再生地盤材料を活用した閉鎖水域の底質環境改善技術が地盤工学会中国支部技術賞を受賞

この度、広島大学次世代港湾整備技術プロジェクト研究センター(大学院工学研究院社会基盤環境工学専攻海岸工学研究室と地盤工学研究室)は、地域の産業から生まれた再生地盤材料による底質環境改善工法の効果を福山内港で実証したことに対し、平成29年4月25日の地盤工学会中国支部より技術賞が授与されました。

広島大学次世代港湾整備技術プロジェクト研究センター では、中国電力、JFEスチールと共同で地域の発電所・製鉄所の副産物を活用した再生地盤材料による底質改善技術の研究を行ってきました。周囲に大学や住宅地が密集する福山内港では、狭い海域からの悪臭の発生と景観の悪化が問題となっていました。開発した底質改善技術を福山内港において初めて本格的に適用した結果、スカム(浮遊有機泥)の発生は0件、悪臭は臭気指数が基準値以下まで改善しました。また、浅場を中心に底生生物の着生が見られ、生態系が再生されるなど高い環境改善効果が得られ、技術の有効性が実証された。この成果が技術賞に値すると認定され、受賞に至りました。

受賞の概要

対象となる技術の名称:「再生地盤材料による底質環境改善技術の福山内港における適用と効果の実証」

受賞者:広島県東部建設事務所、福山市経済環境局環境部、国土交通省中国地方整備局広島港湾空港事務所、復建調査設計㈱、中国電力㈱、JFEスチール㈱、広島大学次世代港湾整備技術プロジェクト研究センター(工学研究科社会基盤環境工学専攻 日比野忠史准教授・土田孝教授)

研究成果の背景

悪化した底質の改善方法として、従来では、浚渫(しゅんせつ)や覆砂(ふくさ)といった対策が取られてきました。しかしながら、浚渫は、高含水比の有機泥については、脱水処理等のコストがかかることや、浚渫土砂の受け入れ先を確保しなくてはならないこと等の課題があり、条件によっては実施が困難です。また、覆砂については、海砂等の覆砂材の入手が困難であること、また、高含水比の有機泥に対して有効な効果を得るには、覆砂厚を多く確保する必要があり、その効果も定かでは無い事などが課題として挙げられます。福山内港では狭小な閉鎖性海域内に汚泥が厚さ1m以上に渡り堆積し、赤潮や青潮の頻発、浮泥の海面への浮遊現象が生じて、悪臭の発生や景観の悪化を起こしていました。

研究成果の内容

適用した技術は、海域環境の再生材である石炭灰造粒物と製鋼スラグを底泥(ヘドロ)の上に薄く敷設する工法であり、それぞれ中国電力とJFEスチールが広島大学と共同で研究を行ってきました。これらの再生資源は、砂とは異なる物理的・化学的特性があり、それに起因する環境改善効果を有することが報告されています。石炭灰造粒物や製鋼スラグは、カルシウムを多く含み、水中で酸化カルシウムを溶出することでpHを上昇させることや、富栄養物質であるリン濃度を低下させることが知られています。また、これらの材料から溶出する微量元素やその酸化物により、有機物の嫌気分解に伴い発生する有害な硫化水素を酸化もしくは吸着させる効果も認められています。

福山内港における20105月のスカムの大量発生の状況

福山内港における底質改善の実施箇所と使用材料および施工層厚

観察されたアオノリとアメフラシ(2016年12月)


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