、分類総合目録の作成をめざすものである。

訓点語彙の意味論的研究―文脈付き訓点語彙コーパスの作成―
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:松本 光隆 教授
訓点語彙は、訓点語彙集成の出版により単語の存在は確認できるが、文脈付きでないために意味論的研究には利用しづらい。本研究は、NET上に訓点語彙の文脈付きコーパスを公開し意味論的研究を行う。

★「粗悪本」を中心とした中国通俗小説の出版および受容に関する研究
■種目:若手研究(B)
■研究代表者:川島 優子 准教授
本研究では、これまでほとんど顧みられることのなかった「粗悪本」に目を向けることにより、日本における中国通俗小説あるいは漢籍そのものの受容について、また中国通俗小説の出版問題について考える。

欧米文学語学・言語学講座

TEIによる次世代英文学アーカイブの構築
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:今林 修 教授
TEIのガイドラインに沿って、英文学における電子テクストの学術決定版を、今日までの文献学で培われた学際的蓄積を加味しながら、通時的に偏ることなく作成し、大規模な英文学アーカイブの構築の礎を築くことを目的とする。

アメリカ文学における平和への戦略―第二次世界大戦がもたらした文学的影響
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:新田 玲子 教授
第二次大戦後の作家のなかには、戦争の愚かさを強調するだけでなく、戦争について書くこと自体に戦争の危険が内在していることを意識した者が少なくない。本課題はそうした作家たちの平和への戦略を分析する。

★自己保存と自己実現の修辞―アンドリュー・マーヴェルの敵と友
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:吉中 孝志 教授
17世紀英国の政治、宗教的な激動の時代の中枢に生きたマーヴェルの交友関係と敵対関係がどのようにテクストに影響を与え、またテクストがどのように人間関係を形成する働きをしていたかを明らかにする。

★現代ドイツ語の書き言葉における現在完了形の使用実態に関する計量的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:今道 晴彦 准教授
本研究は、現代ドイツ語の書き言葉コーパスを利用して、計量的観点から現在完了形の使用実態を検討することで、中級レベル以上のドイツ語学習者の読み書きに資するための教育的知見を得ることを目指すものである。

地表圏システム学講座

現代インドの経済空間構造とその形成メカニズム
■種目:基盤研究(A)
■研究代表者:友澤 和夫 教授
本研究は、近年急速な経済発展をみせるインドを対象に、主要産業の空間構造を解明することを第1の目的とする。次いで、大都市の郊外を対象に、ローカルスケールでの社会構造やポリティックスの変化を把握する(第2の目的)。第3には、資源開発やインフラ整備といった国土空間の開発や利用を解明する。以上を通じて、現代インドの経済空間構造とその形成ダイナミズムを提示することを本研究の最終目的としている。

弥生時代鍛造鉄器の生産と流通に関する考古学的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:野島 永 教授
弥生時代の鍛冶遺構の情報収集をする。製作実験を行い、鍛冶技術レベルを類型化する。その上で、鉄器生産を中心として玉生産・水銀朱生産など、他手工業生産との複合・集約化の様相を具体的に示し、手工業の集約化が首長権力の経済基盤の形成に関わっていく様相を概観していく。

スマトラ・マレー半島におけるシュリーヴィジャヤの美術史学的調査研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:伊藤 奈保子 准教授
7~12世紀頃、マラッカ海峡を中心に東西貿易で栄えたとされるシュリーヴィジャヤは、その勢力範囲や都、また宗教形態等について未だ明確にされていない。本研究はスマトラ地域マラユに焦点を当て、美術史の視点からその一解明を試みる。

★陸海を統合した詳細ステレオ画像による南西諸島とその周辺海域の変動地形学的研究
■種目:基盤研究(C)
■研究代表者:後藤 秀昭 准教授
本研究は、海底と陸上の詳細な地形データを用いて海陸を統合したステレオ画像を作成し、変動地形を読み解くことを通して、南西諸島沿岸域の地殻変動様式を検討することを目的としている。


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