マツダ株式会社 パワートレイン開発本部 電気駆動システム開発部 第3電駆開発グループ 主幹 渡部 雅晃 さん

過去の経験を未来に紡ぐ


マツダ株式会社
パワートレイン開発本部 電気駆動システム開発部 第3電駆開発グループ 主幹

渡部 雅晃 さん

広島大学工学部 第四類 平成16年度 卒業
広島大学大学院工学研究科 博士課程前期
社会環境システム専攻 平成19年度 修了
呉工業高等専門学校 出身

現在の仕事について

 2007年にマツダ株式会社へ入社して以来、私は駆動系開発部門に所属し、「走る歓び」を支える駆動系の開発に情熱を注いできました。15年間、マニュアルトランスミッション(MT)の設計に携わり、MTケーシングや歯車、操作機構など、細部にまでこだわり抜いた製品を世に送り出してきました。その後2022年からは、電気駆動システムのモータ減速機ユニット設計の統括を任され、次世代のモビリティに挑戦しています。
 私が仕事に対して最大のやりがいを感じるのは、自分がこだわりと情熱を込めて設計したMT・ユニットを世に送り出し、好評を博した時です。特にMT車はこだわりの強いお客様が選ぶクルマであり、軽量化と操作フィーリングの向上を徹底的に追求しました。

 ユニット開発・設計の過程では、クルマの性能目標からユニット内の部品一つ一つに至るまで、設計目標を段階的に展開し、部品レベルまで落とし込む必要があります。そして、良い商品に仕上げていくためには「モノづくり」の経験を積み重ねることが欠かせません。また、自部門の理想だけではなく、様々な部門と連携した横断的な「チーム活動」を通じて一つのクルマを創り上げていきます。これらの過程を経て創り出したクルマにより、お客様に驚きと感動を提供していくことが私の仕事の原動力です。

学生時代について

 私の「モノづくり」と「チーム活動」の原点は、広島大学で取り組んだ人力飛行機製作にあります。これは、読売テレビの鳥人間コンテストへの参加を目指したプロジェクトでした。私は呉高専から広島大学の3年生に編入しましたが、そのきっかけは高専の先輩から「広島大学で鳥人間コンテストに参加するらしいよ」という話を聞き、心を動かされ、広島大学を目指すことを決意しました。編入学後すぐに人力飛行機製作を担当されていた岩下先生の研究室を訪ね、この夢のプロジェクトに参加しました。日夜、寝る間も惜しんで製作に没頭し、大会前には夜通し作業することもありました。私が在学中には毎年大会に出場しましたが、飛行記録が伸びず悔しい思いをすることも多く、何度も活動を続けるか悩む日々もありました。それでもメンバーと支え合いながら、中途半端に諦めず卒業までやり切って良かったと心から思っています。この活動を通じて得た、設計・製作・テストフライトを経て大会に出場するまでのチーム活動やモノづくりの経験は、現在の業務に大いに活かされていると実感しています。
 在学生の皆様へのアドバイスとして、私が大切にしているのは、「一つひとつの経験が将来の糧になる」ということです。在学中に取り組む勉強や研究が、将来どのような形で役立つかは、すぐには見えないかもしれません。ですが、それらの経験は確実に自分の中に蓄積され、思いがけない場面で力を発揮することがあります。勉強だけでなく、アルバイトやサークル活動など、さまざまな経験が未来に繋がっていくと私は信じています。目の前の物事に対してベストを尽くして取り組むことで、その経験はやがて未来の自分を支える力になります。社会に出ると、自分がやりたいことを実現できる機会は限られているかもしれません。けれども、過去の経験を紡いでいくことで、与えられた仕事や環境を「実現したい」と熱中できるものに変えていく原動力になると考えています。学生生活の一瞬一瞬を大切にし、心から楽しんでください。今の経験が、未来の皆さんの可能性を広げる力になると信じています。

過去 (2007年時点) の広島大学工学部HUESの活動紹介


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