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黒木 伸一郎 教授にインタビュー!

シリコンカーバイド半導体についての研究

企業と進める半導体開発

半導体はスマートフォンやAI、家電や自動車など様々なものに使用され、私たちの暮らしを支えています。私が行っているのは、SiC(シリコンカーバイド)という素材を用いた新しい半導体の研究開発です。通常の半導体の主原料はSi(シリコン)ですが、SiCはSiとC(炭素)が結びついた化合物で、結晶構造が非常に強力なため、通常の半導体では難しい約500度の高温環境や、従来の約2000倍という放射線量がある原子力発電所の廃炉下での使用に耐えることができます。私たちが目指しているのは、そのような極限環境で利用するためのデバイスの開発です。

SiC半導体が高い放射線量にも耐えうる可能性を見出したのはここ十数年のことです。2011年、私は東北大学の教員として、東日本大震災の復興対応にあたっていて、当時から自分の研究が震災復興に役立てられないかと考えていました。2012年に広島大学に着任後、SiCのパワーデバイス(電力の変換や制御を行うもの)の研究中にふと「このSiCは復興対応に使えるのではないか」とひらめきが降りてきました。2020年ごろには新幹線や電気自動車などにSiCのパワーデバイスが利用されるようになり、世界的に生産が追いついてきたという背景があります。私が共同研究者と開発したのは、パワーデバイスではなく集積回路(情報の演算や記憶をするもの)で、2025年4月には量産工場での試作に成功しています。

実用化に向けた壁はいくつかありますが、「システムとして利用可能なものにする」ことが今一番大きな課題です。例えば500度に耐えられるスマートフォンを作るためには、内部のチップだけではなく外側のボードも耐えられなければ意味がありません。そうした周辺環境の整合性も取りながら社会実装一歩手前まで形にすることが、我々研究者の役割だと思っています。

半導体研究拠点としての役割

広島大学は1980年代からの半導体カルチャーを引き継いでいる、国内でも稀有な大学です。現在利用されているAI用半導体のメモリー構造の基礎も、かつて広島大学の先輩方が研究していたものでした。研究の基盤があり設備がしっかりと引き継がれているというのは、半導体研究をする上で魅力の一つです。学内には国内有数のクリーンルームがあり、半導体デバイスの設計・製造・評価を一貫して行うことができます。

現在、広島大学は半導体分野の研究を加速させイノベーション創出に貢献するため、文部科学省のプロジェクトに参加しており、半導体研究の拠点として研究データと研究装置を外部に提供しています。
近年、日本の半導体分野は偉大な研究成果を生んでいるにも関わらず、実用化の段階になると他国に先越されてしまうということが多く、悔しい思いをしていました。状況を改善するためには、大学の研究と量産技術を繋ぐ努力をしなければなりません。イノベーションと一言で言っても、大学の研究を企業がそのまま使えるわけではなく、そこに行き着くまでに細かなステップをいくつも踏む必要があります。そうしたイノベーションのダイナミクスを理解しながら繋げていくこと、産業界に役立つ成果を上げることを目的に、2023年には産官学の連携組織「せとうち半導体コンソーシアム」を立ち上げました。
 

また、本学では2025年から「半導体システムプログラム」が始まっています。これは2004年から続いてきた大学院の専門コースを、学部教育まで広げたものです。より早い段階から専門的に学べる仕組みを整えており、次世代を担う研究者・開発者の育成に注力しています。

充実した環境で新しい発見を

私の研究室には留学生も多く、学生の間では日々英語と日本語が飛び交っています。国際学会や企業との共同研究への参加も非常に積極的です。研究室では研究テーマを決めるディスカッションを重視しており、年度の初めには必ず私が学生の前で、何が課題でどういう方向で研究を進めるべきかのプレゼンを行います。今年度はこれに二週間かけました。学生から一研究者として「先生、こちらのテーマの方が大事です」と意見が上がることもあり、皆で議論を経て研究テーマを決定しています。
先ほどクリーンルームについて紹介しましたが、規模を追うのではなく、あえて適正なサイズに抑えることで、コストを気にせず自由な発想で0から1を生み出す研究をハイスピードで回しています。この環境のおかげで良い人材育成ができているのではないかと手応えを感じています。学生たちは、私を驚かせるのが趣味なのではないかと疑うほど素晴らしい研究成果を披露してくれることがあるのですが、そうでなくても研究中は毎日何かしら発見があるため楽しいです。研究者は、まだ誰も知らないサイエンスや技術を拓く存在であり、非常にエキサイティングな生き方です。新しいことに挑戦することが好きな人には、ぜひ研究者という道をお勧めします。ちなみに、私が今後やってみたいことは、学生たちと一緒に自分たちが作ったデバイスを宇宙へ飛ばすこと。金星や太陽といった誰も到達できていない極限環境に、楽しみながら挑戦したいと思っています。この記事を読んで興味を持ってくださった方は、ぜひ研究室へお越しください。


黒木 伸一郎 教授
SHIN-ICHIRO KUROKI
半導体産業技術研究所

2002年4月  広島大学ナノデバイス・システム研究センター 産学官連携研究員
2005年4月  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻 助手
2007年4月  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻 助教
2012年4月  広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 准教授
2013年10月 スウェーデン王立工科大学/ KTH Royal Institute of Technology 客員研究員
2016年6月  スウェーデン王立工科大学/ KTH Royal Institute of Technology 客員研究員
(科研費・国際共同研究加速基金(国際共同研究強化))
2019年3月 広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 教授
2019年4月 広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 副研究所長
2019年4月 広島大学大学院先端物質科学研究科 副研究科長
2019年4月 文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム 微細加工実施機関・担当責任者
2021年4月 文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ 広島大学責任者 


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