【IR報告】授業内容の意義や必要性の説明が学生の学びの実感を高めるうえで特に重要という示唆

 本研究センターのIR報告の一環として、「全国学生調査」の成果を活用し、我が大学の教育活動の現状を把握してまいりました(参照:工夫された教育活動の一方、教室外学習のためのコミュニケーション不足か?国際性に本学の教育的個性が)。今回も「全国学生調査」の成果を活用し、どのような授業経験をしている学生が、どのような学びの実感を持っているのかを分析し、その結果を報告いたします。この結果から、学生にどのような授業経験を提供することで、学びの実感を高められる可能性があるという示唆を得ることができます(ページ下部【資料】参照)。
 本報告は第2回(2021年度)と第3回(2022年度)の施行調査の2回に使用された類似項目を抽出し、分析の結果をまとめたものです。なお、本報告は相関分析を通じて得られたもので、相関とは、2つの要素がどの程度同じような動きをするか、つまり要素間の関係性を明らかにする手法です(「1」は一方が増えればもう一方も増えるという関係が強いことを示し、「-1」は一方が増えればもう一方は減るという関係が強いことを示す。「1」から「-1」の値を取る)。ただし、「相関がある」からといって、直接的な原因と結果の関係を証明するわけではないことを理解しておく必要があります。

 第2回、第3回の結果を見ると、授業内容の意義や必要性が十分に説明された(Q4【資料】参照)と感じる学生は、特に大学教育での経験を肯定的に感じ、自己成長を実感する傾向が見られます。

 

 次に、課題等の提出物に適切なコメントが付されて返却された(Q10)という学生ほど、教員が学生と向き合って教育に取り組んでいると感じる傾向がある(第2回Q42・第3回Q37)という結果が示されました。また、教員から意見を求められるなど、質疑応答の機会があった場合(第2回Q12・第3回Q8)、学生は教員が学生と向き合って教育に取り組んでいると感じる傾向がある(Q42)という結果になりました。

 

 一方、第2回の結果では、予習・復習などの自主学習について授業やシラバスで指示があった場合(Q7)、学生は大学教育が良くなっていると感じる傾向があり(Q41)、教員が学生と向き合って教育に取り組んでいると感じられる(Q42)ようですが、このパターンは第3回の結果には明確に見られません。同様に、第2回の結果では、教員以外にアシスタントなどが配置され、補助的な指導があった場合(Q8)、教員が学生と向き合って教育に取り組んでいると感じる傾向(Q42)が見受けられますが、第3回の結果ではこの傾向をはっきりと読み取ることはできません。本調査だけではこれらの理由はわかりませんが、コロナ禍による授業形態の変化などがその背景にあるのかもしれません。

 

 今回の分析結果を踏まえて得られる示唆は、まず、授業内容の意義や必要性の説明が、学生の学びの実感を高めるうえで特に重要なものであるかもしれないという点です。学生が学ぶ学習内容が、どのような意味があるのか、日々の生活でどのように活用されているのか、どのような研究に活用できる可能性があるのかなど、こまめにコメントをしながらその意義を伝えていくことを意識して行くことが、学生の学びの実感を高め、満足度や自身の成長実感を効果的に高められるのかもしれません。なお、本分析では、理系と文系で顕著な差は見出しがたいという結果が得られています。

 

【資料:施行調査の結果一覧のヒートマップ—濃い赤は正の関係が強いことを示す】
 第2回施行調査の結果
 第3回施行調査の結果
【問い合わせ先】

教育学習支援センター

e-mail:capr@office.hiroshima-u.ac.jp
    (@は半角文字に置き換えてください)


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