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日特建設株式会社 佐川 浩紀 さん

専門を持ちながら、少し余白を残して


日特建設株式会社 経営戦略本部 経営企画部

佐川 浩紀 さん

広島大学工学部 第四類 平成10年度 卒業
福島工業高等専門学校 土木工学科

現在の仕事内容について

 私は現在、日特建設株式会社で経営企画部長を務めています。
 社会人としてのスタートは建設現場の施工管理で、法面工事や地盤改良工事などを経験しました。その後、技術営業にも携わり、営業所長として、現場だけでなく、人や仕事、収支など営業所全体を見る立場を経験しました。現在は本社で、会社のこれからを考える仕事をしています。
 入社した当時、将来経営企画の仕事をするとは思っていませんでしたが、その時々の仕事にはそれぞれ違った面白さがあり、どの仕事にも楽しんで取り組むことができました。

 現場では目の前の工事を、営業所長になると組織全体を、そして今は会社のこれからを考える立場になりました。仕事の対象や立場は変わりましたが、考え方の基本はそれほど変わっていないように思います。
 目の前で起きていることを整理し、なぜそうなっているのかを考える。分からないことは調べ、いくつかの可能性を考え、確かめながら答えを探していく。現在の仕事でも、学生時代に工学を学ぶ中で培った、そうしたものの考え方を使っているように感じます。

学生時代について

 はじめに土木の道を選んだのは、15歳のときです。福島高専の土木工学科に入学し、5年間、土木工学を学びました。高専では非常に実践的な教育を受け、理論の成り立ちを深く掘り下げるというより、さまざまな知識や手法を、どのような場面でどう適用するのかを繰り返し身につけました。
 高専で土木工学を学ぶ中で、大学でもさらに専門を深めたいという思いが強くなりました。編入先を検討する中で、広島大学工学部第四類には、土木のさまざまな分野を専門的に掘り下げられる環境があると知りました。特にコンクリートについて研究したいという思いがあり、広島大学への編入を決めました。
 編入後の最初の前期は、単位認定の関係で2年生から4年生までの科目を履修することになり、ほぼ毎日フルコマでした。正直、かなり忙しかったですが、今振り返ると「あの頃はよく勉強したな」と思います。
 高専ですでに知識や手法の「使い方」を身につけていたため、大学でその背景にある理論を学ぶと、「あれはこういう理屈だったのか」と、それまで身につけていたものが理論とつながっていくことがよくありました。この流れが、私にはとても合っていたのだと思います。
 4年生では、希望していた材料研究室に入りました。研究室のみんなで骨材を洗ったことや、夏休みには淡路島の野島断層へ泊まりがけで行ったことも、今ではよく覚えています。 卒業論文では、CFRP格子を用いたコンクリート構造物のせん断補強について研究し、コンクリート材料や補修・補強に関する知見を深めました。
 社会に出てから、大学時代との思いがけないつながりを感じたこともあります。コンクリート診断士の勉強をしていたとき、分かりやすいと思って使っていた参考書の監修者欄に、見覚えのある名前がありました。材料研究室でご指導いただいた田澤先生でした。大学を卒業して何年もたってから、思いがけない形で学生時代とのつながりを感じたことを覚えています。
 また、仕事では、学生時代にはそれほど得意ではなかった土質の知識を使う機会も多く、技術士は土質・基礎分野で取得しました。学生時代に触れたことが、その後どんな形で仕事につながっていくのか。当時の私には分かっていませんでした。今振り返ると、それでよかったのだと思います。

広島大学・工学部在校生へのエール・メッセージ

 工学部で学んでいる皆さんは、それぞれ興味のある分野や、深く掘り下げてみたい専門を持っていると思います。ぜひ、その専門をしっかり深めてほしいと思います。一つのことを深く追究することで、それまで見えていなかったものが見えるようになります。そこで身につくものは、専門知識だけではありません。
 物事の背景や仕組みまで考えること。分からないことを調べ、自分なりの仮説を持ち、確かめながら答えを探していくこと。そうした経験は、扱うテーマや仕事が変わっても、自分の中に残っていきます。
 一方で、社会に出てからの仕事は、学生時代に思い描いていた専門分野の延長線上だけで進んでいくとは限りません。私自身、材料研究室でコンクリートの研究をし、建設会社で現場の技術者として仕事を始めました。その後、仕事の範囲は技術営業や組織運営へと広がり、今は経営企画という、学生時代には想像もしなかった仕事をしています。

 だからこそ、私は「専門を持ちながら、少し余白を残しておく」ことも大切ではないかと思っています。自分が面白いと思ったことには、ぜひ深く入り込んでください。その一方で、今は自分の専門ではないと思っている分野や、自分とは違う考え方にも少し目を向けてみてください。
 私自身、15歳で土木の道を選びましたが、その先の仕事まで見通せていたわけではありません。将来の道を、今の時点できれいに一本に決める必要もないと思います。自分なりの専門という軸を持ちながら、その周りにも関心を広げていく。そうしているうちに、自分では予想していなかった道や、新しい役割に出会うこともあります。
 広島大学工学部で、自分の専門を存分に深めるとともに、さまざまな人や考え方、経験にも触れてみてください。その積み重ねが、きっと皆さんそれぞれの将来につながっていくと思います。


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